新たな建設リサイクルヘの取組み
建設省 九州地方建設局技術管理課
基準第二係長
基準第二係長
原 尻 克 己
1 はじめに
平成8年11月に,建設省と建設業界(建設八団体廃棄物対策連絡会)は共同で,建設リサイクル推進懇談会において「建設リサイクル推進の在り方について」提言が取りまとめられました。これを踏まえて,建設省における建設リサイクル推進に向けた基本的な考え方,目標,具体的施策を内容とする「建設リサイクル推進計画 ’97」が平成9年10月に策定されました。
建設リサイクルの推進にあたっては,まず第一に発生抑制に取り組むことが重要となりますが,施工段階で取り組むには限界があります。計画・設計段階から建設廃棄物や建設発生土の発生量を減らすことが必要です。また,発生したものについては,極力再利用や減量化を図ることとし,やむを得ず最終処分せざるを得ないものについては適正に処理をしなければなりません。
「建設リサイクル推進計画 ’97」の中では,建設廃棄物の排出量の6割が公共工事から排出されており,公共工事における建設リサイクルを推進するにあたっては,特に,発注者の取組が重要となっていることや,リサイクルの遅れている建設混合廃棄物等は,ほとんどが民間建築工事から排出されていることから以下の事項に重点を置いて検討され,速やかに実施する施策を行動計画として取りまとめられています。
1 公共工事発注者としての責務の徹底
2 公共工事におけるリサイクル事業の推進
3 民間建築における建設リサイクルの推進
この行動計画の中から,九州地方の建設リサイクルの現状と,新たな建設リサイクルの取組を紹介します。
2 建設リサイクルの現状と課顆
(1)建設副産物の再利用等の実態と課題
九州地方の平成7年度建設副産物実態調査結果は表ー1となっています。
九州地方における平成7年度建設副産物の実態調査結果から,建設廃棄物全体では平成2年度に比べ再利用率は伸びていますが,再資源化施設の少ない品目(建設汚泥,建設混合廃棄物,建設発生木材)は伸び悩んでいます。
九州地方の建設廃棄物のリサイクルが低迷している原因として,再資源化施設が都市部近郊に集中し,地方部,離島になるほど少なくなる傾向があり,最終処分を行っているのが現状です。
建設発生土は,時間的なミスマッチ,品質的なミスマッチにより工事間利用がされず,農地や宅地の嵩上げ,谷地の埋め立て等小規模な再利用が行われているにとどまり,再生資源利用率は伸び悩んでいます。
(2)建設廃棄物の排出量の動向と課題
平成2年度および平成7年度建設副産物実態調査結果から目標年となる平成12年度(西暦2000年)の建設廃棄物の発生量を試算した結果は図ー1となっています。
建設廃棄物の排出動向は,平成2年度は690万トンであったのに対し,平成7年度実態調査結果では事業量の伸びにより960万トンと約39%の増加となっています。また,最終処分も平成2年度は510万トンであったのに対し,平成7年度実態調査結果では600万トンと約18%の増加となっています。平成12年度(西暦2000年)の排出量をこれから推定すると1230万トンとなります。リサイクルプラン21策定時の試算では,990万トンと推定していたため,約240万トンの建設廃棄物の発生超過が予想されます。従って,全体の最終処分量を軽減することはもとより,エネルギー消費量の縮減による地球温暖化防止や自然環境破壊の抑制等,地球環境保全の観点からもなお一層発生抑制に取り組んでいく必要があります。
3 九州地方の取組
(1)リサイクルプラン21の見直し
平成12年度を目標年次としたリサイクルプラン21の目標値の達成に向け努力しているところですが,先に発表された平成7年度の建設副産物実態調査結果より,特にリサイクルの進んでいない建設汚泥および建設発生土については,廃棄物処理法の改正に伴う規制緩和や建設発生土情報交換システムの整備等に伴い,リサイクルの目標値を見直し,より一層の取組の強化を図ることとしています(表ー1)。
この目標を達成するには,建設省直轄工事をはじめとして公共工事が先導的な役割を果たす必要があり,公共工事発注者は,より高い目標を掲げ最大限の努力を行うことが必要とされています。
今後,見直されたリサイクルの目標値に対する達成度を評価し,以後の施策へ反映させるため,その実態を把握し目標値との対比を行うフォローアップを平成10年度以降毎年実施することとしています。
(2)九州地方建設副産物対策連絡協議会の組織拡充
九州地方建設副産物対策連絡協議会は,平成3年に設置され建設副産物の再生利用の促進と建設工事の円滑な推進を図るため,現在,建設省,運輸省,九州7県,2政令市,3公団,1公社,3建設業団体の18の機関で構成されていますが,平成10年1月に公共工事発注者の連携をさらに強化するため,農林水産省と3公団が新たに加盟されました。また,計画・設計段階における建設副産物対策の取組強化を図るため,建設コンサルタンツ協会九州支部が加盟され,現在,23の機関で構成し,建設リサイクル推進のより一層の強化を図ることとしています。
(3)建設発生土情報システム
建設発生土は,搬出量の9割以上を公共工事が占めており,建設発生土のリサイクルを促進するためには,公共工事間で利活用の促進を図ることが重要な課題となっています。
公共工事間で建設発生土を利用するためには,公共工事発注者間において,発生時期,利用時期,品質(土質),土量等の工事情報がリアルタイムで必要となります。
九州地方においては,そのシステムについて,平成4年度から開発に着手し,平成9年度までは,Windows上で運用を行っていましたが,FDを媒体としたオフラインによるものであり,リアルタイムな工事情報とはなっていませんでした。
リアルタイムな工事情報を得るため,平成9年度に地図情報を追加し機能アップを図るとともに,公共工事発注者間をオンラインで結ぶシステムに改良を行いました。今後,各公共工事発注者がこのシステムを導入し,図ー2のようなネットワークの構築を行い,建設発生土の有効利用の促進を図ることとしています。
(4)建設発生土情報システムの入力画面
① 地図情報画面
・自工事と他の工事の位置が地図上で表示されます。
・地図上に表示された自工事と他の工事との距離を自動的に算出することに利用します。
・地図上で簡易情報が得られます。
② 工事内容入力画面
・発注機関,工事場所,連絡先,工期,土質,土量等の工事情報を入力します。
③ 工事情報検索画面
・発注機関,土量,土質,工期,範囲等の条件設定を行うことにより対象工事の検索ができます。
(5)建設発生土ストックヤード
建設発生土を有効利用する方策としては,建設発生土情報システムによる工事情報の収集も必要ですが,時間的ミスマッチを解決する一方策として,直轄事業における先行買収用地等の建設発生土ストックヤードについて検討しています。
4 おわりに
以上,主な取組について紹介しましたが,昨年度は既に「リサイクルリーディング事業」や「大規模再生資源活用事業」を実施し,現在フォローアップを行っています。また,「建設リサイクルガイドライン(仮称)」を作成し,計画・設計・積算・施工の各段階におけるリサイクル状況の確認および評価を行うこととしています。このような施策を実施するためには,建設工事に関わるひとりひとりが建設リサイクルを認識し,積極的な取組を行うことが必要です。
今後「建設リサイクル推進計画’97」に基づき,数多くの施策を展開していくこととなりますが,発注者および建設業界等が連携を取り,今年度,見直しを行ったリサイクルプラン21の目標に向けて積極的な取組を行いたいと考えています。