心地よさを求めて~ぼやきの勧め~
畔津義彦
○大分駅周辺総合整備事業の完成
今年3 月に大分駅南土地区画整理事業が竣工した。多くの関係者が出席した式典が盛大に行われ、市民とともに新しい中心市街地の誕生を祝った。
これにより約20 年間に渡って行われた大分駅付近連続立体交差事業と当該土地区画整理事業、そして周辺の街路事業を3 本の柱とした大分駅周辺総合整備事業がほぼ完成の運びと成った。平成7 ~ 8 年当時、土地区画整理事業への多くの反対の声が挙がる中、これら事業の都市計画決定の手続きを進めた担当者として私も感慨深いものがある。国、県、市、そしてJR 九州などの関係者の地道な努力と協力をしていただいた多くの市民の皆さんに心から敬意を表したい。
事業の終盤には大分駅ビルも新築され、多くの店舗が入った新しい商業スペースが誕生し、鉄道利用者だけでなく、多くの市民が集まる「にぎわいの空間」になってきている。だが、このにぎわいは新しい商業施設誕生の効果だけでなく、大分市の複合文化施設「ホルトホール」やその前庭ともなる100m 道路「いこいの道」、また駅南北に配置された約2 万4 千㎡の駅前広場、さらには駅周辺街路の幅広い歩道によって新しい魅力的な市民の空間がたっぷりと出来たことが大きな要因になっていると私は思う。まさに心地よい空間が多くの人を惹きつけている。
○ぼやきの効果
「最近、凶暴な年寄りが増えているらしいけど、あなたも車の運転中に一人でぼやいていることが増えているわよ。」と我が家の山の神の弁。自分では気づいていないが、ウインカーを出さずに曲がる車や、信号待ちの際にやたらと車間距離を取って停まっている車に文句を言っているらしい。
そういえば従来はそれほど気にならなかった歩道の凹凸、歩車道境界の段差(これは自転車に乗ると特に気になる)、少し強い雨が降るとすぐ水が溜まる歩道などもぼやきの対象になっている。歳のせいとは思うが、一方で身近な環境を認識して表現するセンサーとも言えるのではないか。
コストを睨みながら出来る限り機能を高めること、安全であることはもちろん大事だが、ディテールがまずいと人は快適だとは認識できない。これからの土木事業、特に市街地ではもっとディテールにこだわり、利用者が心地よく感じる空間づくりを追い求めるべきだろう、と、ついまたぼやいてしまう。
○道再生の始まり
大分市内の幹線道路で、リボーン(道再生)事業が始まった。歩道を中心により安全で、快適な空間づくりを目指して植栽や占用物件の整理をはじめ、自転車と歩行者の通行帯の分離、老朽化した横断歩道橋の撤去などを進める事業だ。これまでの道路改良事業などとは異質な事業が始まる。従来にも増して使う人の心地よさが評価指標になるような事業だ。こうした事業の積み重ねがきっと心地よい空間づくりに繋がり、その心地よさがお年寄りも含め、多くの市民をその空間に惹きつけていくだろう。
今後、ぜひ素敵な事例をもとに、心地よさへの「作法」を示すガイドラインを作ってくれることを期待したい。そのためにも私たちは心を鬼にして、もっとぼやき続けなければならないだろう。