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巨勢川機場の機械設備について

国土交通省 九州地方整備局
 佐賀河川総合開発工事事務所
 機械課長
深 田 英 二

1.はじめに
佐賀導水事業は,筑後川,城原川,嘉瀬川を導水路(管路,開水路)で連絡する流況調整河川(総延長約23㎞)を建設し,内水排除,洪水調節及び既存の水利用に支障を及ぼさない範囲での流水の正常な機能の維持と増進並びに水道用水の補給を行い流水の状況の改善を図るもので,導水の運用にあたっては,ポンプ設備を主体とした機械設備群によりその機能を確保するものである。
洪水調節は佐賀市金立地区に建設中の巨勢川調整池により行い,巨勢川と黒川の洪水や調整池周辺に溜まった雨水を調整池に貯留し,金立地区や巨勢川下流域の佐賀市街地の洪水被害軽減を図るもので,巨勢川機場は,この.巨勢川調整池に設置された機場で,調整池に貯められた水を排水する治水専用の東渕系機場と巨勢川より東側の水の排水及び利水に使用する焼原系機場から構成される。

2.機場の概要
(1)東渕系機場
①完成年度:平成17年3月
②総排水量:26m3/s
③ポンプ設備の主要仕様

(2)焼原系機場
①完成年度:平成13年3月
②総排水量:治水時4m3/s  利水時2.15m3/s
③ポンプ設備の主要仕様

3.機場の特徴
(1)東渕系機場
主ポンプ設備は,ポンプの吸込水路をベンド形クローズピットとし,吸込損失の少ない高流速型で効率の良い吸込み形状とし,吐出水路は漸縮管(Φ2400からΦ2200)を採用し,コスト縮減を図っている。
また,無注水軸封装置やセラミックス軸受けを採用し,付属機器を簡素化することで機場の信頼性を向上させている。
主原動機は,航空機転用形の2軸式ガスタービンを採用。航空機転用形は,機器荷重が小さいため土木構造物のコスト縮減に寄与している。
機場上屋は,機器の搬入搬出には移動式クレーンを使用し,天井クレーンを省略して,機場上屋のコンパクト化を図り,コスト縮減を図った。

(2)焼原系機場
焼原系機場は,治水機能と利水機能を受け持つ機場である。
ポンプ台数及び運転計画にあたっては,設備費維持管理,運転経費の観点から台数を3台とし,うち1台を兼用ポンプとした。兼用ポンプは,治水運用時はガスタービン駆動方式,利水運用時はモーター駆動方式としている。
機場上屋は,東渕機場と同じく天井クレーンを省略してコスト縮減を図っている。

4.操作制御設備
佐賀導水には数多くの機械設備があり,これらは機能上複雑に関連しており,相互に連携した運用が必要となっている。
特に,巨勢川調整池関連については,ポンプ設備の外に10箇所の水門の連携操作が必要で,各々に操作員を配置することは,運用上非常に煩雑で困難ある。
よって,各設備を一元管理しながら操作する「光ファイバーネットワークを利用した遠隔操作制御設備」を設置して事務所からの遠隔操作制御を可能にしている。
操作制御設備には,次の機能を有する。

(1)広域監視機能
導水路に設置されている各機場水門設備等の運転状態等を広域的に監視

(2)遠隔監視制御機能
導水路に設置されている各機場,水門設備等の遠隔での監視・制御及び調整池関連の各設備の連携制御

(3)運転支援機能
運転操作を説明する運転操作支援機能,故障発生の表示,原因究明,故障復帰及び緊急時対応の故障対応支援機能,運転・故障情報の記録及び点検整備等の保全情報を管理する記録・情報管理機能

(4)振動解析・処理機能
主ポンプ,減速機及び原動機に取り付けた振動センサーからのデータを解析し,ポンプ設備の運転状態の管理及び予防保全を行う

5.おわりに
佐賀導水事業は,平成16年度末までに全体の約9割の進捗をみせており,ポンプ設備については,全ての機場が完成し,平成17年度より対応が可能となり,平成17年7月の梅雨前線による出水では巨勢川機場が初稼働,また,平成17年9月の台風14号による出水では佐賀導水の機場のほとんどが稼働し,周辺地域の浸水被害を防止し,その効果を発揮した。
今後は,平成20年度の佐賀導水事業完成に向けて維持管理や運用面の強化を図り,施設の信頼性向上に努めていきたい。

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