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マイハザードマップ作成講座について

宮崎県 県土整備部 砂防課
主任技師
有 薗 翔 弥

キーワード:マイハザードマップ、自主的避難

1.はじめに
近年では、全国各地で土砂災害による甚大な被害が発生し、多くの方が犠牲となっている状況である。このような状況のなか、自治会単位での避難に関する計画づくりや災害時の要配慮者支援等の役割分担の明確化、訓練を事前に実施していたことが功を奏し、人的被害を免れるという事例もいくつも報告されている。このような事例からも土砂災害による人的被害をなくすためには、土砂災害に関する専門的な知見に加えて、地区住居者等が有するきめ細かい防災力を最大限に活用し、実用性の高い避難体制を構築することが重要であると考える。

2.事業の概要
(1)本県の取り組み
土砂災害から人命を守るためには、ハード整備だけではなく、ハード・ソフト一体となった対策が重要であることから、本県では、災害時に身を守るために有効とされているマイハザードマップの作成支援を行っているところである。

(2)マイハザードマップとは
マイハザードマップは、マイ防災マップや地域防災マップなどともいわれており、自宅の周りの危険が想定されている箇所や避難先、避難路などを記入したもので、市町村等が作成するハザードマップに比べると比較的狭い範囲で作成されるマップのことである。福岡県朝倉市では、平成29 年7 月九州北部豪雨の際に、マイハザードマップが速やかな避難に繋がった事例もあり、地域住民が自ら作成に取り組むことで、地域コミュニティの強化や地域防災総合力の向上が期待されている。

(3)作成支援について
本県においては、平成30年度からマイハザードマップの作成支援を行っており、今回は令和2年度に延岡市の富美山北地区で実施した内容を事例として紹介する。

3.延岡市富美山北地区の事例
(1)地区の概要について
富美山北地区は、延岡市のほぼ中央に位置し、複数の土砂災害警戒区域に囲まれている地区である(図- 1)。
今回の講座は、住民が参加しやすい土曜日の午前中に実施することにし、マップの作成にあたっては、県の職員が中心となり、作成手順等の説明を行った。当日は、延岡市の職員と地域住民11名が参加した。

図1 延岡市富美山北地区

(2)土砂災害防止講座
はじめに土砂災害と今回作成するマイハザードマップについて、スライドを利用して説明を行い(写真- 1)、土砂災害の危険性やマイハザードマップの重要性を理解してもらった。

写真1 概要説明状況

(3)現地確認
講座終了後は、事前に地区で決めている3つのグループに分かれ、実際に1 時間程度地区を見てまわった(写真- 2)。

写真2 現地確認状況

その際、普段から危険だと認識している箇所や避難する際に手助けが必要な方が住んでいる家などの情報をグループ内で共有してもらった。

(4)グループワーク
現地確認後は、現地確認を行ったグループ毎に分かれて、下記の手順で手書きのマップを作成した。
①幹線道路
②水路
③自宅
④避難時要支援者の家
⑤防災拠点となる施設
⑥浸水する、側溝が壊れている等の地域の特徴を記入する。(付箋に書き込む)
⑦避難ルートの確認
グループで話し合う中で、避難時に支援が必要な家や過去の災害など、様々な意見が出され、マップに反映されていた(写真- 3)。

写真3 グループワーク状況

(5)発表(情報共有)
上記①~⑦とその他気付いたことを各グループでまとめ、作成した地図を用いて、発表を行うことで、地区の課題や知らなかった情報の共有を行うことができた(写真- 4)。

写真4 発表状況

(6)マップ作成
発表後は、各グループで作成したマップを集め、県にて過去に災害が発生した箇所など、それぞれのマップで重複している部分を整理して、マイハザードマップ(図- 2)として作成を行い、データを市役所に、印刷物を地区に配布した。

図2 作成マップ

4.おわりに
講座終了後、地区の住民から、
・今回の取り組みを今後も、地区の活動に取り入れていきたい。
・色々な場所を知る事で少し気持ちが楽になった。避難する際に声かけがしやすくなった。
・一人暮らしで不安があったが、今回の事で安心できた。
などの感想をいただくことができた。
今年度については、新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた作成講座が実施できていない状況であるが、このように地図上に危険箇所や避難ルートを明示し、発表し合うことで、参加した住民全員で情報を共有でき、自主的避難に繋がるきっかけをつくることができる取り組みになっているため、継続して実施していきたい。
今後も安全で安心な県土づくりを目指し、ハード整備だけではなく、土砂災害警戒区域等の指定推進や防災情報の提供等といったハード・ソフト両面から総合的な土砂災害対策を推進していきたい。

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