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大山ダム建設工事の入札契約方式について

独立行政法人水資源機構
 大山ダム建設所 所長
林  日出喜
独立行政法人水資源機構
 大山ダム建設所 調査設計課長
小 野 雅 人

1 はじめに
独立行政法人水資源機構(以下「水機構」という。)では,平成16年8月より民間企業の持つ優れた技術力と価格の双方を総合的に評価し,落札者を決定する総合評価落札方式の標準型を導入し,まず,3億円以上の公募型指名競争入札方式で試行した。その後,平成17年4月1日に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」を受け,総合評価落札方式のさらなる充実を図るため,学識経験者と水機構役員からなる「総合評価審査委員会」を設けるとともに,平成17年12月には,総合評価落札方式の簡易型を導入した。
平成16・17年度の2カ年で,標準型,簡易型を合わせて16件,また,水機構独自の方式として,堆砂除去数量,フェンス設置延長などの「施工数量を評価指標とする」総合評価落札方式についても,4件試行した。平成18年度は,1億円以上の工事で,その発注件数の50%に総合評価落札方式を適用することとしている。
さらに,平成18年4月には「高度技術提案型総合評価方式の手続について」(以下「高度型の手続き」という。)が「公共工事における総合評価方式活用検討委員会」(以下「活用委員会」という。)より提言された。この方式は,民間企業が有する高い技術力を有効に活用し,技術提案をもとに予定価格の算定を行うことにより,コスト縮減,性能・機能の向上,工期短縮等を目指す方式である。水機構では,平成18年6月にこの方式を導入した。
ここでは,高度技術提案型総合評価落札方式を適用する最初の事例となった「大山ダム建設工事」について,その詳細を紹介する。

2 高度技術提案型総合評価落札方式の特徴
(1)高度技術提案型の適用の考え方
「高度型の手続き」によれば高度技術提案型を適用する工事は,大きく3つに分類される。(表-1,図-1参照)その内,Ⅰ型及びⅡ型については,発注者が標準案を作成できない場合や,複数の候補があり標準案を作成せずに幅広い提案を求めることが適切な場合であり,いずれも標準案を作成しないものである。
「大山ダム建設工事」においては,水機構が既に詳細(実施)設計を実施しており,標準技術による標準案を提示した上で,施工方法について技術提案を求めることを基本とした。コンクリートダムでは,施工方法(RCD工法,ELCM)・コンクリート運搬・打設方法(ダンプ直送,各種クレーン類,ポンプ)など,フィルダムなどに比べその施工技術は多岐に富んでおり,さらにそれらの技術の組み合わせを考えると技術的にかなり選択肢は多様であると言える。そのため,高度な施工技術や特殊な施工方法の活用により社会的便益が相当程度向上することが期待できる場合に相当するものと考え,Ⅱ型を適用することとした。

表-1 高度技術提案型の適用の考え方

図-1 高度技術提案型の適用フロー

(2)入札・契約手続フロー
高度技術提案型総合評価落札方式の入札・手続フローを図-2に示す。

図-2 高度技術提案型総合評価落札方式の入札・契約手続フロー

(3)技術提案の審査
技術提案の審査については,以下の点に留意して審査する。
① 発注者の要求事項が技術提案の内容に網羅されているかの確認
② 技術提案の実現性,安全性等の確認
③ 技術提案と併せて提出された数量総括表及び内訳書の内容確認
(4)技術対話の実施
技術提案の一部を改善することで,より優れた技術提案となる場合や一部の不備を解決出来る場合に,技術対話を通じて発注者から改善を求め,又は競争参加者に改善を提案する機会を与える。
① 技術対話の範囲
技術対話の範囲は,技術提案及び技術提案に係わる施工計画に関する事項とする。
② 技術対話の対象者
技術提案を提出した者すべての競争参加者を対象に実施する。
③ 技術対話の手順
(ア)技術提案の確認
(イ)発注者からの改善要請
(ウ)競争参加者からの自発的な技術提案の改善
(エ)見積書の提出要請
④ 文書による改善要請事項の提示
対話終了後,速やかに改善要請事項を書面で競争参加者に提示する。
(5)改善された技術提案の審査
予定価格算定の対象とする技術提案を選定するための審査を行う。
(6)予定価格の作成
技術評価点の最も高い技術提案に基づき予定価格を算定することを基本とするが,具体的には工事内容,評価項目,評価結果等を基に「総合評価審査委貞会」の意見を踏まえた上で,決定することとしている。
(7)総価契約単価合意方式の適用
高度技術提案型では,予定価格の算定対象となった技術提案と,実際に落札した競争参加者の技術提案が異なることが考えられ,その場合には,予定価格における工事費の内訳と落札者と入札価格の内訳が異なるため,総価契約単価合意方式を適用する。

3 大山ダム建設工事の契約方式の特徴
(1)大山ダム建設工事の概要
① 事業の目的
・洪水調節
・既得取水の安定化,河川環境の保全
・新規利水
② ダム諸元
・型式  重力式コンクリートダム
・堤高  94m
・堤頂長 370m
・堤体積 約550千m3
(2)契約方式
一般競争入札とし,高度技術提案型総合評価落札方式,契約後VE方式,総価契約単価合意方式,出来高部分払い方式の試行工事である。
また,工事期間が6年間と比較的短期工事であるため,二期工事以降の随意契約をなくし,全工期一括の6年債務契約とした。
1)総合評価項目・点数の考え方
技術提案に四つの評価項目を設定し,水機構が提示する標準案と同等の場合に標準点100点を与え,これを上回る技術提案に対してさらに最大50点の加算点を与える。加算点の内訳は以下の通りである。
① コンクリートの打設,品質管理方法
  最大で20点
② 施工期間(日数)
  最大で15点
③ 騒音・振動・粉塵対策,周辺環境対策
  最大で10点
④ 自由提案(総合的なコスト削減や品質向上)
  最大で 5点
2)技術提案の競争性
① 質の高い技術提案を誘導するため,加算点の最高点を50点とした。
② 競争性を高めるため,特定建設共同企業体を採用せず単体業者による競争方式とした。
3)低入札防止
適切な工事の履行確保の参考資料とするため,以下の資料を求めた。
① 総ての入札参加者に工事に携わる関係者の施工分担を示した予定施工体系図の提出を求めた。
② 予定一次下請業者から徴取した見積書
①,②の資料はそれぞれ封鍼して提出すること。
なお,資料②は調査基準価格を下回った価格をもって入札した者があった場合のみ開封し,工事の履行が可能かどうかを確認する。
4)落札者の決定
入札参加者は,「価格」,「技術提案」をもって入札し,
① 入札価格が予定価格の制限の範囲内であること。
② 評価値が,標準点(100点)を予定価格で除した数値に対して下回らないこと。
に該当する者のうち,標準点と加算点の合計を入札価格で除した数値(評価値という)の最も高い者を落札者とする。
なお,評価値の最も高い者が2人以上あるときは,技術提案の標準点と加算点の合計値が最も高い者を落札者とする。

4 おわりに
(1)技術提案の審査
本方式による入札契約手続きは,水機構において初めての適用であり,技術提案の審査については水機構内に設置した「大山ダム技術審査会」にて審査を行い,その結果や改善された技術提案について「総合評価審査委員会」に諮ることとした。
(2)高度技術提案型への取り組みについて
民間企業が有する高い技術力を有効に活用することにより,コスト縮減,性能・機能の向上,工期短縮を図るという高度技術提案型の主旨を活かしていけるように,発注者自らの技術力と体制の整備を行っていきたい。

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