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大分駅付近連続立体交差事業
~大道陸橋撤去に係る交通処理施策について~
山村哲司

キーワード:連立、交通処理、陸橋撤去

1.はじめに

大分市は、JR大分駅を中心として、その周辺に都市機能が集積し発展してきた。平成9年に中核市に指定され、人口約47万人を擁する県都として、さらなる飛躍が期待されている。
しかし、その中心市街地は、鉄道により南北に分断され、市街地の一体的発展を妨げられており、また、踏切による交通渋滞の発生など、様々な弊害が生じていることから、大分県と大分市は大分駅付近連続立体交差事業に取り組んできた。
大分駅付近連続立体交差事業は、道路と鉄道を立体交差化することによる、南北市街地間の交通の円滑化及び市街地の一体的発展の促進を目的とした、大分駅周辺地域の都心機能強化の役割を担う事業である(図-1)。

2.事業の概要

・事業主体   大分県
・高架区間   日豊本線  3.65㎞
         久大本線  1.92㎞
         豊肥本線  1.60㎞
・除去踏切   日豊本線  10箇所
            (内歩道2箇所)
         久大本線   3箇所
            (内歩道1箇所)
・大分駅部   ホーム面数  4面
         路線数     8線
・総事業費        約600億円
・経過      平成24年3月17日
         全線高架開業

本稿は、JR日豊本線の高架化に支障となる大道陸橋(跨線橋)の撤去工事に関する渋滞対策への取組について報告する。

3.大道陸橋撤去工事の概要

大道陸橋の周辺は(写真-1)、マンション等建物が並び、仮橋等の設置が困難なため、国道210号を全面通行止めにして大道陸橋撤去を行う必要がある。また、大道陸橋を撤去した後、JR日豊本線高架切替えまでの間は、仮踏切としての運用となる。

《工事概要》
・工事区間  L=約500m
・通行止め期間
 平成23年1月17日~平成23年6月5日
    約5ヶ月間(当初7ヶ月間を想定)
・大道陸橋付近交通量  約5万台/日

4.交通処理施策について
4-1 検討委員会の設置

国道210号は日交通量5万台を超える大分市の主要幹線道路であるため、この撤去工事中の交通規制や撤去後の仮踏切設置などによって、市内の交通に大きな影響を及ぼすことが想定されることから、平成17年度に、行政並びに民間の関係機関で構成され、各々の意見や提案等を集約することにより、効果的な交通処理対策の実施を目的とした『大分駅付近連続立体交差事業交通円滑化検討部会』を設置した。
部会では、交通処理計画の問題点・課題を抽出し、迂回路の整備や問題のある交差点の改良等ハード対策の検討、また、時差通勤やパークアンドライド等の公共交通機関への乗換を呼びかけるソフト対策に取り組み、またそれらの取り組みの広報活動を行った。

4-2 ハード施策について

通行止め期間中の迂回交通の集中が予想される道路について、車線変更による交通容量の拡大や交差点改良により、ボトルネックの解消を図るためのハード施策を実施した(図-2)。

また、交通量のピーク時間帯における、大道陸橋通行車両の流入と流出方向を把握し、迂回ルートの設定(図-3)を行い、併せて、道路利用者が適切な迂回を行えるよう迂回看板を設置した。

4-3 交通平準化施策について

通行止めによる、特定の道路への過度な交通集中を分散し、適正に交通を誘導するために、「交通情報の収集力強化」「迅速で的確な情報提供」「信号制御による交通処理の最適化」を推進した。

    

(1)情報収集
交通渋滞状況の最新情報を道路利用者にリアルタイムに提供するため、監視カメラ(12箇所)や車両感知器(5箇所)の増設を行った。
(2)情報提供
道路利用者が状況に応じて迂回等の判断が可能になるように、路線毎の詳細な渋滞情報を提供するため、関係機関との調整により、交通情報板やテレビ、ラジオ等を活用して情報提供を行った。
(3)信号制御
信号機の系統化や現示改造により、交差点の処理能力を高め、円滑な交通処理に資する信号制御を実施した。

4-4 ソフト施策について

車両感知器データの観測交通量を基に、国道10号に流入する南北路線で処理可能な時間交通量を想定し、交通を分散させる交通誘導案を立案した。交差点需要率の検討を図に示す主要な迂回路の交差点について行ったところ、全ての交差点で0.9以下となったが、2箇所で0.8を大きく超える結果となった(図-4)。

また、これまでのハード施策や交通平準化施策を踏まえ、陸橋周辺の踏切を通行する車両の時間交通量(7時~9時、南から北向き交通量)と大道陸橋全面通行止め時の交通容量(南から北向きのみ)を改めて分析したところ、約550台超過することが判明した(図-5)

これらを踏まえ、さらなる渋滞緩和を目指し、渋滞緩和に効果が見込まれる、東西方向の交通量450台を上乗せした、1,000台を、ピーク時間交通量の削減目標とした。
(1)環境通勤
道路利用者に対し、2つの環境通勤への参加をお願いしてきた。
・ラクラク環境通勤
 通勤手段をマイカーから公共交通機関や自転車等に転換するもの
・スイスイ環境通勤
 マイカー通勤の方が、通勤時間をピーク時間からずらすもの
また、公共交通機関の利用促進のためパークアンドライド用の駐車場を6箇所241台分整備した。駐車場スペースとして、駅やバス停の近くに位置する公共用地や高速道路高架下を、関係機関との協議により利用した。
(2)周知活動
環境通勤への参加を促進するため、大分市街地に位置する265社の企業を訪問し、事業説明と併せ、環境通勤への協力依頼を実施した。
また、環境通勤への取組や適切な迂回誘導について、表-1に示す多様な広報媒体を利用・作成し、対象を絞り込むことによる、効果的な周知活動を行った。

5.安全対策について

上記施策により、道路利用者が適切な迂回を行えるよう取り組んできたものの、大道陸橋周辺の地域住民の生活道路である細街路の交通量の増加が危惧された。地域小学校の通学路でもあることから、安全面に万全を期す必要があるため、学校を通じて保護者と協議を行い、危険箇所の選定をしたうえで、区画線の引き直しや注意喚起看板の設置等による安全対策を行った。また、危険な交差点については、児童の登下校時に交通誘導員を配置することとし、交通誘導員として、保護者や地域の交通指導員の協力を頂くことができた。

6.通行止め期間中及び通行止め解除後の交通状況について

前述した企業訪問の際に、併せて環境通勤への取組状況と通行止め期間中の予定に関するアンケート調査を行っている。アンケート結果と、公共機関における環境通勤への取組状況を併せると、約1,060台分の環境通勤への参加者を確保することができ、削減目標を達成することができた。その他施策の成果もあり、通行止め期間中に大きな交通の混乱が起きることは無かった。
通行止め前と通行止め期間中の交通量(図-6)を比較すると、迂回路に指定した路線の交通量が増加していることから、適切な迂回を促せたと考える。また、通行止め解除後も交通量を継続して調べたところ、高速道路無料化終了後に、国道210号の交通量が増加していることから、通行止め期間中の迂回路として、高速道路が利用されていたことが確認できた。
今後は、鉄道高架化により全ての踏切を撤去した後、再度交通量を調査し、事業効果を把握するよう検討している。

7.おわりに

大道陸橋の通行止めは、周辺地域や関係機関の方々のご理解・ご協力と、施工業者の優れた施工能力、さらに気象条件に恵まれた事により、予定より2ヶ月以上早く解除することができました。また、通行止め期間中の交通処理においても、計画から実施の段階まで、関係機関の方々に多大なご援助・ご指導をいただき、大きな交通の混乱が起きることなく、通行止めの解除を迎えることができました。
県民の皆様をはじめ、関係各位に対し深く感謝申し上げます。

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