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多布施川の景観と親水事業

佐賀県佐賀土木事務所
 工務課長
久 富 直 臣

佐賀県佐賀土木事務所
技 師
江 頭 敏 弘

1 概 要
多布施川は,佐賀県大和町北村地先で1級河川嘉瀬川より分派し,佐賀市のほぼ中央を流下し八田江に注ぐ流路延長9.2km,流域面積約1.5km2の河川である。
この河川は,藩政の初期,治水の先駆者,成富兵庫(1560年~1634年)によって作られた人工河川で,おもに農業用水,都市用水の取水を目的とし,一部には佐賀市の利排水を除去し,また,嘉瀬川が未改修であった時代には,嘉瀬川の洪水を分派する役割も持っていた。

多布施川は,水青く,「コイ」「フナ」「ハヤ」などの魚が多く生息し,昔から市民に親しまれてきた。しかし,この多布施川も,施工後数百年を経過し,老朽化が著しく,漏水が発生し,また,河床の低下により,都市用水への流入が困難となり,改修工事の必要性が生じてきた。
改修工事は,近年住民のニーズとして高まってきた親水性に主眼を置くとともに,余裕断面高水敷を河畔公園として市町が整備し,佐賀市,大和町の魅力的な生活環境の主軸とし,日常生活の中に生きた河川とするため,河川環境整備事業で実施している。また,昭和63年度には,河川局において新たに創設されている「ふるさとの川モデル事業」の指定を受け,従来から進めている河川環境整備事業に加え,県都にふさわしい水辺環境づくりをさらに推進していくことになった。

2 河道整備事業
 全体計画  事業費  1,200百万円
       事業年度 S47~H4
       延 長 6,400m
 事業内容  ブロック張護岸(図ー2,写真一1)
       面  積 24,000m2
       石積護岸 (図ー3,写真一2)
       面  積 8,400m2
       魚巣ブロック 延長200m
       階段護岸 14カ所(写真一3)

3 河道整備計画
(1)計画区間
多布施川全延長9.2kmのうち有堤部で漏水の多い6.4km区間を計画区間とした。
(2)計画断面
嘉瀬川の改修が進み,洪水を分派させる必要がなくなり,流域の排水は,下流部の一部分であるため,本計画の計画対象流量は,農業用水,上水道用水,その他浄化用水を含め,計8.0m3/sを対象とし,今後の開発による流量増などを見込んで10.0m3/sとした。
(3)護岸構造
多布施川の河畔は,都市公園として利用するため,美観などを重んじ石材等の使用を検討したが護岸の数量が38,000m2とあまりに大きく,石材の入手が困難であるため,下流都市部においてはコンクリート製品とし,上流部においては石井樋公園とも景観をなじませるため,石積護岸を採用した。また,市民が川と親しめるようにするため,護岸の下部は,非灌漑期間の水位を対象として,基礎を兼ねた階段式場所打ちコンクリートとし,川に容易に人の出入りができるように,ほぼ50mに1箇所,降り口用の階段護岸を配置した。また,上流部には現在かなりの深みがあり,魚が多く生息しているため,市民に釣場としても親しまれている。そこで,魚の生息を保持するため深みのある場所には魚巣ブロックの設置を計画した。

4 多布施川河畔公園計画(佐賀市,大和町)
多布施川河畔公園(図ー4)は,佐賀市と大和町に新しいアメニティー(快適性)をもたらすために河川敷につくられる親水公園である。それは,流域住民と多布施川を結ぶ延長6kmの大緑道となり,両岸に立地する公園や公共施設,学校,工場等と共に,河川によって分断されやすい両岸住民の心を結ぶコミュニケーションの場である。
下流の護国神社を起点とし嘉瀬川分流点の石井樋公園に至る河畔公園は,昔からの豊かな緑に恵まれているが変化に乏しく単調であるので,更に新たな植裁をほどこし表情豊かな植生になるようにする。
このような魅力的な植裁に包まれて,右岸はサイクリング道とし,左岸は充分な道路幅をとったゆったりした緑道とする計画である。この緑道は当分の間車道として使用するが,周辺の道路が整備されれば歩行車専用の公園道路となる。
計画後十数年を経た河畔公園計画も,見直しを行い,これまでの眺める公園から一歩踏み込んで,自然とのふれあいがある公園になるように計画した。

基本方針として,
① 子供にとって,魅力的な多布施川,親水公園にする。
② ホタルを通じて,様々な自然とのふれあいを実現する。
③ 自然の動植物が生息できる 生きた水,緑環境をつくる。
これを基に,多布施川本流より河川敷へ水を引き込み,周辺に草木の茂る小川をつくって,ホタルや小動物の生息できるせせらぎの森や原っぱをつくる。そこには,子供が五感を通じて体験する昆虫,魚,草花との出会いと遊びがある。
また,多布施川流域の貴重な自然を次世代へと継承するために,大人も子供と遊ぶ中で子供の頃を思い出し,自然や動物を守り育てる心を子供に教えることができる公園とする。

5 おわりに
多布施川は昔より,佐賀城下に農業用水や都市用水を送る重要な河川でした。一時は汚れていた多布施川も住民と行政が一体になった清掃作業により,清らかな流れを取り戻し,人が川に近づくようになりました。
最近は流域の自治会が中心になって,夏休みの子供たちを対象にした,カヌープラザ(写真一5)やイカダ下り,ハッピ姿の子供たちがみこしを担ぎ「わっしょい。わっしょい。」と元気よく掛け声をあげながら,川の中を行進した「ふれあい川祭」(写真一6)。昭和61年に建設省より「手作り郷土賞」を受けた護国神社前の水遊び場(写真一7)等,川を舞台にしたいろいろなイベントが行われるようになりました。
今後,ますます水辺空間への要求が高まる中,快適で潤いのある水辺の整備が望まれています。今回紹介した,多布施川の事例が参考になれば,幸いです。

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