地域高規格道路【南部東道路】整備事業について
仲厚
キーワード:南部東道路、地域高規格、沖縄幹線道路網
1.はじめに
南部東道路は、沖縄県南城市の知念・玉城の島尻地区から大里を経由して南風原町内の那覇空港自動車道に連結する地域高規格道路である(図- 1)。
定時・定速を確保し、那覇市までの30 分圏域の確立を図り、地域住民に都市的サービスを提供するとともに南部圏域の振興を支援する道路である。
当該地域は、那覇市から半径15㎞圏内という便利な地理的条件にもかかわらず、急峻な地域等による幹線道路の整備遅れで、車の移動にも時間を要する上、既存の県道南風原知念線においては、斜面崩壊により迂回を余儀なくされるなど不便な地域とされている。
また、世界遺産の斎場御嶽(セ-ファ ウタキ)やあざまサンサンビーチなど、多くの観光資源を有する当該地域の観光振興や地場産業の発展にも影響を及ぼしている。そのため早急な幹線道路の整備が当該地域だけでなく南部圏域全体にとって極めて重要な課題となっている。
本稿で整備効果、全体概要及び事業進捗状況等を紹介する。
2.整備効果
南部東道路は一般の道路と違い、地域高規格道路として整備している。
南部東道路の1 つ目の整備効果は「移動時間の短縮」である。南部の東側地域は、那覇市中心部から半径15㎞圏域という地理的条件下にもかかわらず、幹線道路の整備遅れで移動に時間がかかる地域となっている(図- 2)。
本整備により、那覇空港自動車道と連結し、那覇空港、那覇港、那覇市内までの移動時間が短縮され、30 分圏内となる。
2 つ目に、「観光や産業活性化の支援」である。観光地へのアクセス性が向上することで、世界遺産の斎場御嶽(写真- 1)等の歴史・文化財資源や豊かな自然を活用した観光プランが豊富になり、観光振興に大きく寄与し、各種産業活動の活性化が期待できる。
最後に、「災害時の代替道路」としての機能である。南風原知念線は大城ダム付近で毎年のように大雨による法面崩壊の危険回避や復旧工事などで交通が規制され県道を大きく迂回している状況となっているため、代替路線の確保が不可欠となっている(図- 3、写真- 2)。
3.事業経緯
・平成5 年3 月 東部振興開発道路促進期成会・( 財) 南部振興会・島尻地域振興開発推進協議会より、沖縄県知事あて道路整備の陳情。
・平成5 年12 月 「沖縄県広域道路基本計画」の中で広域道路として位置付け。
・平成6 年12 月 地域高規格道路の計画路線として指定。
・平成9 年9 月 地域高規格道路の調査区間の指定。
・平成13 年11 月 関係5 町村の助役を中心とする「南部東道路検討委員会」を立ち上げ、行政レベルでのルート検討を開始。
・平成15 年2 月 「南部東道路検討委員会」にて南風原町山川から玉城村垣花のつきしろ交差点までの計画ルートが決定(写真- 3)。
・平成18 年3 月 地域高規格道路の整備区間の指定。
・平成23 年4 月 事業着手(実施設計等)
・平成23 年9 月 都市計画決定
・平成23 年10 月 環境影響評価書公告縦覧
・平成26 年5 月 都市計画変更(4 工区)
・平成26 年7 月 都市計画事業認可(4 工区)
・平成27 年4 月 都市計画変更(3・5 工区)
・平成27 年7 月 都市計画事業認可(3・5 工区)
4.南部東道路概要
南部東道路は事業延長L = 8.3㎞を5 工区に区分し、整備を進めることとしている。1 工区及び2 工区の一部を除き自動車専用道路と同等の機能を有する沿道アクセスコントロール型の道路構造をとっている。そのため、本線へのアクセスは原則、工区毎の起終点に設置されたIC 及び交差点からのみとなる(写真- 3)。
● 1 工区は、那覇空港自動車道と並走する、高架下の側道(県道)を片側1 車線から片側2車線に拡幅する。なお、歩道設置区間は1 工区と2 工区 の一部のみとなる(写真- 4)。
● 2 工区は、町道から本線へアクセスできる箇所を含め、神里トンネル(140m)、高平高架橋(400m)を整備する(写真- 5)。
● 3 工区は大里IC から盛土構造と続き、仲間高架橋(310m)、仲間高架2 号橋、多段切土、雄樋川橋を整備する。
● 4 工区は、高盛土や大城高架橋(220m)、大城ダム1、2、3 号橋(計320m)を整備する。
● 5 工区は、ほぼ全ての区間において掘割構造となり、終点のつきしろ交差点において平面交差する(写真- 6)。
5.事業工程
現在、荒天時及び土砂災害による交通規制が頻発する既存道路の代替道路となる4 工区から工事に着手しており、平成29 年度一部供用を目指している。その後、3 工区、5 工区に着手し、続いて2 工区、1 工区に着手することとしており、平成30 年代前半には、暫定(2 車線)供用を目指している(図- 5)。
6.進捗状況
平成23 年度から実施設計、環境調査、平成25 年度から用地取得に着手している。
事業延長8.3 キロメートルには約1600 筆の用地取得筆数がある。4 工区には約250 筆あり、用地取得の進捗を図るため平成26 年7 月に4 工区全地権者へ一週間の期間と一定の場所を指定し交渉を行う「集団交渉」を周知し、訪れる地権者へそれぞれ個別に事業の概要、土地単価根拠等の説明を行った。
接触できなかった地権者に対しては、通常通りに個別訪問で用地交渉を行った結果、4 工区の用地取得率は82%となっている。
工事は、用地取得状況を踏まえ、平成27 年度から橋梁下部工、道路改良工事に本格的に着手したところであり、平成28 年11 月の時点、4 工区事業費ベースで約35% の進捗となっている。
7.今後の取り組み
用地取得は、平成26・27 年に都市計画変更及び事業認可の手続きを終えた3、4、5 工区について、沖縄県土地開発公社を活用し既に用地買収を進めている。1、2 工区については、平成28 年度の都市計画決定変更及び事業認可の手続き後、平成29 年度から本格的な用地交渉を行う予定である。
工事については、4 工区の整備を優先し当工区の早期供用を目指している。3、5 工区は平成30年度、1、2 工区は平成31 年度に工事着手予定であり、平成30 年代前半の全線供用に向け取り組んでいく予定である。
8.おわりに
本事業を推進するため平成28 年1 月に南部東道路建設現場事務所を事業地近隣に開所したところであり、今年度は5 名の職員が常勤している。今後はさらなる組織体制の強化を図りながら、南部東道路の事業推進、関係者との業務調整や情報共有、また、地域への情報発信の場として活用したいと考えているところである。南部東道路の工事は、スタートしたばかりですが、今後とも皆様からのご支援、ご協力、またご指導のほどを賜りますようお願い申し上げて、南部東道路についての事業概要紹介とさせていただく。