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九州技報 第8号 巻頭言

九州地方建設局長
川 井  優

我が国は,世界有数の経済大国となったが,暮らしの面で,その豊かさを実感できない最大の原因には,経済力に見合った住宅,社会資本が整備されていないことがあげられており,これは,国民生活への投資不足として,対外不均衡の一つとしても指摘されている。
政府は,このような状況を踏まえ,本格的な高令者社会が到来する21世紀を見据え,着実に住宅・社会資本整備の充実を図っていくための指針として,今後10年間の公共投資総額を430兆円とする「公共投資基本計画」を定めた。
九州地方建設局においても,21世紀に向けての新しい建設行政の果す役割について,九州各界の有識者からなる「明日の九州を考える懇談会」を設けて,幅広い視野からの検討を行い,その結果を「コロナプラン」と言う型にとりまとめた提言を頂いたところである。
今後,この提言を基本として,豊かで活力のある「住みよい九州」を実現すべく社会資本の整備を進めて行くこととしている。
しかしながら,今後,これらの社会資本の整備が進み,ストックが大きくなると当然これらを良好な供用水準に保ち,長期に亘って使用していくことが重要な課題となって来るものと考えられる。
近年,一部のコンクリート構造物において建設後10年から15年といった比較的早い時期に異状なひびわれが生じる等の劣化現象が見られるようになり,大きな社会問題となった。
早期劣化現象は,大きく二つ挙げられており,一つは,塩害によるもの,もう一つは,アルカリ骨材反応と呼ばれる現象である。
建設省においては,建設省総合技術プロジェクトの一環として研究に着手し,平成元年5月に「コンクリートの耐久性向上技術の開発」として発表され活用されているところである。
また,平成元年10月1日以降契約する工事より「コンクリート耐久性向上対策実施要領」および「コンクリート耐久性向上対策特記仕様書」を全国的に定めて施工現場で実施している。
さらに,平成2年4月1日より,普通ポルトランドセメントのJIS規格に建設省独自の品質項目として,水和熱,全アルカリ量,塩素量について追加規定して,アルカリ骨材反応抑制対策,コンクリート中の塩化物総量規制の円滑な実施と最近のコンクリート構造物の大型化,および打設速度の向上による発熱等へ対応することとしている。
また,最近,酸性雨等のコンクリート構造物への影響が話題となっているが,建設省としても重要な公共施設の建設,管理を行っている立場から実態調査を行うこととしている。
近年,コンクリート構造物は大型化,高度化しており,生コンクリートの品質の確保がコンクリート構造物の耐久性向上にとってますます重要となっている。
コンクリート構造物が長期に亘って供用性を保つためには,生コンクリートの製造,運搬,打設,養生等,各段階での施工管理が重要であり,それぞれの立場にある技術者が一段と認識を深め努力することを希望する次第である。

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