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東九州自動車道(清武南IC~日南北郷IC)の整備効果について

国土交通省 九州地方整備局
宮崎河川国道事務所
技術副所長
安 仲  努

キーワード:物流効率化、産業振興、広域医療支援、リダンダンシー確保、混雑緩和

1.はじめに
東九州自動車道は、福岡県北九州市から鹿児島県鹿児島市に計画されている延長436kmの高速自動車国道であり、九州における循環型高速ネットワークを形成し、九州全体の産業、経済、文化の交流発展に資する道路である。
このうち、令和5年3月25日に開通した東九州自動車道(清武南IC ~日南北郷IC)は、延長が17.8kmの区間である。今回の開通により、平成30年3月11日に既に開通済の東九州自動車道(日南北郷IC ~日南東郷IC)と接続し、高速自動車国道で宮崎市と日南市が1 本でつながった(図- 1)。
本稿は、東九州自動車道(清武南IC ~日南北郷IC)に期待されるさまざまな効果及び開通後の整備効果について紹介する。

図1 東九州自動車道(清武南IC~日南北郷IC)

2.期待される整備効果
(1)時間短縮
東九州自動車道(清武南IC ~日南北郷IC)の開通により、北九州市から日南市までの高速ネットワークが繋がることで北九州市~日南市の所要時間が4 時間35分となる。
これは、東九州自動車道整備前の昭和63年時点と比べ、4 時間30分の短縮が図られ、所要時間が約半分となる(図- 2)。

図2 所要時間の変化(北九州市~日南市)

また、今回の開通区間が結ぶ宮崎市と日南市の両市役所間では所要時間は既に開通済みの区間(日南北郷IC ~日南東郷IC)も含めると整備前は約70分の時間を要していたが、整備後は約43分となり、約27分の短縮が図られる(図- 3)。

図3 所要時間の変化(日南市役所~宮崎市役所)

(2)通勤・通学の負担軽減
宮崎市~日南市間は約2,000人/日の通勤通学利用者が存在し、国道220号などを利用している(図- 4)。 
その経路となっている国道220号や主要地方道日南高岡線はカーブ区間が多いため、急ブレーキや急ハンドルが発生し、交通事故の危険性が高いなどの交通課題がある(図- 5)。
開通により、宮崎市~日南市間の交通安全性が向上し、通勤通学の利便性向上が期待される。

図4 通勤・通学者数の推移

図5 急ブレーキ発生台数の比率

(3)安全・安心な救急医療体制の確保
日南市の管外搬送は年間約20 件発生し、宮崎大学医学部附属病院や県立宮崎病院へ搬送している(図- 6、7)。
隣接する東九州自動車道(日南北郷IC ~日南東郷IC)の開通後、日南市から宮崎大学医学部付属病院への所要時間が約5分短縮している。
東九州自動車道(清武南IC ~日南北郷IC)開通後には、さらに約18分の時間短縮が期待され、搬送時間の短縮、走行性の向上、疾病者への負担軽減が発揮され、救急医療活動への寄与が期待される(図- 8)。

図6 宮崎県立日南病院からの搬送

図7 日南市消防本部からの搬送件数変化

図8 日南市消防本部からの搬送時間変化

また、宮崎県では、悪性新生物(腫瘍)、心疾患に次いで脳血管疾患(脳卒中)が主な死亡要因となっている(図- 9)。

図9 宮崎県の主な死亡要因

宮崎市にある潤和会記念病院は、宮崎県唯一の脳卒中の拠点病院「一次脳卒中センター(PSC)コア」に認定され、脳卒中の治療の中核を担っており、開通後は日南市から潤和会記念病院への通院時間が短縮され、早期治療による救命率向上や後遺症の軽減につながることが期待される。

(4)観光振興による地域活性化
今回開通区間である宮崎市・日南市は県内有数の観光地を有するとともに、例年100 万人程度が訪れるプロスポーツのキャンプ地となっており観光客が多い地域となっている。
油津港では世界最大級のクルーズ船(22万トン級)受け入れ可能な岸壁が整備され、宮崎港ではR4年に神戸港発着のカーフェリーが新規就航されるなど観光振興への動きが加速している。
また、県外からの観光客等の交通の拠点となる宮崎空港からの60分圏域が拡大することで観光施設へのアクセス性が向上し、観光による地域活性化が期待される(図- 10、11)。

図10 宮崎空港からの60分カバー圏

図11 日南市の観光客上位5施設

(5)災害に強いネットワークの構築
東九州自動車道(清武南IC ~日南東郷IC)に並行する国道220号には、異常気象時の事前通行規制区間が存在し、過去15年間で79 回の通行止めが発生している。
令和3年9月の斜面崩壊時には、35日間の通行止めが発生した。また、国道220号の約4 割は津波浸水想定区域であり、津波発生時には通行止めのリスクがある。今回の開通により災害に強いネットワークが構築され、大規模災害時には緊急輸送路としての活用が期待される(図- 12)。

図12 国道220号の現状と課題

3.開通1ヶ月後の交通状況及び整備効果
令和5年3月25日に東九州自動車道(清武南IC ~日南北郷IC)が開通し、その整備効果を把握するため、開通1ヶ月後の交通状況の調査(図- 13 内①、②、③)を行うとともに、観光関係者、物流関係者へのヒアリングを行った。

図13 道路交通状況の調査位置

図14 道路交通状況の変化(断面)

交通状況については、図- 14 の通り、開通区間と並行する幹線道路(国道220号、県道28号)で減少し、宮崎市方向と日南市方向を往来する交通量(東九州道、国道220号、県道28号)は開通により1,059(台/12h)[5%増]となった。
既に開通していた東九州自動車道(日南北郷IC ~日南東郷IC)の交通量は今回の開通前と比べて3,383(台/12h)[90%増]と大幅に増加し、今回の開通が、開通済の区間の利活用にも大きく影響していることが確認できた(図- 15)。

図15 既開通区間の変化

また、観光面の効果について、日南市内の観光施設へのヒアリングによると、県北や熊本方面といった、宮崎県内外の遠方からの観光客が増加し、売上も向上した、東九州自動車道を利用することで目的地の選択肢が増えているとの声があった。
開通区間の南に位置する「道の駅なんごう」では前年のゴールデンウィークと比較して、客数は98%の増加、総売上は28%の増加となり、関係者へのヒアリングでは過去最高の来客数だったとの声があった(図- 16)。
また、物流関係者へのアンケートにおいては、今回の開通区間を利用した運送ルートにより、日南方面への運送時間が短縮され、ドライバーの負担が軽減しているという開通効果を実感する声があった。

図16 観光客数等の変化

4.おわりに
多くの方々にご協力いただき、無事開通することができた。今後も、継続的な調査を行い、交通量の変化や整備効果などの検証を実施するとともに、南側に残る事業中の区間についても鋭意事業を進めてまいりたい。

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