九州技報 第39号 巻頭言
国土交通省 道路局長 宮 田 年 耕
平成17年4月末に、国土交通省が実施したアンケート調査において,興味深い結果が出ている。公共事業に対する関心度について「非常に関心を持っている・やや関心を持っている」が68%、公共事業の必要性について「必要だと思う・どちらかと言えば必要だと思う」が80%を占め、現在の構造改革の中にあっても国民の公共事業への期待の高さが読み取れる。一方、公共事業に関する印象や具体的イメージに対する設問については、「悪い印象を持っている・やや悪い印象を持っている」が80%を占める状況にあり、具体的イメージとして「税金を無駄に使っている(そう思う・ややそう思う)」が85%、「談合などの不正がある(そう思う・ややそう思う)」が86%と,国民の公共事業に対する信頼度は殆ど無いに等しい結果である。このアンケート調査後にも談合事件摘発等が続いており、公共事業へのイメージが更に悪化しているのは想像に難く無い。
何故これほどまでに公共事業のイメージが悪いのであろうか。一般の企業が、コンプライアンスの欠如や企業倫理が問題となる事件・事故を起こした事例は少なくない。これに対しては国民も自分の意志・怒りを持ってある企業の製品は買わない、ある企業との契約を解除する等の直接的な行動・対応ができる。一方,公共事業では公共事業であるがために国民は自分の意志を持った制裁や対応ができない現実がある。代理者たる発注者が,ルールどおりに指名停止等の措置を企業に執ったとしても、国民の目から見たら不満と感じられる部分や理解できない部分も多々あるように思える。これらの要因とマスコミ報道等が重なり,公共事業の受・発注者を取り巻く環境全体に対し不信感が増大しているものと思われる。又最近「いわゆるダンピング」受注が増加しており、当整備局発注工事においても例外ではない。その影響としては,下請け業者へのしわ寄せ、目的物の品質低下或いは無理な工程・工法による工事事故の増加等が懸念され、これらが顕在化すれば更なるイメージダウンは避けられない。これら負のイメージを払拭していくためには、受・発注者共に説明責任を果たし、法令を遵守し、襟を正すべきところは襟を正していくことが必要である。
当整備局では,「いわゆるダンピング」対策や「入札・契約」に関する新たな取り組みを始めている。その一つが、総合評価方式における技術力の評価を重視する対策である(加算点の重視)。企業の或いは技術者の技術力を重視することにより、品確法の趣旨に沿い又技術者の皆様に自信と誇りが持てるような結果も期待しているところである。決して発注者側のみ或いは企業側のみでの努力で全てが改善するものではない。互いに問題・課題に対する共通認識を持ち、互いに改善に向け公共事業の置かれた厳しい環境に対応していくべきものと考えている。