九州技報 第30号 巻頭言
社団法人 建設コンサルタンツ協会九州支部
支部長 山 口 一 弘
わが国の建設コンサルタントは,第二次世界大戦後に誕生した業種で,その歴史はまだ浅く昭和38年に,社団法人・建設コンサルタンツ協会が設立されて今年で39年目です。この間旧建設省をはじめ各行政機関による指導と,各社の自助努力によって,わが国の社会資本整備の遂行において,計画,調査,設計,施工管理という重要な分野を担ってきました。そしてようやく近年,高度な技術を提供できる知的産業として発展し,発注者の信頼を得るまで成長してきました。
しかしながら,社会一般には建設コンサルタントに対する認識がいまだ不十分です。そこで平成元年5月建設省で「建設コンサルタント中長期ビジョン(ATI構想)」「魅力に満ち(Attractive),技術を競う(Technologically),独立した(Independent)知的産業」が策定され,建設コンサルタントの進むべき将来像と振興策の指針が示されました。これを受けて活発な協会活動を展開してまいりましたが,協会では2001年を目標年次とし「ATI構想」の基本を踏まえて,今後における社会資本整備の動向,建設コンサルタントを取り巻く内外の環境変化を分析し,建設コンサルタントが果たさなければならない役割と責任を,13項目の基本施策として整理し,それぞれの旋策について行動計画を提示した「建設コンサルタント中期行動計画ATI-21」を作成し実施してまいりました。その際,公共事業の顧客は「国民(利用者)」であると位置付け,その代行者である「発注者」のもと,新しい時代での建設コンサルタントは「発注者のパートナー」に加え,「発注者のエージェント」の役割を分担し,「顧客」のニーズに応えなければならないと自覚してまいりました。
さて,このような歴史のなか建設コンサルタンツ協会九州支部は,去る平成10年10月で30周年を迎え,昭和43年発足当時20社であったものが,平成13年9月末現在117社を数えるまでに発展しました。組織としては,常任幹事会のもとに総務・対外活動・技術・研修・広報の5部会があり,その下に11の委員会をおき事業活動を行っています。事業内容としては,年1回開催の総会,他の関連5団体と共催の新年賀詞交換会のほか,九州地方整備局・各県および政令指定都市土木関係の皆様との意見交換会,官公庁と当協会の実務担当者同士の実務者懇談会,研修部会が行う,河川・ダム部門,道路・橋梁部門の研修会ならびに見学会,その他大規模災害対応演習,RCCM資格試験,学生懇談会,運動会,等等を行っています。今後も「顧客のエージェント」を目指し,建設新時代に貢献する建設コンサルタントの実現に向かって,国土交通省をはじめ関係行政機関のさらなるご指導とご支援をえながら,ATI構想の実現に邁進したいと思います。
最後に,建設コンサルタンツ協会九州支部として,今後とも優れた建設工法の研究開発が推進されんことを心より祈念します。