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綾北川総合開発事業田代八重ダムについて
(カーテングラウチングの施工)

宮崎県企業局 工務課
 開発整備係長
亀 澤 洋 一

1 はじめに
宮崎県のダム事業については,ここで紹介する田代八重ダムを含めて多目的8ダムと4治水ダムが完成しており,現在多目的1ダム,治水1ダムの計2ダムで建設事業を展開している。県で管理しているダムは15ダムであるが,治水4ダムを除く多目的8ダムと利水3ダムの計11ダムを企業局で建設している。

2 宮崎県のダム事業と企業局
宮崎県は年間降水量が2,400㎜(全国3位)に達する気象条件と九州山地を源とする急勾配の河川が多いという地形条件から,明治時代から水力発電の開発が行われてきた。
大正7年12月には,水力発電を県営とする意見書を県議会で議決して以来,全国有数の豊富な水源活用を県政の重要課題と位置付け水力開発を進めてきた。昭和13年には県営電気建設部を設置し,小丸川河水統制事業に着手した。戦後は河川総合開発事業の中で水力開発を行い,これまで小丸川,綾川,三財川,大淀川,祝子川,綾北川の順に6河川総合開発事業が完成している。
現在企業局が運営している11発電所の最大出力の合計は15万5,300KWで,全国公営電気事業の中では第3位の規模となっているが,平成11年の年間実績供給電力量は約5億KWhであり,これは県内の実績発電量(九州電力・民間を含む)約42億KWhの12%にも相当する。発電した電力は九州電力㈱へ卸売りしている。

3 田代八重ダムの概要
田代八重ダムは,大淀川水系綾北川宮崎県須木村田代八重地先に建設する多目的ダムで,洪水調節,水道用水の確保,発電,既得取水の安定化および河川環境をその目的としている(図-2~3)。綾北川は熊本県多良木町その源を発し,須木村,綾町を経て本庄川の合流する流域面積200㎢余の河川である。綾町から本庄川流域の国富町にかけての一帯は古くから度々水害に見舞われてきた。そのため,昭和35年までに綾川総合開発事業によって,綾北ダム(綾北川),綾南ダム(本庄川)が建設され流域の治水安全度の向上を図ってきた。しかし,綾北ダム建設後も昭和46年の台風23号等による治水被害を受けていること,また,最下流域位置する宮崎市市街地の人口集中および生活水準の向上に伴う水需要の増大が予測されること等から抜本的な洪水対策,新たな水源の確保が望まれることになった。その結果,綾北川総合開発事業を実施することとなった。
本ダムは標高64.6m,堤頂長216.0mの重力式コンクリートダムである。表-2にダム諸元を,図-4に標準断面図を示す。

4 田代八重発電所の概要
本発電所は,田代八重ダムの貯留水とその落差を利用した発電所として建設したものである。発電所位置は,田代八重ダムが綾北ダムの貯水池末端に位置するためダム式とした。最大使用水量は14.0㎥/s,最大出力は5,800KWである。また,最大有効落差は51.3mである。水車は落差と使用水量から立軸フランシス水車を選定し,発電機は力率および効率が良く単独運転が可能な同期発電機を選定した。また,年間可能発生電力量は約2,000万KWhで,これは一般の標準家庭が1年間に消費する電力量に換算すると約6千世帯分に相当するものである。なお,本格的なダム式の発電所は計画されている発電所としては本発電所が最後になると思われる。

5 ダムおよび発電所の工事経過
ダム本体工事は平成5年2月に着工,平成7年にはダム本体コンクリート打設を開始し,3年後の平成11年1月にダム本体コンクリート打設を完了した。その後ダム管理設備工事および地すべり対策工事等を実施して,平成11年11月から試験湛水を開始し,今年4月には完了した。
また発電所工事については,ダム本体工事の進捗と合わせ平成7年に着工し,平成11年3月までに水車発電機の据付を完了し,平成12年4月に運転を開始しているところである。発電所は通常は無人であり,運転・監視は宮崎市の総合制御所から遠方監視制御を行っている。

6 ダムサイトの地形および地質
ダムサイトの地形は四万十帯とよばれる堆積岩類であり,その基盤岩は砂岩と頁岩が様々な割合で混在する互層で構成され,左岸側は頁岩優勢な互層が多く,河床部から右岸側にかけては砂岩優勢な互層が分布している。岩盤の割れ目の大半は層理面に沿うものであり,砂岩優勢層は頁岩優勢層に比べて割れ目間隔が大きい傾向がある。また割れ目は地表近くに浸透しており,一部風化した粘土が介在する。

7 カーテングラウチングの計画および仕様
カーテングラウチングの改良目標は2Lu以下とし,施工範囲は鉛直方向で2Lu以下のゾーンに達する深度(河床部40m,両岸袖部30m程度)とし最大施工深度はダム高程度とした。水平方向では左右岸ともサーチャージ水位と地下水位が交わる範囲までとした。孔配置は図-5に示すとおりピッチ1.5m間隔の単列配列であるが,3次孔改良範囲は浅部の2~5Luゾーンに達する深さまでとし,2次孔改良範囲は深部の1~2Luゾーンに達する深さまでとした。

8 カーテングラウチングの仕様変更によるコスト縮減について
(1)概要
カーテングラウチングについては平成8年度より開始したが,当初河床部12~14グループの3グループについて施工を行ったところ,層理面に沿う細かな割れ目が発達する岩盤に対して注入効果が得られず,当初計画の注入仕様で追加基準に従って施工すれば,数量が莫大となり経済面で大きな問題になることが予想された。従って,注入工法および注入材料を含めたテストグラウチングを行い,効果的な施工方法を検討することとした。

(2)試験施工での対応策
河床部10~16グループにおける試験施工では,以下の対策を講じることとした。
① 超微粒子セメントの使用
高炉セメントより粒径の小さい超微粒子セメントの使用により改良性の向上を図ることとした。まず,11グループでは一般孔全てを超微粒子セメントを使用し,改良性を確認した。次に1グループでは3次孔改良範囲を超微粒子セメント,2次孔改良範囲を高炉セメントを使用することにより,深部については圧力効果のみで改良性を確認することとした。さらに10,16グループでは,1,2次孔は超微粒子セメントを使用し,最終次数孔となる3次孔以降は,水押試験の結果より超微粒子セメントと高炉セメントの使い分けを行い改良性を確認することとした。
② 注入圧力の増加
河床部の施工結果より,注入圧力の違いが改良性に影響するため注入圧力を高めて改良性の向上を図ることとした。1~6ステージについて1~5(kgf/cm2)圧力を増加することとした。
③ 配合切替の見直し
河床部の施工結果より1:8→1:6,1:6→1:4の切替直後に注入量が急減するものがあったため,貧配合(1:8,1:6)の注入量を増加させることにより改良性の向上を図ることとした。

(3)試験施工の範囲および仕様
河床部の中の10,11,15および16グループの4グループにおいて注入仕様を変更した。なお,パイロット孔においては当初計画の仕様とした。各グループの注入仕様の一覧を表-3に,区分図を図-6に示す。

(4)試験施工の結果
改良性については3次孔改良範囲の2次孔から3次孔のルジオン値の低減および2次孔改良範囲の1次孔から2次孔のルジオン値の低減が明瞭であった。3次孔改良範囲では,3次孔の平均ルジオン値は超微粒子セメント使用のグループでは全て2Lu以下となった。追加孔は当初計画の追加ステージ数の割合が100%以上(施工数量が2倍以上)なのに対し,超微粒子セメント使用のグループにおいては30%以下と少なくなった。

(5)最終仕様の決定
超微粒子セメントの価格は高炉セメントの10倍以上であるが試験施工の実験によると,超微粒子セメントを使用した場合でもグラウト工全体におけるセメント代の占める割合は数%であり,削孔費がかなり削減できるため経済的な施工となる。注入圧を高め,貧配合を多くした高炉セメントの注入により,追加ステージはやや低減するものの,超微粒子セメントを使用した方がより追加ステージを低減させることが効率的である。また最終次数孔については水押試験の結果より,改良されていれば(Lu≦2),高炉セメントによる施工で効果的な施工となる。セメントの使い分けの仕様については表-4のとおりとした。

9 改良性の評価
当ダムのカーテングラウトでは,最終仕様決定後の注入状況は良好であり,高炉セメントのみのグループと超微粒子セメント併用グループでは改良効果に大きな差が現れ当初計画に比べ追加孔が大幅に減少するというよい結果になっている。特に,高透水岩盤の残存により追加孔が多くなると懸念していていたアバット高位標高部でも低次数での注入が良い効果をもたらし,浅部1~2ステージの追加孔施工にとどまっている。
表-5より各グループ共に次数の進行に伴ってルジオン値は低減しており4次孔までの施工で改良目標である2Lu非超過確率85%以上をほぼ達成している。河床部での試験施工結果を踏まえて,初期段階より超微粒子セメントを使用した左右岸部は,規定孔で目標を達成しているグループが多く,注入仕様の変更(特に注入材料)が有効であったと考えられる。
図-7に次数毎のルジオン値および単位注入セメント量の推移図を示す。

10 さいごに
田代八重ダムは平成11年11月24日より試験湛水を開始したが3月の降水量が極端に少なかったため,今年4月10日にサーチャージ水位・常時満水位に達した。その後常用洪水吐から放流を行い,1年に一回程度起こりうる洪水量を想定して1日最大3mの水位降下を実施した。懸念されていた貯水池内の地すべりも発生せず,試験湛水は4月24日に無事終了した。現在,ダムの管理は土木部に移管している。
これまでに多大のご指導とご助言をいただいた建設省をはじめ関係者各位に厚くお礼を申し上げる次第である。

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