第81回国民スポーツ大会・第26回全国障害者スポーツ大会に向けた
宮崎県山之口陸上競技場の整備について
宮崎県山之口陸上競技場の整備について
宮崎県 県土整備部
建築住宅課 主査
建築住宅課 主査
平 山 翔
キーワード:陸上競技場、空間構造、国民スポーツ大会
1.はじめに
本県では、令和9年に48年ぶりとなる、第81 回国民スポーツ大会・第26 回全国障害者スポーツ大会が開催される。前回の大会時に整備した関連施設の老朽化が進んでいることから、新たに陸上競技場、体育館、プールの3施設の整備を進めている。
本稿では、令和6年度に完成した「宮崎県山之口陸上競技場(KUROKIRI STADIUM)」の概要と工事の特徴を紹介する(写真- 1)。

2.宮崎県山之口陸上競技場の概要
(1)敷地概要
・所在地:宮崎県都城市山之口町(都城市山之口運動公園内)
・敷地面積:118,900m2
建設場所の都城市山之口運動公園は、同市の都市公園で、同市の東部に位置する山之口地区に立地している。公園の近傍には、平成28年9月に開通した九州縦貫自動車道宮崎線の山之口スマートインターチェンジ(以下「山之口SIC」という。)や国道269 号、JR日豊本線山之口駅があり、県内外からの交通アクセスに優れている(図- 1)。

同公園は、国スポ・障スポ大会のメイン会場として県と市が共同で整備を行った。今回の整備により、全国レベルの各種大会の開催が可能となり、交流人口の拡大や地域活性化が期待されているだけでなく、大規模災害発生時の後方支援拠点としての役割も期待されている。
まず、県が土地の造成を実施し、公園内の施設は、主競技場及び投てき練習場を県が整備し、補助競技場及び多目的広場、公園施設を市が整備を行った(図- 2)。

(2)建物概要
・建築面積:14,741m2
・延床面積:22,809m2
・階数:地上4 階
・構造:鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
<スタンドの構造>
陸上競技場は、メインスタンドの観客席を2段に積層することにより、全ての観客席がよりトラック・フィールドに近接した配置となり、競技観戦の臨場感を最大限高められる計画とした。また、適所にフィールドレベルまで近接し、競技者・選手に近い目線で臨場感あふれる観戦ができるよう跳ね出し観客席を設けている(図- 3)。

<大屋根の構造>
メインスタンドの大屋根も特徴的で、屋根架構の主な構成は、主架構となる大梁、小梁、外周アーチ、ケーブルの組み合わせで成り立っている。
外周アーチは屋根の外周部にわたり、閉断面(台形のビルドボックス材)の部材により大梁と結合することで、暴風時や地震時に屋根の形態を維持する。また、ケーブルを外周アーチに沿って取り付けることで、暴風や地震による屋根のバタつきを抑えるとともに、風や地震などの外力に対して抵抗し、変形性能が向上する。さらに、ケーブルは鋼線を束ねて被覆したものであるため、維持管理も不要である。
小梁は屋根の仕上げ材を支持するほか、大梁に対して斜めに接合していることから屋根ブレースの効果も期待している。また、風や地震の荷重を伝達する役目もあり、軸力が生じるため角形鋼管を採用している。
屋根架構の主な構成部材は、台形のビルドボックス材、H形鋼とし、部材寸法は、大梁で600~ 1,200mm、小梁で□ -250 ~ 300mm、外周アーチは台形形状で600 ~ 1,100mmで、引張材のケーブルはφ 55、80mmとなっている。ケーブルは、引張力が存在してはじめて有効に働く部材であるため、風や地震などの外力に対して張力が消失しないよう張力(φ 55:300kN、φ 80:1,000kN)を導入している(写真- 2)(図- 4)。


(3)主な施設
・(公財)日本陸上競技連盟1 種公認陸上競技場
・世界陸連(WA)クラス2 認証競技場
・全天候型舗装400m トラック9 レーン
・屋内走路(練習用)(写真- 3)
・収容人員 約15,000人(芝生席含む)
・サッカー、ラグビー等が可能なインフィールド
・大型映像装置、ナイター照明設備
本施設は、アジア大会クラスの国際大会の開催や世界記録が認証される世界陸連(WA)のクラス2 認証を県内で初めて取得した。また、ラグビーのトップレベルの試合が開催できるよう世界基準の17m のゴールポールを導入している(写真- 4)。


3.大屋根の施工
本施設の特徴である大屋根は、通常建築物では採用されない鋳鋼やケーブルを採用している。
(1)屋根柱脚部の鋳鋼
大屋根の柱脚部には鋳鋼を採用しており、発泡スチロールで“ 型” を製作し、細かいディテールを設計者と確認した(写真- 5)。その後、製品検査では、3 次元での寸法管理のため、座標計測を行った(写真- 6)。


(2)鉄骨建て方
現場の鉄骨建て方は、高所での作業を極力減らすために、大梁、小梁、母屋について、地上で可能な範囲、ユニット化して建て方を行った(写真- 7)。

また、大規模空間である大屋根は、仮設のベント支柱で仮受けし、組み立てた後に、順次、反力解放(ジャッキダウン)を行った。事前に施工時解析を行い、建て方計画を立て、施工しているが、実際の施工は解析結果に近い値となった(図- 5)。

(3)ケーブル張力導入
先述したケーブルの施工は、ドラムに巻かれたケーブル(約200m)を引き出すところから始まり(写真- 8)、ケーブル受けにセットする際には、クレーン車5台で吊り上げた。

張力導入は、左右同時に油圧ジャッキで引っ張り、所定の張力を導入した。所定の張力を導入した上で、ケーブル端部を、ピンをセットする位置に合わせる必要があるが、左右のタイミングがずれると張力がどちらかに偏ってしまう。このため、張力導入時は無線やteams のグループ通話等を利用し、多数の作業員が連携して作業を行った(写真- 9、10)。



(4)ステンレス屋根
大屋根は四方を地盤面と2階コンコース面に接地する楕円球体とすることで、雨や火山灰がスムーズに流れる合理的な屋根形状となっており、各柱脚部に雨水桝を設け、安全なメンテナンスが可能である。併せて、屋根材はステンレスを採用していることから、基本的にメンテナンスフリーとなっている。

4.おわりに
令和6年12月に完成し、令和7年4月に供用開始を迎えることができた。5月には、ラグビーリーグワンの公式戦も開催され、陸上競技以外でも活用されている。
今後も令和9年の国スポ・障スポ大会の機運を高めるため、リハーサル大会やJ リーグの公式戦などが予定されており、スポーツを通して地域の活性化に繋がることを期待している。
最後に、本施設の施工者の清水・都北・下森JVをはじめ、設計・監理者の佐藤・益田JVの関係者の皆様にはこの場をお借りして御礼申し上げる。