九州中央自動車道(山都 中島西IC~山都通潤橋IC)の
開通により期待される整備効果について
開通により期待される整備効果について
国土交通省 九州地方整備局
熊本河川国道事務所
計画課長
熊本河川国道事務所
計画課長
横 山 朋 弘
キーワード:九州中央自動車道、整備効果
1.はじめに
九州中央自動車道は、熊本県上益城郡嘉島町(嘉島JCT)と宮崎県延岡市(延岡JCT・IC)を結ぶ延長約95kmの高規格道路で、九州のほぼ中央を横断して九州縦貫自動車道と東九州自動車道を結び、これらと一体となって九州の循環型高速交通ネットワークを形成する道路である(図- 1)。
このうち、嘉島町から山都町に至る約23km区間では、新直轄方式として平成15年度より事業を進め、嘉島JCTから小池高山IC区間の約1.8kmが平成26年3月、小池高山ICから山都中島西IC間の10.8kmが平成30年12月、山都中島西ICから山都通潤橋IC区間の約10.4km区間が令和6年2月11日に開通した(写真- 1)。この開通により、九州中央自動車道全体のうち約4割にあたる約41.2kmが開通した。
本稿では、九州中央自動車道(山都中島西IC~山都通潤橋IC)の開通により期待される、防災力の向上や安全性の向上、救急医療アクセスの向上、観光活性化といった整備効果や、開通後の交通状況を紹介する。
2.整備効果
(1)防災力の向上
今回開通した区間に並行する国道445号では、災害等により過去10年間(平成25年~令和4年)で13回の通行止めが発生しており、令和5年7月には、梅雨前線の大雨により国道445号の金内橋 が落橋して通行止めとなり、バスを含む大型車は約20分の迂回が生じるなど、熊本市と山都町間の通勤・通学等への影響が生じた(写真- 2)。
今回の開通により、平常時・災害時問わず通行可能となり、信頼性の高い道路ネットワークが構築された(図- 2)。
(2)安全性の向上
今回開通した区間に並行する国号445号には、線形不良箇所や幅員狭小区間が多数存在しており、九州中央自動車道の既開通区間(嘉島JCT~山都中島西IC)と比較して急ブレーキや急ハンドルが9 倍以上多く発生していた(図- 3)。
今回の開通により、線形不良箇所や幅員狭小区間の回避が可能となり、走行性及び交通安全性の向上が期待される(図- 4)。
(3)救急医療支援
山都町では、年間700件を超える救急搬送のうち約6割が管轄エリア外への搬送で、そのほとんどは熊本市内の病院への搬送である(図- 5)。
山都町から熊本市内の第三次救急医療施設への搬送時間は、熊本県平均と比較して約17分長く、患者への負担が大きいことに加え、消防署内の救急車の不在時間も長く、課題である(図- 6)。
今回の開通により、熊本市内の病院への搬送時間の短縮や、走行性向上による患者負担の軽減、消防署への帰署時間の短縮といった、円滑な救急搬送を支援できることが期待される(図- 7)。
(4)観光活性化
山都町は、令和5年9月に国宝認定された通潤橋をはじめ、弊立 神宮や蘇陽峡 などの観光資源を有していると共に、周辺地域には阿蘇地域や宮崎県高千穂町など、九州有数の観光地が存在している。
今回の開通により、熊本市方面からの所要時間が短縮することで観光振興に寄与すると共に、今後、九州中央自動車道が整備されることで、点在する観光地間の周遊性を向上させる広域観光ネットワークが形成されることが期待される(図- 8)。
3.交通状況
(1)交通量調査概要
今回の開通による交通変化を把握するため、令和5年11月28日(火)と令和6年3月13日(木)に、平日12時間(7~19時)交通量調査を実施した。
(2)交通量の転換と誘発効果
今回の開通区間では約5,300台/hの交通量が確認できた。また、開通区間への交通転換により、並行する国道4 4 5号では交通量が6割減少した。さらに、今回の開通区間と並行する国道445号の断面交通量が約2割増加しており、沿線地域間の交流促進に寄与していることも確認できた(図- 9、10)。
4.おわりに
多くの整備効果が期待される九州中央自動車道(山都中島西IC~山都通潤橋IC)が開通し、実際に交通状況が変化していることを紹介した。
今後も、道路ネットワークとしての効果を最大限発揮するために、九州中央自動車道の未開通区間における調査や事業を推進すると共に、熊本県内の道路整備にも引き続き尽力していく。
最後に、九州中央自動車道(山都中島西IC~山都通潤橋IC)の整備にあたりご協力いただいた地域の皆さま、事業推進に尽力いただきました受注者の皆さまに、この場を借りて御礼申し上げます。
参考文献
1)H25 ~ R4 通行規制実績(熊本県)
2)上益城消防組合消防本部(R4)
3)救急救助の現況(総務省)(R4)
4)熊本県観光統計表(R3)
5)山都町観光統計調査(R4)
6)高千穂町観光統計(R4)