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国道57号森山拡幅(森山東IC~森山西IC)の開通報告

国土交通省 九州地方整備局
長崎河川国道事務所 計画課長
小 柳  誠

キーワード:森山拡幅、整備効果、開通イベント

1.はじめに
国道57号森山拡幅は、南島原市深江町から諌早市に至る延長約50kmの高規格道路「島原道路」の一部を構成し、広域ネットワークの形成、交通混雑の緩和や交通安全性の向上等を目的として、4 車線の現道拡幅区間及び2車線の自動車専用道路(新設)と現道整備区間(歩道設置等)から成る延長7.6kmの道路である。
当該道路は平成22年3月に尾崎交差点から長野町交差点の4 車線の現道拡幅区間1.6km が開通しており、先般、令和5年11月12日(日)に森山東ICから森山西ICの自動車専用道路部(延長3.3km)が開通した(図- 1、2)。
本稿では、今回開通区間の概要、期待される整備効果、開通に向けた各種取組について報告する。

図1 島原道路の位置図

図2 国道57号森山拡幅の位置図

2.今回開通区間の概要
今回開通した森山東IC~森山西ICの自動車専用道路は、国道57号と島原鉄道に挟まれた範囲において、平成22年度に用地取得と工事に着手し、約14年の歳月をかけて整備された。
今回の開通により、愛野森山バイパス(1.8km)および吾妻愛野バイパス(1.7km)と繋がり、雲仙市吾妻町から諌早市に至る約7kmの連続する自動車専用道路区間が形成された。

3.期待される整備効果
(1)広域交通ネットワークの形成
国道57号森山拡幅は、高規格道路「島原道路」の一部を構成しており、これまで、島原深江道路(4.6km、平成11年2月)、愛野島原線(2.2km、平成16年3月)、島原中央道路(4.5km、平成24年10月)、愛野森山バイパス(1.8km、平成25年12月)、吾妻愛野バイパス(1.7km、平成29年12月)、諫早外環状線(7km、令和4年5月)までの計21.8kmが完成している。
島原道路の整備により、沿線都市と広域交通拠点(長崎自動車道 諫早ICや西九州新幹線 諫早駅)との所要時間短縮や高速定時性の確保が図られ、島原地域の観光交流促進や農産物等の物流効率化に貢献することが期待される(図- 3)。

図3 島原道路の整備による諫早ICから南島原市役所までの所要時間の変化

図 所要時間の算出方法

(2)農産物の輸送時間短縮による地域産業の支援
島原半島の農業産出額(野菜)は県内の約6割以上を占めており、特に「秋植えばれいしょ」の生産が盛んで、長崎県は全国1位の出荷量を誇る。また、ブロッコリーの出荷量は、島原道路の段階的な開通の後押しもあり、平成23年から約1.5 倍以上に増加している。
島原半島の農産物は関西・関東方面への出荷が多く、最盛期には1日100 台以上が出荷していることから、島原道路の整備により、新鮮な状態で市場に届けるとともに、運送コストの削減やドライバーの労務環境の改善などによる、農業や物流業の支援が期待される(図- 4、5、6)。

図4 長崎県の農業産出額(野菜)の割合資料:市町村別農業産出額(推計) 令和3年、農林水産省

図5 秋植えばれいしょの出荷量全国シェア資料:作物統計調査 令和4年、農林水産省

図6 ブロッコリーの出荷量と島原道路の整備延長の推移資料:R3年作物統計調査、R3年市町村別農業産出額(農林水産省)

(3)観光振興による地域活性化
島原半島には観光施設が多く存在しており、年間約401万人(令和元年)の観光客が訪れている。最近では、令和4年9月の西九州新幹線(武雄温泉~長崎)の開業により広域ネットワークの交通拠点が整備され、世界文化遺産の原城跡、キリシタン殉教の舞台にもなった雲仙地獄、令和6年に築城400年を迎える島原城、テレビCMのロケ地となった島原鉄道大三東おおみさき駅など話題の観光スポットも豊富であり、観光業界へのヒアリングによると周遊される方が増えているとのことである。
島原道路の整備により、島原半島の観光地への所要時間が短縮するとともに高速定時性が確保され、観光振興による地域活性化が期待される(写真-1)。

写真1 島原半島の観光地

(4)国道57号の交通混雑の緩和
国道57号は、島原と諫早を結ぶ重要な幹線道路であり交通が集中しているため、森山拡幅の事業区間では朝夕のピーク時を中心に交通渋滞が発生していたが、今回、自動車専用道路が整備されることにより、国道57号と自動車専用道路の交通の分担が図られ、交通混雑の緩和が期待される(写真- 2、図- 7)。

写真2 国道57号(現道部)の混雑状況 森山東IC~森山西IC(開通前)

図7 今回開通区間の交通量の変化予測資料:現況はH27全国道路・街路交通情勢調査 開通後は将来交通量推計に基づく予測値

(5)国道57号の交通安全性の向上
今回開通区間と並行する国道57号現道部の死傷事故件数が県内平均の約2.5倍と高く、その事故類型の内訳では追突事故が約8割と多い。
森山拡幅の自動車専用道路が整備されることによる交通混雑の緩和により交通事故が減少し、交通安全性の向上が期待される(図- 8、9)。

図8 並行する国道57号の死傷事故件数資料:交通事故統合データベース(H30~R3)

図9 並行する国道57号の死傷事故類型割合資料:交通事故統合データベース(H30~R3)区間:国道57号愛野交差点~森山駅前

4.開通に向けた各種取組
(1)「橋名板」御披露目・感謝状贈呈式
3つの橋梁の橋名板を森山西・森山東小学校と森山中学校の6名の生徒・児童の方に書いていただいた。その橋名板の御披露目・感謝状贈呈式を令和5年9月23日(土)に開催した。
当日は晴天に恵まれ、橋名板の御披露目の除幕や橋名板の設置、感謝状の贈呈を行い、当事務所長から「橋名板はこれから先もずっと設置され続ける」という紹介を聞き、生徒・児童の方々は嬉しそうな様子を浮かべ、良い思い出になったのではないかと思われる(写真- 3)。

写真3 「橋名板」御披露目式の様子

(2)開通記念ウオーキング大会
開通前の自動車専用道路を歩くウオーキング大会を、令和5年10月29日(日)に開催した。
当日は、秋晴れの晴天で、絶好のウオーキング日和となり、二度とないチャンスに約400名もの多くの方々に参加していただき、盛大なウオーキング大会となった(写真- 4)。

写真4 ウオーキング大会の様子

(3)開通記念動画作成
森山拡幅のこれまでの事業経緯、住民説明会、工事状況、整備効果および事業への期待の声を編集した約5 分間の開通記念動画を作成し、開通記念式典で放映した。事業への期待の声では、学校・自治会・消防・病院・観光団体・物流企業・交通事業者・JA からなる12 の機関・団体の方々に出演いただき、ビデオレター形式でメッセージボードに記入した期待の声を読んでいただいた(写真- 5)。

写真5 開通記念動画の1コマ(「島原城七万石武将隊」の方々)

5.おわりに
森山東IC~森山西ICの開通により、国道57号の交通が自動車専用道路に転換することによる効果が一部発現している。周辺道路からの更なる交通転換や島原半島全体の活性化のためには、地元自治体や交通管理者等との関係機関の連携や、森山西IC~尾崎IC(仮称)や島原道路の他の事業中区間の整備が不可欠と考える。
引き続き、広域ネットワークの形成、交通混雑の緩和や交通安全性の向上等に向けて、残りの事業中区間の早期開通に向けて取り組んでいきたい。

写真6 今回開通区間の自動車専用道路部(手前は、国道57号現道部)

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