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連続鉄筋コンクリート舗装による舗装の長寿命化対策について
~現道部におけるスリップフォーム工法による舗装修繕~

国土交通省 九州地方整備局 鹿児島国道事務所
阿久根維持出張所 出張所長
原 田 義 博

キーワード:舗装修繕、連続鉄筋コンクリート舗装、スリップフォーム工法

1.はじめに
国道3号隈之城バイパスは、薩摩川内市向田町を起点、薩摩川内市木場茶屋を終点とする延長5.8㎞のバイパスで、平成18年度に4車線(上下各2車線)で全線供用した道路であり、南九州西回り自動車道 薩摩川内都インターチェンジと薩摩川内市街地とのアクセス道路である。
平成31年当時、当該区間の上り線において、延長約1㎞に渡りひび割れが確認された(写真- 1)。
当該区間は既設アスファルト舗装であるが勾配が緩やかで、施工に際し終日片側交通規制が可能な4車線区間であるため、当該区間の舗装の長寿命化とライフサイクルコスト向上を考慮した結果、補修方法は連続鉄筋コンクリート舗装とした(図- 1)。
今回、現道の舗装修繕工事において、連続鉄筋コンクリートによる補修を実施するために行った各種調整事項について整理した。

写真1 舗装の状況

図1 位置図

工事概要
(1)工事名 :国道3号中福良地区舗装修繕工事
(2)発注者 :国土交通省 九州地方整備局 鹿児島国道事務所
(3)施工者 :鹿島道路株式会社
(4)工事場所:鹿児島県薩摩川内市隈之城町
(5)工  期:令和2年12月2日~令和3年7月20日
(6)工事内容:道路土工 1 式,仮設工 1 式
        連続鉄筋コンクリート舗装 4,150m2
        コンクリート舗装 804m2
        アスファルト舗装 268m2

2.現場における課題
(1)施工方法
今回の工事は、国道3号の上り線(2車線)約1km において、既設のアスファルト舗装を撤去し、連続鉄筋コンクリート舗装にて舗装修繕を行うものである。
現場は供用中の道路での工事であり、通行車両に対する交通規制の影響を最小限に留め、早期に交通規制を解放する必要があったことから、施工の効率化を優先し、今回の工事では機械施工(スリップフォーム工法)を採用することとした(写真- 2)。

写真2 スリップフォーム工法による施工状況

施工機械(スリップフォームペーバ)の走行装置は4脚のクローラや4輪のタイヤであり、走行のために施工範囲より幅40~50㎝以上の側方余裕が必要となる。
道路の改築事業とは違い、供用中の道路における舗装修繕工事のため、既設の排水構造物などがあり、施工幅員に制約がある状態での施工となる。
また、車道幅員も一定でないことから、現地状況を詳細に把握し、施工範囲の設定を行う必要があった。
さらに、道路下には横断構造物があり、横断する埋設深さが浅い場合、連続鉄筋コンクリート舗装の補強を行う必要があることから、埋設物の位置・深さを詳細に確認し施工を行う必要があった。
加えて、施工箇所の近くを一般車両が通行しているため、施工中の粉塵等の発生を防ぎ、通行車両の走行に影響を及ぼさないよう施工をする必要があった。

(2)区画線の視認性
コンクリート舗装の場合、コンクリート舗装上面と白色の区画線が同系色のため視認性が低くなり、交通事故等を誘発する可能性が考えられた(写真- 3)。
そのため、コンクリート舗装においても区画線の視認性を高める手法の検討を行う必要があった。

写真3 区画線施工後のイメージ

(3)施工に伴う交通規制
施工は上り線2車線を1車線毎に分けて行うが、1車線のみの交通規制ではスリップフォームペーバの機械幅が足りないため、2車線とも全面通行止めを行い施工する必要があった。
そのため、現在通行している車両については、下り線2車線を利用した上下線片側1車線の対面通行にて交通を確保することにより施工スペースを確保することとしたが、施工区間と立体交差している県道313号荒河川内線と国道3号上り線とをアクセスするランプ部については、通行止めを行う必要があった(図- 2)。

図2 通行規制図

県道313号荒河川内線の事前の交通量調査の結果、薩摩川内市街地部へ向かうオンランプでは1,248 台/12 時間の交通量が確認されており、通行止めによる周辺住民等への影響が大きいと考えられたため、いかに影響を小さくすることができるかを検討する必要があった。

3.課題解決に向けた取り組み
(1)施工内容
はじめに既設アスファルトの撤去を行う必要があり、路面切削機を用いて作業を実施したが、通行車両や歩行者への粉塵による障害を低減させる必要があった。そのため、ブロワ集塵装置搭載型の路面切削機を使用し粉塵を吸引することにより、歩行者や通行車両への粉塵の飛散の低減を図り、さらに機械周辺の粉塵発生も抑制されることから作業員への作業環境の向上も図られた(写真- 4)。

写真4 ブロワ集塵装置搭載型路面切削機

既設アスファルトの撤去後、横断構造物の高さを明確にするため、試掘調査を実施しており、連続鉄筋コンクリート舗装の補強を行う必要があるかの検討を行う予定であった。試掘調査の結果、想定より非常に浅い箇所に横断構造物が設置されており、連続鉄筋コンクリートの舗装厚を確保できない箇所が2箇所確認された。舗装設計便覧によると「構造物上のコンクリート版の厚さを確保できない場合は、横断構造物の前後を含めてアスファルト舗装とする」旨の記載があることから、当該箇所についてはアスファルト舗装とし、施工範囲から除外することとした。除外範囲の設定については、連続鉄筋コンクリート舗装において横断構造物の土被りが薄い場合、横断構造物の前後7mを鉄筋による補強を行うため、その考え方を踏襲し、横断構造物の前後7m を施工範囲から除外することとした。
スリップフォームペーバを使用した連続鉄筋コンクリート舗装の施工において、スリップフォームペーバの側方に50cm程度の走行幅が必要となる。今回の施工現場は、車道幅員や側溝の敷設箇所が一定ではない状態であり、排水桝の設置箇所や局部的に車道幅員が狭い箇所等においては、スリップフォームペーバの走行装置が排水構造物の上を走行せざるを得ない状況であった。
そのため、排水構造物を損傷させる可能性も考えられたことから、コンクリート打設時において排水構造物を養生し、スリップフォームペーバが載った場合でも排水構造物の損傷を防ぐ対策を行った(写真- 5)。

写真5 排水構造物の養生

コンクリートの養生時において、養生マットの使用を予定していたが、施工現場は地形的に風が強く、さらに下り線では一般車両が通行していることから、養生マットでの施工から被膜形成型養生剤での施工に変更した。このことにより、養生マットが風により飛散し通行車両へ影響を及ぼすことも無くなるなど、徹底した安全対策を実施した(写真- 6)。

写真6 被膜形成型養生剤の施工

(2)区画線の視認性向上
コンクリート舗装は供用後、時間の経過と共に舗装面が暗色化し、白色の区間線であっても視認性に問題は無くなるが、打設後数年間は白色の区画線との明度差が小さく、視認性が低くなることが予想された。
実際にコンクリート打設後、舗装面の色彩について確認したところマンセル値がN8.0程度であり、白色の区間線のマンセル値がN9.5程度であるため、明度差が1.5程度になることが判明した。
鹿児島県福祉まちづくり条例施設整備マニュアルによると「明度差を3.0以上確保した色の組合せが識別しやすい」旨の記載があり、対策を行わない場合、視認性が低い状況となり交通事故等を誘発しかねない状況となった。
そのため、薩摩川内警察署と協議を行った結果、白色の区画線をアスファルトと同系色(灰色:マンセル値N4.0)で7㎜の縁取りを行い、舗装面・縁取り・区画線3色の明度差3.0以上確保することにより視認性を高めることとした(写真- 7、8)。

写真7 区画線の縁取り(近景)

写真8 区画線の縁取り(全景)

(3)通行規制
施工に際し、上り線2車線及び県道とのランプ部を通行止めにする必要があり、交通規制による影響を少なくするため、事前に道路利用者への周知を図ることとした。
まず、県道沿いの自治会へ工事概要の説明を行い、住民への周知方法について相談したところ、「市報による広報が最も効果的である」旨の助言があったため、薩摩川内市に協力を頂き、市報に交通規制の情報を掲載し周知を図った。
ただし、市報による周知の場合、対象が自治会に加入している家庭のみに限定され、自治会に加入していない家庭へ周知が行き届かないことが考えられたため、ランプ部を使用していると想定される周辺の家屋等に対し、工事チラシの配布を行った。その際、ランプ部が使えない場合の迂回路を示すとともに、通行規制の前から現地に迂回案内の看板を設置することにより、認知度の向上を図った。
また、ランプ部を利用した市内循環バスがあることが判明し、バスルートの変更も行う必要が生じた。関係機関と協議を行ったところ「既存のバス停は全て通過すること。迂回が生じる場合の運行遅れは5分以内とすること。」との条件が示された。
そのため、現場周辺の迂回路となり得る道路において幅員の確認、及び交通ピーク時における実走での走行時間の確認等を実施し、循環バスの迂回ルートの検討を行い、関係機関と協議を重ねることにより、循環バスの運行への影響を最小限に留めるよう努めた。

3.現地にて発生した課題
(1)交通規制解除による逆送
施工箇所は4車線(上下各2車線)の道路であり、中央分離帯にて上下線を分離しており、今回、下り線を利用した上下線片側1車線の対面通行にて交通を確保することとした。
施工区間の端部に信号交差点があり、中央分離帯のない交差点部を利用し、走行車線の切り替えを行った。
交通規制開始時においては、下り線を利用した片側1車線の対面通行へスムーズに移行することができた。しかし、交通規制解除時においては、上り線を走行している車両が交差点部から下り車線に進入し、逆走する事象が発生した(図- 3)。
本件を受け直ちに薩摩川内警察署と協議し、注意喚起の電光掲示板の設置や交通誘導員の配置、また、薩摩川内警察署においては、当該箇所のパトロール強化を図った。薩摩川内警察署にて逆走した車両の運転手に理由を尋ねたところ「長期間の交通規制により、交差点から先は下り車線を走行することが当たり前となっていた。」旨の発言があり、いわゆる「慣れ」による影響が大きいことが判明した。
このことから、中央分離帯等で分離された上下2車線の道路において、長期間による上下線いづれかの2車線を利用して交通を確保する場合、交差点部を利用した車線の切り替えを行うのではなく、中央分離帯を一部撤去し車線を切り替え、交通規制解除後は中央分離帯を復旧するなど、物理的に反対車線へ行けないようにする必要があることが教訓となった(図- 4)。

4.おわりに
国・県・市町村等の道路管理者においては、舗装の劣化による沿道住民からの騒音・振動による相談、道路利用者からの走行性に関する相談が多いことが課題であると思われる。このため、限られた予算の中、連続鉄筋コンクリートによる舗装修繕はライフサイクルコストを考慮すると非常に有効な手段だと考える。
また、舗装の長寿命化により舗装修繕に伴う交通規制の頻度は少なくなり、道路利用者への影響の軽減にも繋がる。
ただし、アスファルトによる舗装修繕とは違い、車道を即日復旧することができず、さらに、スリップフォームペーバによる機械施工を行う場合は、施工機械が大きいことから2車線分の通行規制が必要となり、施工可能な現場が限定されてしまう。
また、現道には民地への乗り入れ・他の道路との取り付けなど様々な事象が存在し、通行車両以外に沿線への影響も与えることになる。
そのため、それらの現場条件を網羅することが非常に重要であり、各事象に対する解決策を考え地元住民、道路利用者へご理解・ご協力を得たうえで連続鉄筋コンクリートによる舗装修繕を実施する必要があると感じた。
今後も舗装の長寿命化を念頭に現場条件を把握した上で、適切な道路の維持管理に努めていきたい。

図3 逆走発生状況

図4 車線切り替えのイメージ

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