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歩行者利便増進道路(ほこみち)制度について
~歩きたくなるみち、居たくなるみちへ~

国土交通省 九州地方整備局
道路部 道路計画第二課長
伊 藤 浩 和

キーワード:賑わいのある道路空間の構築、歩行者利便増進道路、ほこみち

1.はじめに
「道路空間を街の活性化に活用したい」「歩道にカフェやベンチを置いてゆっくり滞在できる空間にしたい」など、道路への新しいニーズが高まっている。
このようなニーズに対応した道路空間の構築を行いやすくするため、令和2年5月20日に成立した改正道路法において、新たに「歩行者利便増進道路(以下、ほこみち)」制度が創設(令和2年11月25日)された。
本稿では、ほこみちの制度及び九州における取り組みについて紹介する。

2.制度の概要
(1)ほこみち指定の要件
道路管理者は、ほこみちを指定する場合、4 つの指定要件(表- 1)を満たすとともに、指定前に市町村長への協議、公安委員会への意見聴取を行う必要がある

表 1 ほこみちの指定要件

(2)ほこみち指定の留意点
道路管理者は、ほこみち指定の効果が高まるように、以下の点に留意する必要がある。
・市町村等と連携して公共交通の利用促進について検討することが望まれる。
・ほこみちの改築等を実施する際には、高齢者や障害者等にとっても安全で使いやすい道路構造にする必要がある。
・自転車が車道を通行するための道路空間について検討する必要がある。

(3)歩行者の利便増進のための仕組みの導入
ほこみちに指定された道路には、新しい道路構造基準が適用されることになり、この基準を満たした道路には、道路管理者が歩道等の中に、“ 利便増進誘導区域(以下、特例区域)” を定めることが可能となる(図- 1)。

図1 新たな道路構造のイメージ

特例区域内(図- 2)では、道路の占用許可基準が緩和されるほか、公募占用による場合は、通常5年の占用期間が最長20年まで可能となる。また、占用者が道路の維持管理に協力することを条件に、占用料が10分の1 に減額される。

図2 ほこみちで指定された特例区域のイメージ

(4)ほこみちの道路構造基準について
ほこみちの構造については、すべての人が安全で使いやすく、通行部分と滞留部分が確保され、歩行者の利便が増進されるような道路構造とする必要がある(図- 3、4)。

図3 新たな道路構造のイメージ<横断面>

図4 新たな道路構造のイメージ<平面図>

a. 歩行者の通行の用に供する空間を確保した上で、歩行者の滞留の用に供する空間を確保した道路構造
歩行者の滞留の用に供する空間に必要な幅員については、歩行者の通行の用に供する空間の幅員を確保した上で定める必要がある。歩行者の通行の用に供する空間に必要な幅員は、道路構造令に規定する幅員の値以上とする。
b. 歩行者利便増進施設等を設置する場所の確保
歩行者の滞留の用に供する部分において、利便の増進を図るために必要な施設等(歩行者利便増進施設等)の適切かつ計画的な設置を誘導する必要があるときは、当該部分に歩行者利便増進施設等を設置する場所を確保するものとする。
c. 歩行者の安全かつ円滑な通行のための道路構造
歩道等について、高齢者や障害者にとっても安全で使いやすいバリアフリーに対応した道路構造とするため、「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令」に定められている歩道等の構造基準に適合する構造とする必要がある。

(5)歩行者利便増進施設等の道路占用の取り扱い
歩行者利便増進施設等は、設けられる施設の種類、設置の要件を規定している(表- 2、3)。

表 2 歩行者利便増進施設等の施設

表 3 歩行者利便増進施設等の設置要件

(6)道路占用に関するコロナ特例の概要
従来の道路占用制度では、オープンカフェ等を設置する際には、無余地性の基準が適用され、道路敷地外での設置が可能と判断された場合は、占用許可が与えられないなどの課題があった。そのような中、国土交通省は、令和2年6月5日から新型コロナ感染症の影響を受ける飲食店等を支援するための緊急措置として、沿道飲食店等の路上利用の占用許可基準を緩和する特例措置(コロナ占用特例)を導入している(期限:令和4年9月30日)。
ほこみち制度は特例区域にコロナ占用特例と同様の許可基準を適用できるようにしたもので(表- 4)、特例後の路上利用の取組継続の希望がある場合には、コロナ占用特例からほこみち制度への円滑な移行を推進することとしている。

表 4 コロナ占用特例とほこみち制度との比較

3.九州におけるほこみちの取り組み
令和3年12月20日、九州で初めて 箇所がほこみちに指定された。2箇所ともコロナ占用特例からほこみち制度に移行したものであるが、その概要について紹介する。
(1)熊本県熊本市
①ほこみち指定道路
熊本市が管理する市道の2 区間において、ほこみちを指定(図- 5)。
 ・市道 手取本町新市街第1 号線
     新市街下通2 丁目第1 号線

図5 ほこみち指定箇所<熊本市>

②ほこみち指定までの流れ
R2.8.16  コロナ占用特例による占用開始
R3.5.17  熊本県公安委員会への意見聴取
R3.12.20  ほこみち指定
R4.3.31  利便増進誘導区域の指定(1 区間)
R4.4.1   ほこみちの運用開始(1 区間)

③特例区域指定に係る考え方
緊急車両の通行可能性を考慮し、5.0m以上の歩行空間を確保し、特例区域を指定(図- 6)。写真- 1 はイベント開催時の状況。

図6 区域指定のイメージ<横断面>

写真1 イベント時の状況<コロナ占用特例時>

(2)福岡県久留米市
①ほこみち指定道路
久留米市が管理する市道の2 区間において、ほこみちを指定(図- 7)。
 ・市道 六ツ門町D106 号線
     東町D115 号線

図7 ほこみち指定箇所<久留米市>

②ほこみち指定までの流れ
R2.7.25  コロナ占用特例による占用開始
R3.11.4  福岡県公安員会へ意見聴取
R3.12.20  ほこみち及び利便増進誘導区域指定
R3.12.23  占用許可及び道路使用許可
③特例区域指定に係る考え方
4.0m 以上の歩行空間を確保し、特例区域を指定(図- 8)。写真- 2 は沿道飲食店の路上利用の状況。

図8 区域指定のイメージ<横断面>

写真2 沿道飲食店の路上利用の状況

(3)コロナ占用特例からほこみちへの移行
熊本市、久留米市ともに、ほこみち指定の申請の際、手戻りが生じないように利活用方法等の情報共有、各種調整を申請者と道路管理者、交通管理者間で丁寧に行われたことにより円滑な指定がなされた。また、久留米市では、ほこみちの占用許可者を判別するため、店先に許可証などを提示することにより許可店舗であることを明示する取り組みも行われている。

(4)ほこみち指定による効果
熊本市、久留米市ともに、今回のほこみちの指定をきっかけにして、テラス席やベンチ等を設置したゆっくりと滞在できる道路空間の構築や地元商店街による定期的なイベント開催など、継続的に街の賑わいづくりに取り組まれており、民間事業者に道路を上手く活用していくという認識が広まりつつある。

4.おわりに
ほこみちは、「地域を豊かにする歩行者中心の道路空間の構築」を目指すものであり、歩行者の安全かつ円滑な通行及び利便の増進を図り、快適な生活環境の確保と地域の活力の創造に資する道路として指定するものである。
国土交通省は、ほこみちの推進や上手な使い方の検討・展開のため、ほこみち制度創設直後から、ほこみちプロジェクト事務局を立ち上げ、HPの開設(図- 9)、イベント実施や相談窓口を設置し全面的なサポートを行っている。
現在、九州では2箇所でほこみちが指定されているが、今後、指定箇所が拡大していくことで、ほこみちで、道路からまちが変わっていくことが期待される。

図9 道路局―ほこみち―トップページ画面

【参考文献】
1)国土交通省道路局:歩行者利便増進道路-ほこみち-
( https://www.mlit.go.jp/road/hokomichi/index.html ),2022年6月13日最終閲覧

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