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浅層混合による路床の安定処理工法

建設省九州技術事務所
 工務課計画係長
井 上 重 臣

1 まえがき
安定材を利用した路床の安定処理工法は,低品位の現地土を有効に活用でき,しかも他の工法に比べて経済的なことが多いので,わが国では広く実施されている。また,建設副産物の低減や有効利用すべきという現在の社会的要請からも,この工法の必要性は今後さらに増大していくものと思われる。
しかし,従来より行われてきた0.5m以上の層厚を対象とした安定処理工法の多くは,改良層を二層仕上げで施工するため,ダンプトラック等による排土,土砂の仮置き等の作業が必要となり,作業工程が複雑で安全性の低下,費用の増加および建設機械稼働増加による環境問題等があった。
また,軟弱な土質や玉石等が混入する場合などは,従来の混合機械では混合に際して多くの困難に直面していた。そこで,混合機械は広範囲の土質に対応でき,かつ,深さ1.5mまで一度に混合できる“ミックスロータ”を使用して1mの路床を一層で安定処理する工法を採用した。
本報告は,福岡国道工事事務所管内4箇所で実施した施工での,混合機械の混合性能および改良層の品質を検証したので,主にその取りまとめ結果について述べるものである。

2 ミックスロータとは
混合機械であるミックスロータは,バックホウを母体として油圧系統に改造を加え,アタッチメントとして混合機を取り付けたものである。
混合機の本体は,ツインヘッダー(製造元 三井三池製作所で本来は岩盤切削を行う目的で作られたもの)を使用し,タイン(爪)は土質に応じた特殊なものとなっている。機械は使用する母体(バックホウ)により2種類用意されている。

3 施工場所
今回の施工場所は,図ー1~4に示す,一般国道3号粕屋郡古賀町で1箇所,一般国道3号福岡市博多区で3箇所の計4箇所で実施した。古賀町流地区は,施工延長約300m,施工面積A=855m2であった。施工は付加車線の増設のためであり,平均施工幅2.9m程度で現道に近接しての工事であった。一方,博多区東那珂~西月隈の3地区は都市高速道路に伴う現道復旧工事で,施工延長約1,520m,施工面積A=5,844m2であり平均施工幅は3.8M程度であった。
土質状況は,古賀町流地区は粘性土で良く締まっており,他の東那珂~西月隈地区はレキ混じり粘性土で,こちらも良く締まっていた。

4 検証の目標
“ミックスロータ”を使用した1mの一層混合による路床の安定処理工法に当たっては,下記事項の達成を目標とした。
(1)ミックスロータの混合の均一性
路床の安定処理を実施する場合,安定材と土の均一な混合が重要となる。即ち,均一な混合をする事により強度のバラツキは小さくなり,また,より少ない安定材にて目標とする強度を確保する事ができる。これらの事を踏まえて混合の均一性を目標として次の事項を検証した。
 ① 混合のバラツキが小さいこと。
(2)一層混合による安定層の強度の確保
安定処理層強度発現のメカニズムは,土と安定材の化学反応を利用した固化作用と転圧機械を用いて外部より強制的に強度発現を促す事との組み合わせによるものである。そこで,深さ方向の強度の低下を考慮したうえで,道路としての機能を保つために必要な路床強度を目標とする事とした。
① 深さ方向の強度の低下を考慮して設計CBR=12%を確保する。
② 目標とする強度はCBR=13.6%を確保する。
(3)施工性の向上
施工の効率を高めることは,作業日数の短縮につながり,それは省人化および経済性の向上にかかわってくる。そこで施工性として作業サイクルの確認を行った。

5 検証の方法
(1)“ミックスロータ”による混合の均一性
混合の均一性の評価は,①目視による確認②施工時に表面より深さ方向に3点,試料を採取し,室内CBR試験を実施しその結果より検証(表一1)の方法によった。室内CBR試験を行う混合土の採取位置は,図ー5の断面図のとおりとした。

(2)安定処理層の強度の確保
安定処理した混合材の品質は①室内CBR試験②平板載荷試験によった(表ー2)。

ここで,平板載荷試験と室内CBR試験との関係を次に述べる。
平板載荷試験と室内CBR試験との関係は式ー1によって算出し,地点のCBRは式ー2によって算出する。
*地盤支持力係数K30とCBRとの関連式は植下氏によって第5回日本道路会議で発表された次式によった。
 1/4(CBR+1)=K30/2.86………式ー1
改良層の強度の評価は,路床表面,および,-0.5m位置にて実施した平板載荷試験結果より,図ー6による方法で求め,式ー2により求めた地点のCBRが設計CBRを上回るものとする。

(3)施工性の向上
従来,一般的に使用されている混合機械,ならびに施工方法と今回の工法とについて,作業状況について検討する。

6 配合試験
今回,改良の対象となる土質は含水比35%程度の粘性土およびレキ混じり粘性土であった。安定材は高炉セメントB種を使用し,添加量は各箇所の配合試験結果より83~85kg/m2であった。

7 施 工
安定材の散布は,1t詰めのフレコンパックをクローラクレーンにて散布し,ミックスロータで混合後,ブルドーザで敷き均し,モータグレーダーで整形後,タイヤローラにて転圧した。転圧機種,転圧回数については従前の試験施工に基づき決定した。施工状況を以下に示す。

8 結果
(1)ミックスロータの混合の均一性について
機械の混合性能は目視による観察では,土塊の破砕状況は良く,また全層にわたってセメントむらも少なく混合状態は良好であった。深さ方向の室内CBR試験結果もバラツキは認められない(図ー7)。併せて,測定値の全てが目標値をクリアしていることから混合状態は均一であると判断した。

(2)一層混合による安定処理層の強度の確保について
改良層の強度の確保は深さ方向に測定した支持力係数より求めたCBRは,表面に比ベ-0.5mの位置では平均43%低下している。これは転圧効果の影響と考えられる(図ー8)。しかし,換算CBRによって求めた地点のCBRは設計CBRの12%をクリアしている(図ー9)。また,混合土のCBR値は目標CBRの13.6%をクリアしている(図ー10)。よって,改良層の強度は確保されたと判断した。

(3)施工性の向上について
今回工法と,従来工法との比較を図ー11.12に示す。従来工法の場合は上部の掘削仮置きの作業が生じまた,下部施工から上部施工開始までに養生期間としてセメント使用の場合は7日間,石灰使用の場合は10日間の養生のための待機時間が必要である。従って,今回工法は従来工法と比較して作業工程が縮少され,所要日数も短縮される。参考までに,1,000m2当りの所要日数を算定してみると従来工法で,18.6日~21.6日,新工法で11.0日となり7.6日~10.6日の短縮となる。このことより,この工法は施工性が良く省人化および工期の短縮に有効な工法といえる。

9 まとめ
今回の各試験結果より,“ミックスロータ”の混合性能に問題はないものと思われる。また,改良層の品質確保も十分できたと判断される。施工性についても従来工法より優れている。しかし,この工法の施工事例はまだ少なく今後施工事例を多くし更に究明していく必要がある。最後に本調査および取りまとめに当り,ご協力頂いた松尾舗道(株)に感謝するものである。

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