吉野ヶ里歴史公園におけるコロナ禍でのイベント開催について
佐賀県 県土整備部
まちづくり課
公園担当 係長
まちづくり課
公園担当 係長
小 林 雄 一
キーワード:コロナ対策、イベント、都市公園
1.はじめに
令和2年度は、生活の至るところで新型コロナウイルス感染症の影響を受け、行動の制約が大きい年であった。当県が管理する都市公園においても、例年のような運営が出来ず、状況に応じた対応を求められた。
そのような中において、地域の元気を取り戻す契機となるよう行った公園イベントについて紹介する。
2.吉野ヶ里歴史公園でのイベント
(1)公園の概要
吉野ヶ里歴史公園は、計画面積117.3ha の都市計画決定された公園で、佐賀県神埼市及び神埼郡吉野ヶ里町に位置し、平成13年(2001年)4月21日の開園から今年で20 周年を迎えた。
当公園は、工業団地開発に伴う文化財調査が行われた結果、弥生時代最大級の遺跡であることが判明し、全国的に有名になった吉野ヶ里遺跡の保存及び活用を図る国営公園と、国営公園の周囲にあり、遺跡の環境を保全するとともに、レクリエーション空間といった公園機能の充実を図る県立公園が一体となって運営されている都市公園である。
これまで約12 百万人を超える入園があり、地域の主要な観光資源となっている。
(2)新型コロナウイルス感染症の影響
令和元年度に確認された新型コロナウイルス感染症によって、当公園においても年度末ごろより、屋内施設の閉鎖やイベントの中止という形で影響が表れ、それまで過去最高を記録する勢いで増えていた入園者も急激に減少した(図- 2)。
令和2年4月7日の隣県の福岡県を含む1 都7 県への緊急事態宣言を受け、遊具の利用中止など更なる対策の強化を検討していたところ、16日に全国を対象に緊急事態宣言が行われた。
これを受け、有料公園である当公園は18日から臨時休園とし、感染拡大防止に取り組み、その後の感染状況を勘案し5月11日から開園した。
このゴールデンウイークを含む春の行楽シーズンを休園としたことや、いわゆる3 密を避け、不要不急の外出自粛が要請されたことから、入園者数が大きく落ち込むこととなった。また、周辺の観光施設も同様であった。
(3)イベント開催の背景
再開後は、マスク着用や手指消毒といった基本的な感染防止対策を実施しながら運営を行ったが、入園者の低迷が続く状況であった。
このため、新型コロナウイルス感染症の収束後に向け、新型コロナウイルス感染症によって停滞した人の流れを取り戻し、これまで利用されてきた県内外の子育て世帯を含む来園者によって、佐賀県内の飲食業、農林水産業等を元気にする機会を創出するため、当公園でイベントを開催することとした。
(4)イベント概要
例年であれば、秋の行楽シーズンは県内各地でイベント等が行われる。特に、11月初旬は熱気球の祭典であるインターナショナルバルーンフェスタや曳山が街中を巡行する唐津くんちという集客力の大きいイベントが行われるが、早々に中止が決定されていた。
このため、例年では行わない10月31日(土)から11月3日(火・祝)に、県内の飲食業や農林水産業などを、来園者と共に応援し、楽しむイベントとなるよう「SAGA エールフェス」と名付けたイベントを開催した(図- 3、写真- 1)。
様々な年代の多くの来園者に楽しんでいただけるよう、飲食や物販のマルシェ、地元食材によるバーベキュー、子ども達に人気のキャラクターショー、活動の場が少なくなった地元アーティストを含む音楽ステージ、オープンエアで楽しむヨガ体験、新しいスポーツとして注目されているボルダリングやスラックライン、BMX の体験やデモンストレーション、白いキャンバスに自由にのびのびと絵を描くキッズペインティング、親子で楽しむ段ボール工作、プロバスケットボール選手との交流など色々なプログラムを組み込んだ(写真- 2 から写真- 7)。
(5)感染防止対策
イベント開催に向け準備を進めていても、新型コロナウイルス感染症の状況は刻々と変化し、なかなか収束が見えない状況であったことから、開催に当たり、感染拡大防止対策にしっかりと取り組む必要があった。このため、発熱等の体調不良の場合は入園を断り、入園時にマスク着用や手指消毒の確実な実施を行い、一人一人の検温をサーマルカメラにより行い、発熱の症状が無いことを確認し、その証として、リストバンドの着用をお願いした(写真- 8)。
リストバンドにはナンバリングを行い、入園者数のカウントを行うとともに、2 次元コードを印刷し係員との接触を行わなくてもプログラムの確認が行えるよう配慮した(写真- 9)。
飲食スペースでは、間隔を離した座席を設け、密集を回避した(写真- 10)。
ステージ前では密集を避けるため、ステージと観覧スペースを十分に離すとともに、観覧スペースとしては芝生の上にフラフープによる目印を4mの間隔で市松状に設置し、家族や友人同士などのグループ単位でゆったりくつろげるようにし、指定場所以外での観覧が行われず、誰もが快適に利用されるようアナウンスや巡回による注意喚起を行った(写真- 11、12)。
(6)取組の成果
感染防止対策を取りながら、4日間連続でイベントを開催した。平日となる11月2日(月)は雨により入園者が少なかったものの、他の3日間は天気に恵まれた。
感染拡大防止策を取って行う初めての大規模イベントであったが、入園者の協力も得られ、延べ2 万5 千人を超える利用があった。
これまで利用をいただいていた子育て世帯だけでなく、通常では利用の少ない若年者のみのグループやカップルの利用が多数見られた(写真- 13)。
また、ステージに出演いただいたアーティストからも、吉野ヶ里歴史公園の広大なロケーションを気に入ってもらい、観客の前でパフォーマンスすることの喜びを改めて感じているとのお言葉をいただいた。
イベント後にSNS を確認したところ、入園者や出演者の多くの喜びの声を見ることができた。
3.終わりに
今回のコロナ禍でのイベント開催は、主催者として感染防止対策という業務は増えたが、安心して楽しめたとの利用者から声だけでなく、マルシェの出店者からも出店できたことに対して感謝され、とても充実したものとなった。
コロナ禍において、感染リスクが少ない新しいスタイルとして当県が推進する「OPEN - AIR 佐賀」に取り組み、屋外である強みを生かし、多くの方に喜んでいただける公園を目指し、今後もしっかり取り組んでいきたい。