九州地方整備局における総合評価落札方式の運用実績と今後の方針
国土交通省 九州地方整備局 企画部 技術管理課 技術審査係長
岩 熊 真 一
岩 熊 真 一
1 はじめに
公共工事の品質確保を図るため,発注者が主体的に責任を果たすことにより,経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮して価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされること(総合評価方式の導入)が重要と位置づけ,「価格競争」から「価格と品質で総合的に優れた調達」への転換に向け,これまでは適用を行っていなかった中小規模の工事(2億円未満の工事)においても,価格と技術力を総合的に評価し落札者を決定する総合評価落札方式を積極的に推進するため,簡易型総合評価落札方式を平成17年度に81件実施した。
簡易型総合評価落札方式では,簡易な施工計画や企業実績や配置予定技術者の能力を評価し加算点を与えるものである。
また,総合評価落札方式の適用にあたっては,「入札参加業者の技術提案等に対し,中立かつ公正な審査・評価の確保を図る」ために第3者機関として『九州地方整備局総合評価技術委員会』を平成17年12月20日に設立し,実施方針や複数工事に共通する事項等について,意見を聴取している。その後個別工事の評価基準項目や配点等の評価結果について月2回程度の『小委員会』を開催し,工事全件について意見を聴取しているところである。
以下に,平成17年度に実施した簡易型総合評価の実施結果を報告するものである。
2 簡易型総合評価の評価項目及び内容
表ー1の評価項目及び評価基準により提出された技術資料を評価し,加算点を評価している。
3 簡易型総合評価の適用件数
平成17年度の簡易型総合評価の件数は,81件の適用工事を行い内訳は表ー2のとおりである。
4 評価の傾向分析
各評価項目の加算点評価結果は表ー3のとおりである。(H18.3.20入札分の66件を対象に分析)なお,表ー3の平均値とは,A:100%,B:50%,ー:0%での加算点獲得率(%)の平均値である。
①簡易な施工計画について
・『品質管理の評価』は,相対的に評価が厳しい。
(加算点獲得率平均値36.9%)
・『施工上配慮すべき事項』の評価は,相対的に評価が高い。
(加算点獲得率平均値59.5%)
②配置予定技術者の評価について
・優秀技術者表彰,CPDは,評価されるケースが少ない。
・配置予定技術者の資格(経験年数5年以上はA評価)は約8割以上がA評価である。
・技術者の専門技術力(申請された同種工事への関与の確認)は,約9割がA評価である。
・当該工事の理解度・取り組み姿勢や技術者のコミュニケーション能力は,評価結果が分散しており,評価に差がついていることが伺える。
③企業評価について
表彰(安全施工,優良施工)は,評価されるケースが比較的少ない。
安全管理の状況は9割以上が,企業の施工実績は約8割が,A評価である。
・工事成績の評価は,評価結果が分散しており,評価に差がついていることが伺える。
5 今後の課題
「価格競争」から「価格と品質で総合的に優れた調達」への転換に向け,なお一層の適用拡大を行うこととしており,平成18年度については,前項事件数の50%以上について,総合評価落札方式を適用し,積極的に取り組んでいきます。
また,総合評価の効用を発揮するため,加算点満点を高く設定する(加算点の設定イメージは下図のとおり)と共に,技術力の適切な評価を基本としつつ評価結果に極力,差がつくように相対評価に取り組んでいるところである。