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二軸強制練りミキサのRCD用コンクリートヘの適用実績について

建設省竜門ダム工事事務所
機械課長
木 村 直 紀

1 はじめに
竜門ダムは,熊本県北部を流れる一級河川菊池川の支川迫間川に建設中の多目的ダムである。
ダム形式は,重力式コンクリートダムとロックフィルダムが接合壁を介して接する複合ダムである。竜門ダムの諸元を表ー1に,ダム縦断図を図ー1に示す。
ダムの施工は,重力式コンクリートダム部を平成4年11月に打設完了し,現在はロックフィルダム部の盛り立てを行っており,平成6年度には盛り立てを完了する予定である。
重力式コンクリートダム部の打設工法は,連続かつ大量施工を可能としたコンクリートダムの合理化施工法として近年積極的に取り入れられているRCD工法を九州で初めて採用している。
RCD工法とはコンクリートをダンプトラックで運搬し,ブルドーザで敷き均した後振動ローラにより締め固める施工法である。このためRCD用コンクリートは単位水量が少なく,また,水和熱低減のため単位セメント量も少ない配合でパサパサしたものである。
竜門ダムでは,全国で初めて本格的な最大骨材粒径(Gmax)150mmのRCD用コンクリートの練り混ぜに二軸強制練りミキサを用いたもので,884千m3のコンクリート打設を完了したが良好な結果が得られたので,その適用性について報告するものである。

2 二軸強制練りミキサの選定
2.1ミキサの選定
従来,ダムコンクリートの練り混ぜには主に傾胴式ミキサが使用されてきた。しかし,傾胴式ミキサでRCDコンクリートを練り混ぜた場合,少ないセメント量と単位水量により練り混ぜ時間の長大,均質なコンクリートが得にくい,排出時大砂利が分離しやすい等の問題が指摘されていた。
一方,二軸強制練りミキサは,ケーシング内に数枚の攪拌翼を持つ二本の回転軸を水平に配置したもので,回転軸はモータにより回転させコンクリートを練り混ぜるものである。二軸強制練りミキサは,練り混ぜ時間の短縮,均質なコンクリートが得られる,大砂利の分離が少ないなどその構造的な特徴から傾胴式ミキサの問題点を解消することが可能である。
しかし,二軸強制練りミキサは使用電力量が大きいことや攪拌翼およびライナ(内張板)の磨耗が早く,攪拌部の耐磨耗性が小さいことが欠点とされてきた。竜門ダムではこれらの欠点を改良した油圧駆動の可変速式二軸強制練りミキサを採用した。竜門ダムで使用した二軸強制練りミキサの構造図を図ー2に,また,外観を写真ー1に示す。
このミキサの特徴は下記のとおりである。
① モルタルを先練りすることにより,モルタルが潤滑剤の役目を果たし,粗骨材投入後の攪拌部の磨耗が小さい。
② 回転翼が高速回転するため均質で,高品質なコンクリートが得られる。
③ 回転軸の駆動を油圧モータとすることにより骨材噛み込み時に回転数を自動的に低下させることが可能となり,衝撃に対する緩衝作用によって駆動系を保護できる。
④ 油圧ポンプの特性により,負荷に応じた回転トルクで練り混ぜられるので,これまでの二軸強制練りミキサである電動機直結の一定回転のものに比べ,電動機容量が小さくなる。
⑤ 排出時,Gmax150mmの大骨材はゲート開口部とブレードとの間に噛み込む場合があるが,油圧回路の自動切り替えによりミキサは逆転し,噛み込みを解除する機能を有する。

2.2ミキサの諸元
竜門ダムで使用したミキサは,コンクリートボリューム844千m3,計画月当たり最大打設量57千m3のリフトスケジュールから,コンクリート打設時の諸作業による作業待ちおよび修理時の打設休止などを考慮して3m3型を2台設置した。
ミキサの諸元は下記のとおりである。
 型  式:油圧可変速二軸制練り式
 混練容量:3m3/バッチ
 回転数 :10~35rpm
 動  力:110Kw(55Kw×2)
 台  数:2台
ミキサの練り混ぜ条件決定のため練り混ぜ時間,材料投入順序,攪拌翼の回転速度を変え試験練りを行った。材料投入順序および回転翼速度を一定とした場合に練り混ぜ時間を50,70,85,100秒と変化させVC値および圧縮強度を調べた。それぞれの結果を図ー3および図ー4に示す。両図からVC値および圧縮強度について練り混ぜ時間による差はほとんどみられなかった。したがって,標準練り混ぜ時間を70秒とした。また,試験結果より多少練り混ぜ時間にズレが生じてもコンクリート品質の変化はないと思われる。

練り混ぜ時間を70秒として,ミキサ2台の組合せによる練り混ぜサイクルタイムを図ー5に示す。図よりミキサ1台のサイクルタイムは100秒である。
この場合の能力Qは
 Q=3.0m3×2台×3,600/100=216m3/hr
となる。
一方,コンクリートボリューム100万m3クラスのダムにおける従来型の傾胴式ミキサは,112s(3m3)ミキサ4台が使用されており,動力は37Kw×4,サイクルタイムは190秒(投入20秒,練り混ぜ150秒,排出20秒)で練り混ぜられているのが一般的である。
この場合の能力Qは
 Q=3.0m3×4台×3,600/190=227m3/hr
である。
したがって,二軸強制練りミキサ1台当たりについてみると,同容量の傾胴式ミキサに比べほぼ2倍の能力を有しているといえる。

3 二軸強制練りミキサの実績
3.1コンクリートの品質
① 練り混ぜの均一性について
試験練り時における骨材の洗い分析後粒度を図ー6に,また,配合分析結果を表ー2に示す。これらより粗骨材の150mm~80mmの範囲および細骨材の5~1.2mmの範囲において若干ではあるが細粒化がみられる。これは竜門ダムで使用した骨材が後述のように,硬度が高く,また,すり減り率が40%近くもある,硬くて脆い花崗岩の偏平岩であることが影響していると思われる。しかし,粗骨材の細粒化は21kg/m3で,これによる細骨材の増加は1%弱となる。したがって,練り混ぜによる影響は小さいと考えられる。

図ー7に竜門ダムにおける打設中の骨材洗い分析後粒度を示す。粒度分布は,全打設期間をとおして試験練り時とほぼ同様な傾向を示している。また,図ー8に傾胴式ミキサによりRCDコンクリートを練り混ぜたTダムにおける打設中の骨材洗い分析後粒度を示す。これらの図からわかるように,Tダムに比べてミキサ投入前後の粒度分布の変化が少なく,二軸強制練りミキサは傾胴式ミキサに比べて均質なコンクリートが得られることを実証できた。

② 圧縮強度について
竜門ダムにおいては,EL239.00以下の内部コンクリートはB-1配合(C+F=130kg)で振動ローラBW200を用いリフト厚0.75mで施工,EL239.00以上の内部コンクリートはB-1’配合(C+F=120kg)とし,さらに振動ローラSD450を用いてわが国でも初の本格的なリフト厚1.0mで施工した。
竜門ダムにおけるRCDコンクリートの配合を,傾胴式ミキサを使用した他ダムの配合と併せて表ー3に示す。また,それぞれの月別圧縮強度の実績を表ー4に,月別圧縮強度比較グラフを図ー9に示す。
コンクリート材質が異なるので圧縮強度レベルでの単純な比較は適当でないが,竜門ダムでは,傾胴式ミキサを使用した他ダムに比べて圧縮強度が高く,変動係数も小さい安定した品質のコンクリートを製造できたと考えられる。

3.2ミキサ交換部品の耐久度
Gmax150mmのRCDコンクリートおよび有スランプコンクリートを合計844千m3練り混ぜたが,ミキサ内部のブレード,ライナとの交換部品の耐久度の実績は表ー5のとおりであった。また,部品交換後20,000m3練り混ぜ,再交換が必要なときの摩耗の様子を写真ー2~4に示す。
このように耐久度は当初の予想よりも小さな値となり,維持費も高いものとなった。これは竜門ダムで使用した骨材は花崗岩であり,その硬度がショア硬度でHs85~95と,ブレード,ライナの硬度(Hs75)よりも硬かったことが原因と考えられる。

傾胴式ミキサでGmax150mmのRCDコンクリートを練り混ぜたときのミキサ内部部品の耐久度は表ー6の実績がある(Tダム)。
表ー5および表ー6から,例えばブレードについて比較すると,竜門ダムでは11,000バッチ毎に交換しているものに対して,Tダムでは25,000バッチ毎に交換されており,約半分の耐久度となった。使用骨材の硬度とミキサ内部消耗品の耐久度の関係をブレードを例にとり図ー10に示す。
使用骨材等の条件が異なるので一概に比較することは困難であるが,Tダムの骨材は安山岩で,硬度Hs45~55に対し,竜門ダムの骨材は前述のように花崗岩であり,その硬度はTダムと比べて,2倍程度あること,また,二軸強制練りミキサは傾胴式ミキサの2倍の能力を有していること等を考慮すると,本ミキサの交換部品の耐久度は傾胴式ミキサと同程度になるものと推定される。

3.3使用電力量について
コンクリート練り混ぜ量と使用電力量との関係を図ー11に示す。
総使用電力量は,全練り混ぜ量844千m3に対して約125万Kwであった。コンクリート打設当初および終了時を除いた標準的な打設が行われていた時期については,ほぼ直線的な関係にあり,順調な練り混ぜが行われていたことをうかがわせる。練り混ぜ1m3当たりの電力量は約1.5Kwであった。また,Tダムで使用した傾胴式ミキサの実績から,竜門ダムの設備に換算して使用電力量を求めた結果,約92万Kwとなった。この関係を図に破線で表した。二軸式強制練りミキサの使用電力量は傾胴式ミキサに比べて大きいものとなった。
ミキサの違いによる使用電力量の比は1.36倍となっているが,3m3二軸強制練りミキサのモータ容量は220Kwで,傾胴式ミキサの場合は148Kwであり,その比は1.49倍であることから,モータ容量当たりの使用電力量はわずかであるが改善されているといえる。

4 あとがき
二軸強制練りミキサは,コンクリートの性状面について他現場との比較ではあるが,傾胴式ミキサに比べて品質,均質性とも良好な結果が得られた。このことにより,竜門ダムにおいて全国に先駆けて取り組んだ0.75mリフトから1.0mリフトへの移行等の技術開発にも大きく貢献できたと確信する。
竜門ダムにおける攪拌部の耐久性は,予想よりも小さなものとなったが,使用した骨材が非常に硬かったことなどを考慮すると,傾胴式ミキサと同等の信頼性を持ってRCDコンクリートを練り混ぜることができると思われる。
竜門ダムで使用したミキサは,ケーシングライナや攪拌翼の耐摩耗性の向上を図ってるが,今後はさらにより耐久性の高い材料の使用や構造の検討に加えて,使用電力量を含めたランニングコストの低減を図っていく必要がある。
合理化施工であるRCD工法は,今後のダム施工法として増加していくと考えられ,今後施工されるRCD工法におけるコンクリートの製造計画,施工の検討を行う上での参考になれば幸いである。

参考文献
1)丈達俊夫他:竜門ダムの施工計画と設備,ダム技術,増刊No.1,1991
2)建設省東北地方建設局,玉川ダム工事事務所:玉川ダムのRCD工法,平成元年3月

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