九州におけるスマートインターチェンジの整備状況について
国土交通省 九州地方整備局
企画部 広域計画課
幹線道路調査係長
企画部 広域計画課
幹線道路調査係長
中 内 利 和
キーワード:スマートインターチェンジ、高速道路、整備効果
1.はじめに
我が国の高速道路は、国土開発幹線自動車道建設法に基づき、全国で11,520㎞の建設が予定されており、これまでに約9,800㎞が開通している。
我が国における高速道路のインターチェンジ(以下IC)のIC 間隔は、平均約10㎞であり、欧米諸国に比べると約2 倍となっている。
また、高速道路が通過するだけで、IC が設置されていない市町村も存在している。
このため、国土交通省では、既存の高速道路の有効活用、地域生活の充実、地域経済の活性化を推進するため、建設・管理コストの削減が可能なETC 専用のスマートインターチェンジ(以下スマートIC またはSIC)の整備を平成16 年に社会実験としてスタートし、平成18 年から本格導入している。
2.スマートICの概要
スマートIC は、高速道路の本線、サービスエリア、パーキングエリア及びバスストップから乗り降りができるように設置されるIC であり、通行可能な車両(料金の支払い方法)はETC 搭載車両に限定されている。
このため、簡易な料金所の設置で済み、料金徴収員も不要なため、通常のIC に比べて、低コストで導入できるなどのメリットがある。
3.スマートICの整備状況
国土交通省では、スマートIC 整備について、高速道路を「賢く使う」ための重要な施策と位置づけ、地域の活性化と豊かな暮らしの実現に向けた柱として積極的に推進している。
このため、全国的に着々と整備が進められており片方向のみのサービスを両方向へのサービスとするフルIC 化事業も含め、全国で98 箇所が開通しており、このうち九州では10 箇所が開通している。
また、事業中のスマートIC は、全国で69 箇所、九州ではフルIC 化事業中の別府湾スマートIC を含め、7 箇所で事業を推進している。
4.スマートIC整備の進め方
これまでスマートIC は、地方での計画検討・調整を行った後、関係機関で構成する地区協議会(連結道路管理者、地方整備局、高速道路会社、学識経験者等)で構造や社会便益等を検討、その結果を踏まえ連結道路管理者が実施計画書を策定し、国等に提出するという手続きを経て事業に着手していたが、平成27 年度からはスマートICの準備段階(地方での計画検討・調整)で、国として必要性が確認できる箇所について、国が調査を行う「準備段階調査」を実施する新たな手続きが加わり、地方での計画的かつ効率的な準備・検討の推進を図ることとなった。「準備段階調査」では準備会を設け、検討等に国も加わり事業化に向けた準備を進め、その後は、従前と同様の手続きを経て事業に着手するという流れになった。
現在、準備段階調査箇所は全国で15 箇所あり九州管内では、平成29 年度に味坂スマートIC(仮称)が九州初の準備段階調査箇所に選定され、現在事業化に向け調査検討を進めている。
5.九州におけるスマートICの整備効果
これまでに九州で開通したスマートIC の整備効果としては、企業誘致による雇用の創出、観光振興への貢献、高次医療施設への時間短縮による救急医療活動への寄与など、様々な効果が確認されている。
以下に主な整備効果を紹介する。
(1)企業誘致による雇用の創出
<九州縦貫道:山之口スマートIC>
<九州縦貫道:山之口スマートIC>
九州縦貫自動車道宮崎線の山之口SA に接続するスマートIC で平成28 年9 月に開通。
開通後1 年間の出入り交通量は、1 日あたり約1,500 台と計画交通量の1,300 台を上回り、前後IC の交通量を含めてみても、本スマートIC 周辺部から高速道へのアクセス性向上により新たな利用交通の誘発があったと考えられる。
また、月ごとの交通量も大きな変動はないことから、日常的な生活利用として安定的に活用されているものと考えられる。
山之口スマートIC が位置する都城市では、山之口スマートIC や都城IC 付近の工業団地等への企業立地が増加しており、企業立地件数は、都城市全体でスマートIC 計画前(平成23 年度)の5 件から、昨年度は過去最高の15 件(3 倍)に達している。
今年度も10 月までに10 件と順調に推移しており、地域の企業誘致促進ならびに雇用の創出に大きく貢献している。
(2)観光振興への貢献
<東九州道:上毛スマートIC>
<東九州道:上毛スマートIC>
東九州自動車道の上毛PA に接続するスマートIC で平成27 年3 月に本線と同時に開通。
開通直後の出入り交通量は1 日あたり約800 台であったが、東九州自動車道延伸(椎田南~豊前IC 間)後は、北九州市~宮崎市間が全線.がったこともあり、約1,700 台へと約2 倍に増え地域と都市圏を結ぶ移動の利便性がさらに向上している。
上毛スマートIC に近く、町の玄関口としての役割を担っている観光複合施設「湯の迫温泉・大平楽(上毛町の新鮮野菜や加工品の販売、温泉・宿泊施設等を完備)」では、スマートIC の開通後、年間来客数が18 万人から28 万人と約10 万人増加するなど、スマートIC の整備が上毛町の観光振興に大きく貢献していることが伺える。
(3)救急医療活動への寄与
<九州横断道:由布岳スマートIC>
<九州横断道:由布岳スマートIC>
九州横断自動車道大分線の由布岳PA に接続するスマートIC で、平成28 年11 月に開通。
出入り交通量は1 日あたり約500 台であり、平日に比べ休日利用が多くなっている。(平日約400 台、休日約700 台)
医療面で、第3 次救急医療施設(脳卒中、心筋梗塞、大量出血などの重篤患者に対する高度医療施設)等への搬送時間短縮(新別府病院へは7分短縮)により、由布岳スマートIC を活用した搬送実績が18 件あり、由布市の消防担当者からは「揺れの減少に伴う搬送患者への負担軽減」の声も聞かれるなど、救急医療活動に寄与している。
6.新たなスマートIC制度について
(民間施設直結スマートIC制度)
(民間施設直結スマートIC制度)
国土交通省では、高速道路を活用した企業活動を支援し、経済の活性化を図ることを目的に平成29 年7 月に高速道路と民間施設を直結する民間施設直結スマートIC 制度を新たに創設した。
本制度は、民間企業の発意と負担によりスマートIC を整備するもので、直結する民間施設の対象は、大規模商業施設、工業団地、物流施設等を想定している。
また、対象交通は主に民間施設発着の交通としているが、直結路又は接続路により一般交通も利用可能な形態となっている。
利用はETC 車に限られており、ハーフIC や1/ 4(片方向への流入、片方向からの流出のみ)でも整備可能としている。
従来のスマートIC では、高速道路本線から料金所までのランプを高速道路機構、料金所を高速道路会社、料金所から既設の一般道路接続までを地方公共団体が負担するのに対し、民間施設直結スマートIC では、高速道路本線から民間施設までの直結路を民間施設管理者、既設の一般道路までの接続路を地方公共団体、料金所を高速道路会社の負担により整備することとしており、直結路は整備後に、民間施設管理者から地方公共団体に無償譲渡し、地方公共団体が維持管理を行う。
7.おわりに
スマートIC は、連結道路管理者である地域(地方公共団体等)の発意により、国や高速道路株式会社(日本高速道路保有・債務返済機構を含む)などと協力して整備するものであり、開通によって様々な整備効果が発現される。
開通後においても、持続的に地域(地方公共団体等)の方々が、それぞれの地域特性を把握した上で、活用するための知恵を出し、それを実行していくことにより、整備効果が最大限発揮されることを期待する。