一般国道10号・沖田橋の補強について
建設省 延岡工事事務所
道路管理課長
道路管理課長
山 本 勝 己
1 はじめに
一般国道10号は福岡県北九州市を起点とし,大分県,宮崎県を経て鹿児島県鹿児島市に至る延長約460kmの路線で,産業・経済・文化活動に大きく貢献している重要な幹線道路である。
沖田橋は,本線が通過する宮崎県延岡市塩浜町に位置し,昭和33年に架設された橋長144.9mの橋梁で6箇所のかけ違い部を有する7径間単純鉄筋コンクリート・ゲルバーT桁橋となっている。
本橋は,架設後40年を経過しており,床版および主桁のコンクリートに亀の甲状のクラックおよび剥離の発生が顕在化してきた。
また,平成8年道路橋示方普対応としての耐震性能向上策が必要であった。
そのため,補修補強工事を実施し,特に支承構造として,機能分離型支承を採用したものである。
2 構造上の特徴
沖田橋は,コンクリート・ゲルバー桁橋のヒンジ部をRC鉄筋による連結で固定することにより,7径間連続桁の橋梁へと構造形式の変更を行っている。その構造形式の変更に伴い,既設橋脚への影響を最小としながら耐震性能を向上させるため,地震時水平反力分散沓への取替えが必要である。そこで構造上の問題や支承部の取付スペースの条件等から,機能分離型支承装置を採用したものである。
機能分離型装置とは,①常時機能(すべり摩擦型支承で常時荷重に対応,図-2)と,②地震時機能(地震時の水平力荷重には一対の積層ゴムバッファで対応,図-3)をそれぞれの機能が対応し,かつ全体で沓としての機能を満たす支承装置のことである。
3 沖田橋の概要
沖田橋の概要を表-1に示し,補強一般図を図-4に示す。
4 補強工
(1)横桁補強工
旧支承の撤去にあたり,仮受け台より外側の外桁部は片持ち状態となる。そのため,施工時外桁部に輪荷重が作用した場合,現況の支点上横桁は,鉄筋の応力度が許容値を超過することが判明した。
その対策として,①横締め工案,②ブラケット案について比較検討を行った結果,経済性,施工性に有利である①の横締め工案を採用した。その補強配置図を図-5に示す。
橋台部はPC鋼より線7S12.7Bを1ケーブル,橋脚部はPC鋼より線12S12.7Bを1ケーブル配置することで補強を行い,旧支承の撤去に備えた。
(2)支承工
① 支承形式の選定
沖田橋の補強後は,7径間連続の橋梁となるため,補強前の固定橋脚をそのまま固定とすると,常時の温度伸縮による応力が大きく構造上好ましくない。
また,固定橋脚を1箇所にすると,基礎工および躯体の形状が非常に大きくなり,補強設計上困難である。そこで,耐震性の向上を目的に,ゴム支承による水平力分散形式の比較を行った。比較形式は,従来型および機能分離型の2種類について行い,施工性,経済性で優位な機能分離型支承を採用することとした。検討結果は表-2に示すとおりである。
② 支承取替工
支点上横桁に1橋脚あたり200tジャッキ6台(桁間2台)をセットし反力バランスを見ながら5㎜のジャッキアップを行った。ジャッキアップ後ダイヤルゲージで沈下量を測定し,変化のないことを確認した後,旧支承の撤去および沓座部のはつり作業を行った。
次に,主桁にアンカー用の削孔を行いスライディング沓を取付,沓座コンクリート打設をし翌日沓座無収縮モルタルの打設を行った。
ジャッキダウンはコンクリートおよびモルタルの圧縮強度確認後に行った。
なお,主桁削孔空間には,エポキシ樹脂を注入した(図-6)。
(3)ゲルバーヒンジ部連結工
高速水洗後,夜間全面通行止めを行い,ポリマーセメントモルタルを注入する工法を採用した。目地幅は30㎜と小さいため流動性の良いポリマーセメントモルタルを注入した。
注入3時間後の所定圧縮強度24N/mm2の強度確認後連結ボルト(旧可動端φ36,旧固定端φ32)をスパナにて手締めを行い交通開放を行った。
超速硬性のモルタルを使用することにより夜間通行止めの間(22:30~5:00)に2箇所のヒンジ部連結が可能となった(図-13)。
(4)主桁補強工
主桁下面に補強鉄筋を付加し,ポリマーセメントモルタルで被覆した。
設計上の補強鉄筋はD32の6本1段配置が必要であった。
施工に先立ち,鉄筋の腐蝕による断面欠損箇所を修復した。
既設コンクリート面と補強鉄筋との確実な接着効果を得るため,ポリマーセメントモルタルを注入した。
常時,交通開放を行うので,振動に伴うモルタルの沈下等で付着が低下される心配があり,設計上の膨脹率は0%であったが実施工では付着をより確実にするため1~2%で施工を行った(図-14)。
5 おわりに
今回の補強工事は,連続ゲルバー橋の耐震補強と同時にB活荷重対応を講じたものであった。
とくに,本工事はゲルバーヒンジ部の連続化による構造系の変化に伴う対策として,機能分離型支承を採用したものである。
これにより,機能分離型支承が極めてコンパクトであること,また施工面でも反力壁の据付を除けば簡素化され,建設現場の縮小化にも役立つばかりでなく,建設費のコスト縮減も図れた形式となった。
今後は,リニューアルばかりでなく橋梁新設工事の桁橋に対しても,有効な耐震対策の一つであると考える。