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トータルステーションによるマシンコントロール技術
(舗装現場からの情報化施工の報告と現状)
上村哲也

キーワード:情報化施工(舗装路盤工)、トータルステーション、マシンコントロール(モータグレーダ)

1.はじめに

現在、施工現場ではトータルステーション(TS)などの高度な測位システムの導入が進み、測量などに使用されている。
情報化施工は、このような情報通信技術(ICT)と電子化された施工図などのデータを活用することにより、測量などの計測作業の合理化、建設機械の自動制御による品質、精度の向上、丁張なしでの施工による施工効率の向上が期待できる。
ここでは、国道220号古江バイパスの改築工事において実施した情報化施工の1事例について紹介する。

2.国道220号古江バイパスの概要

古江バイパスは現道部における交通混雑の緩和と交通安全の確保を目的とし、特に急勾配、急カーブが連続する通称「古江坂」により、通行車両の安全な走行が妨げられているため、これらを回避するための延長7.5㎞のバイパス事業である。
そのうち、今回鹿屋市古里町から花岡町までのL=1.3㎞の工事が平成22年3月に完成し、平成20年3月に開通した既開通区間と併せてL=5.2㎞が開通した。
(計画概要)
路  線  名 国道220号古江バイパス
事 業 区 間 (自)鹿屋市白水町
(至)垂水市新城
延    長 L=7.5㎞
幅    員 W=15.0m
構 造 規 格 第3種第2級
設 計 速 度 V=60㎞/h
車  線 数  2車線(完成)

3.情報化施工の概要

今回開通した古江バイパス(古里~花岡間)の起点部の500m区間において、機械制御技術であるマシンコントロール(モータグレーダ)による路盤工の情報化施工(300m)を実施した。併せて、従来型機械による従来施工(200m)も実施した。
(工事概要)
工事名:鹿児島220号古江バイパス古里地区改築工事
箇所名:鹿児島県鹿屋市古里町
工  期:平成22年7月16日~平成23年3月16日
発注者:九州地方整備局大隅河川国道事務所
請負者:㈱NIPPO 南九州統括事業所

3-1 トータルステーションによるマシンコントロール技術

レーザー光及び無線を送受信することにより、施工機械に搭載するコンピュータに入力された三次元設計データと、自動追尾式トータルステーション(TS)によって測定される建設機械の位置データを参照し、施工機械の作業装置の高さ、勾配を自動制御(MC:マシンコントロール)するシステムである。
システムの機材構成イメージは、次のとおりである。

3-2 請負者の本社等支援体制

『NIPPO情報化施工チーム』が本社生産技術機械部に設置されており、6名が在籍し、全国の現場からの対応を行っている。
今回工事では、TS及びTS対応モータグレーダは、NIPPO社有機を使用した。全国の情報化施工現場の順番で配置しているので、施工時期によってはレンタル機械で対応することとなる。

3-3 情報化施工の流れ
①約1ヶ月前
現場担当者から情報化チームに連絡し、指導依頼を行う。
②約2週間前
情報化チーム担当者が現場を確認し、データ作成用情報収集など打合せを実施する。(約半日)
③約1週間前
三次元データを作成する。(約2日)
④施工前日
器材及び建設機械の調整を行う。(半日)
⑤施工実施当日
器材のセット等を行い、情報化チーム担当者から現場担当者へ引き継ぎ、出来形測定等を行う。

3-4 情報化施工と従来型施工との一般的な比較

3-5 今回施工での比較

今回の試験施工を実施し、上層路盤施工での概略比較を行った。
施工能力では情報化施工が30%効率的であった。燃費では情報化施工が18%縮減できた。施工人員では情報化施工が普通作業員を1人減らすことができた。
このことより、情報化施工が工事期間をより短縮でき、燃料使用量やCO2発生量を抑制することができるのではないかと考えられる。また、建設機械周辺での作業員が減ることにより安全性が向上する。

3-6 現場見学会の実施

請負者の主催で自治体関係者や建設業関係者を対象に現場見学会を開催した。約100名の参加者があり技術者の関心の高さが伺えた。
日時:平成22年12月17日(金)14:00~
場所:鹿屋市花岡地区公民館及び工事現場

3-7 現状

  1. 現場では情報化施工に関する機材等の費用を計上していないので、何らかのコストを削減し、施工量を十分上げないと経済ベースにのらない。
  2. 情報化施工の機材を購入するのは現実厳しく、高額なレンタル機材を使用しなければならない。
  3. レンタル機材は、都市部のレンタル業者しか所有しておらず、三次元データ作成などは仕上がりの高い出来形精度が要求され、責任も問われるため慎重な対応が必要である。
  4. 道路土工でのトータルステーションによる出来形管理にとどまっている。

3-8 今後の課題

  1. 建設会社やレンタル業者が所有する情報化施工の機材の数は限られており、需要に対応できるよう準備が必要である。
  2. 情報化施工の機材を扱える(例えば三次元データ作成など)技術者育成が早急に必要である。

4.おわりに

今回の取り組みに際し、事務所管内で施工中の現場代理人、監理技術者に情報化施工についてのヒアリングを行った結果、全員が講習会等を経験しており、認識の高さは感じられた。そして、地方部で中規模の試験的な情報化施工を実施し、従来型施工に比較して非常に優れたシステムであると実感した。しかしながら、機材の調達費用が高額、機械の不足、技術者育成、中小規模工事への適用など本格的な運用に向けて解決しなければならない課題が多くあることを感じた。今後の実用化、普及に向けたさらなる対応が必要である。
最後に本文をとりまとめるにあたり、㈱NIPPO南九州統括事業所にご協力いただいたことに謝意を表します。

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