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カリフォルニア州の水開発

福岡県 土木審議監
長 野 紘 一

カリフォルニアの水
“水不安のない県土づくり”をいかに進めるかは,福岡県の緊急課題のひとつです。
そんなこともあり,カリフォルニア州の水開発について視察する機会を得ましたので,思いついたまま述べたいと思います。
主な行程は,サクラメント川支流にあるオロビルダムに始まり,カリフォルニア水路沿いを下り,サンルイスダム,そしてフーバーダムヘ。途中州政府機関やフレスノ市水道局との意見交換を含めての,1週間の勉学ひとすじの旅でした。
私は漠然と,アメリカは何事も壮大だろうな一とは思っておりましたが,最初の訪問先のオロビルダムの容量が43億m3,そして流域面積はわが福岡県のほぼ2倍近くあるのには,驚嘆させられました。
もともとカリフォルニア州は雨が少なく(年間平均降水量は300mmだそうです。),カラカラの砂漠地帯に街が出来あがったのですが,その命の水の大半が山岳地帯からの雪どけ水なのです。
このため雪の降り方によっては社会生活に大きな影響が出るのですが,幸いなことに積雪調査に基づいた流出量の予測が十分発達しており,降雪の少ない年は,水需要量を20%抑える等の対応策がルール化されております。
日本の場合は,前線性とか台風性の降雨に頼らざるを得ないので,年間を通して流水量を予測することは困難ですが,福岡都市圏等では一定の条件を定めて水需要の何らかのマニュアル化も,必要ではないかと思いました。
北部山岳地帯からの水は,カリフォルニアの心臓部ともいえる“サクラメント—サンジョクインデルタ”をつくり,ここが州と政府の水資源開発プロジェクトの取水地点となっているのです。

また,このデルタは水配分の重要な結束点であると同時に,動植物を始めとする生態系保全の原点の地でもあるのです。—言葉をかえれば,州の経済と環境をどう結びつけるか,各々の立場での主張がぶつかりあっているところです。—
勿論カリフォルニア水路で運ばれる水も,このデルタから取水されるのですが,その量は,毎秒290m3,これは筑後川の瀬の下地点での平均流量110m3と比べても,そのものすごさが分かると思います。
しかもこの水は延々と885km—JRで博多から名古屋の先までの距離です。—そして標高1,000mの山をポンプアップで越え,南カリフォルニアへと運ばれるのです。
特にエドモンドスポンプ場は,世界最大の揚程を誇っており,590mを一気に揚水するため年間50億kwHの電力を消費します。
このプロジェクト全体で必要な電力量は,年間137億kwHといわれ,これは九州電力の需要量の4.5分の1という膨大なものですが,このうちの半分は自前の水力発電で賄っているそうです。
水路に近接して河道外貯留施設としては全米一の,サンルイスダムがあります。(安価な夜間電力を利用して貯留しているのですが,その容量も25億m3という馬鹿でかいものです。)
日本ではこのような貯留方法の水利権には,劣後条項が付けられ,ダム事業としては数も少なく本流とは見なされていないようですが,アメリカでは,Off Stream Reservair と呼ばれ,環境に配慮したダムとしての評価がなされているようです。
余談になりますが,このカリフォルニア水路は水深が10mもあり,15,000tの船舶も航行出来るそうですが,管理するにはセスナ機を使わなければ間に合わないそうです。
また,水路にはガードレール等の,いわゆる安全施設等は全くなく,ただ,立看板が立っているだけですが,私はこの看板に“自分の命は,まず自分で守る。”という開拓精神というか,狩猟民族の血を頼もしく感じたものです。

閑話休題
私達一行は,団長の今村さん,県の水対局から2名,JT,通訳,運転手のオールジャパニーズの総勢7名様でしたが,途中から一匹が合流することになりました。
人っ子一人居ない展望所で衰弱しきっていたワンちゃんです。
東北出身の犬好きの運転手さんが可哀相だから連れて帰りたい,とのたっての希望で私達一行に加わったのです。
フルネームは,産地から“パターソン・ビュー・ポイント”です。
私は生まれつき犬が嫌いですが(はっきり言うと恐いのです。),三日間の付き合いで御覧の親密さとなったのです。
このシーンが家族一同にとって,一番の驚きだったようです。

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