<
第16回アジア太平洋地域ITSフォーラム2018福岡
開催報告
開催報告
(元)国土交通省
(現)株式会社福山コンサルタント
(現)株式会社福山コンサルタント
藤 本 聡
西鉄情報システム株式会社
浦 正 勝
実行委員会事務局
株式会社シグマクシス
株式会社シグマクシス
曽 我 健
キーワード:アジア太平洋ITS
1.はじめに
本年5 月8 日から10 日までの3 日間にわたり、福岡国際会議場及び福岡サンパレスにおいて、第16 回アジア太平洋地域ITS フォーラム(以下、AP フォーラム)が開催された(写真- 1)。今回は、1996 年の第1 回東京開催から22 年ぶりの日本での開催となる大会で、47 社の協賛企業および30 以上の後援団体のご支援のもと、参加国27 か国(日本含む)から総登録者数3,556 人を数える規模の大会となった(表- 1、表- 2)。
2.ITSについて
ITS(Intelligent Transport Systems)は、わが国では一般に高度道路交通システムと称され、人(ドライバーや歩行者)と車と道路の間で様々な情報の受発信を行い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境問題といった課題の解決を目指すシステムをいう。
身近な施策としては、現在国土交通省が中心となって推進しているETC2.0 のシステムがある。これは、料金所における自動料金収受だけでなく、全国の高速道路や一般国道上に設置されたITS スポットと車両に取り付けたITS スポット対応型カーナビとの間で双方向に情報通信を行うことにより、渋滞状況などをリアルタイムに収集して広域かつ最適なルートを案内するなど、多様なサービスを可能とするシステムである。また、このシステムは、双方向通信が可能という特性から、走行車両の走行履歴や挙動履歴のデータ(いわゆるプローブデータ)を道路上のITS スポットに送信することも可能なことから、これらの不特定多数のデータを解析することにより、様々な道路交通管理に役立つことが期待されている。
また、ITS の範疇としては、上記に紹介したETC2.0 のシステム以外にも多岐にわたっており、自動運転システムの開発はもとより、地域ITS といわれるような各地域での独自の取り組みや、移動制約者への取り組みなど、その裾野は広い。今回のAP フォーラムにおいても、昨今のITS に係る最新動向をはじめ多岐にわたるテーマを設定し討論した(表- 3 参照)。
3.開催概要
3-1 開催テーマ
今回のAP フォーラムは、「Everyone’sMobility by ITS 」をスローガンに、“ いかにしてITS を通じて、人々にとってより安全・安心で、環境に優しく快適な移動を可能とするモビリティ社会を追及するか” をテーマとした。
3-2 セッション
これまでの通例となっている①プレナリセッション ②エグゼクティブセッション ③スペシャルインタレストセッション ④テクニカルセッション に加え、主催者の企画によるホストハイレベルパネル及びホストセレクテッドセッションを設け、計46 のセッションを企画した。
なかでも、ホストハイレベルパネルでは、「Society5.0 の実現に向けた自動運転プロジェクト」をテーマに松山内閣府特命担当大臣及び八山内閣官房参事官から基調講演があり、その後関係4 省庁5 局の担当室長より昨今の動向について報告があった。松山大臣からは、①自動運転技術は目下の社会的課題の解決に貢献するとともに新たなサービスの創出が期待されること、② 2020 年の高速道路での自動運転サービス、中山間地域などの限定地域での無人自動運転サービスの実現をめざし、現在、実証実験などを繰り返し技術開発に取り組んでいること、③自動運転サービスの実現に必要となる関連法制度の見直し方針を定めた「自動運転に係る制度整備大綱」を本年4 月に策定したこと などの紹介があった(写真- 2)。
3-3 展示
民間企業・団体、関係省庁、自治体などを中心に、国内外併せて約80 の企業・団体から保有技術・商品等についての出展をいただいた(写真- 3)
3-4 デモンストレーション
以下のデモンストレーションを福岡空港や会場周辺の公道などで実施した。
①自動運転車両
ⅰ)福岡空港の国際線と国内線間における自動運転バス、ⅱ)国際会議場周辺における低速電動コミュニティバス、ⅲ)バス停への正着制御技術を実装した自動操舵・制動バス、ⅳ)モバイル通信網経由による遠隔監視・操作自動車、v)対話型の自動運転車いす、の5 種類のシステム(写真- 4)
②ITS Connectシステム
専用周波数760MHz による路車間・車車間通信による安全運転支援システム
③AI運行バスシステム
乗客によるスマートフォンアプリからのデマンドに対して、AI が複数乗合バスから最適な運行となる車両や送迎順を計算し、運行するシステム
④TSPS(信号情報活用運転支援システム)
光ビーコンから配信される信号情報を移動のスムーズ性や環境対策に活かすシステム
3-5 その他
今回のAP フォーラムではさらに以下の特徴的な企画を実施した。
①ガラ・ディナー
歓迎イベントとして、 “ 福岡らしさ” を味わっていただく企画として、一般的なホテルでの立食パーティ形式ではなく、川端商店街約400m を会場にガラ・ディナー(Gala Dinner)を開催した。
当日は、あいにくの雨だったが、アーケードに守られた会場であったことに加え、さまざまな催し等により、約450 名の参加者にとって思い出深いイベントとなった。特に海外の方にとってネットワーキングや国際交流の場として好評であった(写真- 5)。
②ITSソリューションステージ
あらたな試みのひとつとして、BtoB、BtoCのネットワーキングの活性化を狙った企画として、米国シスコ システムズ、ITS シンガポール、DeNA、損害保険ジャパン、東京弁護士会AI 部会など13 団体にご登壇いただき、ITS 関連の要素技術であるIOT、AI さらにはセキュリティなどをテーマとしたセミナーを開催した。
③アイデアソン
フォーラムの目的のひとつとして、「次の世代を担う若者を支援する」ことを掲げていたことから、初の試みとしてアイデアソンを実施した。
アイデアソンは、アイデアとマラソンを組み合わせた造語であり、設定されたテーマに対し、じっくりと議論し新しいアイデアを創出するという趣旨から企画したものである。今回は、「ITS を活用して、いかにしてアジア各国の交通事故を減らすか」をテーマに、九州・沖縄及び海外から高専生や大学生約80 名が参加し、混成チームを結成の上、4 日間にわたり活発な議論を繰り広げてもらった。
④その他参加者向けサービス
交通系IC カード nimoca に、会場内の各会場への案内や規制、ランチ提供の際のハラル・ベジタリアンの判別などの機能を付加し、参加者にnimoca を利用していただき利便性向上に活用していただいた。交通系IC カードによるこうした対応は日本初の試みであった。また、このIC カードは、会議前後あわせ5 日間の福岡地区のバスフリーパスとしてもご利用いただいた。今後は、交通系IC カードの利用により、動態把握や経路分析などにも活用できると考えている。
4.おわりに
今回のAP フォーラムでは、社会へのITS のかかわり方、自動運転などの最先端ITS 技術、公共交通が果たすべき役割等、多くの討論を通じて、進化を続ける日本の最先端ITS 技術を、アジア太平洋地域や世界に向けて発信することができた。併せて、わが国の多くの参加者にとっても、海外の最先端ITS 技術に接することができる非常に貴重な場となったものと確信している。
今後はさらに、今回のフォーラムを大きな契機として、アジア太平洋地域におけるITS 関係者間の交流が一層深まり、モビリティ社会の進化につながっていくことを期待している。
最後に今回のフォーラム開催に際し、ITS Japan、ITS Asia-Pacifi c、協賛者、出展者、デモンストレーション実施者、後援団体、地元九州の政財界、その他多くの関係者の皆様の多大なるお力添いをいただき、成功裏に納めることが出来たことに感謝し、心より御礼を申し上げます。