まち・ひと・しごとを支えるインフラ ~熊本県のストック効果~
鈴木俊朗
キーワード:中九州横断道路、熊本天草幹線道路、八代港、連続立体交差事業
熊本県では、昨年10月に「熊本県まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、地方創生に向けた取組みをスタートさせました。幹線道路ネットワークをはじめとするインフラは、地方創生を下支えする重要な基盤であり、“ 未来の礎を築く” 取組みとして戦略に位置付けて整備を進めています。
道路整備によるストック効果が発現している事例として、国道57号では、バイパスの整備が進むとともに沿線の菊池地域に半導体関連企業などが進出し、この地域の製造品出荷額は県内の約4割を占めています。また、企業の立地に伴い、合志市、菊陽町、大津町、西原村は、熊本市のベッドタウンではなく、地域自体の力で人口が増加している全国でも稀有な地域となっています。今後は、中九州横断道路の整備により、さらなるストック効果の増大が期待されています。
天草地方に目を転じると、昭和41年の天草五橋開通後、大幅に観光客数が増加し、県内有数の観光地となっています。昨年、「三角西港」が世界遺産に登録となりましたが、さらに今年は、キリスト教文化を今に伝える「﨑津集落」の世界遺産登録を目指しています。現在、熊本天草幹線道路「大矢野バイパス」は、平成29年度の供用開始に向け整備を進めており、観光客のさらなる増加が期待されます。
都市整備では、平成23年3月に九州新幹線が全線開業し、現在、熊本駅周辺地域において、JR鹿児島本線等の連続立体交差事業に取り組んでいます。平成27年3月には部分開業し、踏切除却により渋滞が解消するとともに、土地区画整理事業等との一体的な整備により、周辺地区の地価上昇や、民間マンション建設を誘発するなどのストック効果が発現しています。平成30年度の事業完了後には、東口駅前広場や在来線跡地の開発も予定されており、さらなるストック効果の増大が期待されます。
港湾整備では、貨物港である八代港は、水深14m岸壁などの整備が進むにつれ、取扱貨物量が順調に増加しており、物流センターなどの民間投資が活発化しています。こうした本来のストック効果が発現しているなか、近年は、既存の貨物岸壁を利用して外国籍クルーズ船を受け入れており、平成27 年は、前年の1隻から大幅増となる10隻の寄港がありました。今年はそれ以上の寄港の相談があるなか、夜間入出港などの環境整備にも取り組んでおり、今後の入港数の増加と地域振興への効果を期待しています。
このようなストック効果について、熊本県では、県民の皆様に情報発信する取組みにも力を入れています。
前述した事例をはじめ、分野ごとにストック効果事例集を作成し、熊本県のホームページに掲載しています。また、「ストック効果パネル展」を県庁や県地域振興局、三角西港、くまもと森都心プラザなど、県内各地で開催しています。
この他にも、知事の定例記者会見では、下水道ストックの有効活用として、“ 燃料電池発電” の事例を発表しました。さらに、新聞広告として、県内の道路のストック効果を各方面の方々の声を交えながら掲載しました。
今後も、県民の皆様の社会資本整備への理解をいただきながら、熊本の“ まち・ひと・しごとを支えるインフラ” の整備に取り組んでいきます。