第4回「技報賞」懸賞論文 『佳作』
新・公共交通機関による渋滞緩和
新・公共交通機関による渋滞緩和
福岡大学工学部 社会デザイン工学科 4年
坂 井 伸 弘
1 はじめに
今後重要となってくるものは、渋滞問題だと思っている。全国の都市で交通渋滞が問題になっている。現代人はインターネットや携帯電話の普及により人間は待つという行為が苦手になってきているということがあげられる。いつでも好きなときに情報が得られ、好きなときに連絡を取ることができる。しかし、インターネットの繋がりが悪かったり、携帯電話の電波が届かないとイライラしたり落ち着かなかったりする。それが渋滞にも大きく影響し、大きな問題となるだろう。しかし渋滞を解消するということは現実的には無理に近いと考えられるが私なりに緩和方法を考えてみた
2 私の考える緩和方法
渋滞を緩和する方法を二つ考え紹介したいと思う。
まず1つ目だが、渋滞には二通りあると考えている。スポーツ大会やコンサートの開始前に発生するワクワクする渋滞。交通渋滞などいつまで、どこまで続くかわからないイライラする渋滞があると思う。このようにイライラする精神的負担を変えることによって渋滞に対する見方が変わってくるのではないかと考える。後者の渋滞を前者の渋滞にいかにして変えることができるか、それを実現することが出来れば緩和できるのではないか。ではどのようなことを行えば精神的負担を減らすことができるのだろうか。渋滞の時間や途切れる場所を明確にすることが出来れば精神的負担を減らすことができるはずだ。そのために新しく「渋滞発生場所ブレーキ控えよ」という道路標識を作り、渋滞を意識してもらうことにより多少の緩和に繋がるであろう。
二つ目はバスや鉄道の他に新たに公共の交通機関を増やすことだ。そこで私はパリで利用されている公共レンタサイクル「ヴエリブ」とバスに注目した。公共レンタサイクル「ヴエリブ」街に300mごとに自転車のステーションが設置され、どのステーションで借りても返却してもOKという乗り捨て可能なもので、ビジネスマンをはじめ観光客もこのヴエリブに乗って街を走っている姿が見られるようになった。ヴエリブの導入目的は、環境対策、パリ市内のひどい交通渋滞を減らすということが挙げられている。この公共レンタサイクルを参考に日本でも行なっていくことで渋滞解消につながるであろう。そこで違法駐輪が問題になっている福岡市を例に挙げてみる。福岡市は違法駐輪をしていた撤去自転車がたくさんあるのが現状である。最近では、駐輪場の整備が進んできたことにより、減少傾向だが、放置自転車の撤去・処分という面で見ると、その台数は毎年増加している。内閣府が2年に1回実施している放置自転車の実態調査で例年上位となっている福岡市では、定期的に放置自転車を撤去しており、1年間で約44,000台(平成16年)もの自転車が撤去されている。現在は福岡の職員を対象として撤去自転車の再利用が行なわれているが、この撤去自転車を整備して福岡市全体にステーションを設置し、一般市民全員に利用してもらうことで違法駐輪の減少、温暖化の防止に大きく繋がるであろう。また駐輪場を増やす計画があがっているが、私はこの公共サイクルを利用することが渋滞緩和、違法駐輪の減少、空気汚染の解消につながる解決方法であると思う。この公共レンタサイクルの相乗効果として天神地区や博多駅周辺の違法駐輪が減り、災害防止に繋がる。公共レンタサイクルを利用して通勤し、帰りはバスを利用して帰ることで飲酒運転の防止に繋がる。しかしこれにも実現するには問題点が多くある。歩道を自転車が走ってしまい、歩行者と自転車の接触事故が増えてしまう。そこで自転車専用道を整備しなければならなくなり、莫大なお金が必要になる。公共レンタサイクルが天神や博多駅といった人口集中地区に集まってしまいトラックを用いて自転車を輸送し、回収したりしなければならなくなりさらにお金がかかってしまう。自転車の修理にお金がかかる。実際パリでは「駐輪機が少なくて返却できない」、「パンクしていることがよくある」などの不満があり、この点に関して、駐輪場によって台数に偏りがある場合、トラックで自転車を輸送し、回収したり再配備したりして問題解決に努めている。また、毎日約10パーセントの自転車が修理に出されているというのが現状であるそうだ。まずはこの問題を解決することが重要である。
次に大都市はバスが非常に多く、利用者にとっては時間の調整がしやすく、路線も充実しているため非常に便利である。しかし一方でバスが多いために渋滞の原因となっているのも現状である。そこで有効的に利用されているのかという視点からバス路線や便数の見直しが必要であると考える。また時間が遅れてバスが二台続けて走行していたり、バスの快速は場所によっては意味のないものになっていたりなど改善するべき点はたくさんある。そこで私は提案したいと思う。乗客の多い路線や時間帯などは、行き先を限定せずに来たバスに乗り、一定間隔で来るバスに乗り換えることによって目的地に到着する。無駄なバスを省き、乗客がバス停で長々と待つという行為がなくなったり、バスが二台並んで走るということもなくなってくるのではないかと考えている(図-1)。しかし高齢者はわざわざ乗り換えることは大変だと思うので、高齢者に優しいバス作りが必要になってくる。
3 最後に
渋滞緩和は最も難しい問題であり、最も解決しなければいけない問題でもある。車線を増やし交通容量を大きくすることが一番良い方法かもしれないが、現実的に不可能である。世界を見てみると、自転車を用いて、渋滞や環境問題を解消している国もあった。世界中でこの問題に取り組んでいるということもわかり、日本もこのような国に習って渋滞緩和、環境問題を解決していかなければならない。そこで私なりの考えとして人間の渋滞に対する精神的負担を軽減したり、公共の交通機関を新設したりすることによって渋滞緩和を行なうことが重要だ。