「道の駅」の防災拠点化の動きについて
元水昭太
キーワード:「道の駅」、防災機能強化、全国「道の駅」連絡会
1.はじめに
「道の駅」は3 つの基本的な機能として「休憩機能」「情報発信機能」「地域連携機能」を発揮することを目的として整備されている施設であり、制度発足から、約20 年経過している。
平成25 年10 月末現在、全国で1,014 箇所、九州・沖縄では、122 箇所が登録されており、道路利用者や地域の多くの方々に利用されているところである(図ー1)。
近年、「道の駅」には、3 つの基本的な機能の他、あらたに「防災機能」が求められてきている。
また、平成24 年12 月17 日に、「道の駅」に関する情報交換、「道の駅」相互の連携などにより、「道の駅」の質の確保や向上、各地域の地域振興及び利用者サービスの向上に寄与することを目的として、岩手県遠野市において全国「道の駅」連絡会が設立されている。
平成25 年10 月29 日に佐賀県鹿島市において、第2 回全国「道の駅」連絡会総会・シンポジウムが開催されたところである。
本稿では、「道の駅」の防災機能の事例や佐賀県鹿島市で開催された第2 回全国「道の駅」連絡会総会及びシンポジウムについて報告する。
2.防災機能強化の事例
平成23 年3 月の東日本大震災では、「道の駅」が自衛隊等の活動拠点や住民の避難場所、水や食料の供給場所、トイレを提供する場所として活躍している。
最初に、平成24 年7 月の九州北部豪雨災害における九州の「道の駅」の活動事例を紹介する。
平成24 年7 月14 日 九州北部豪雨災害で被害を受けた矢部川の破堤箇所の緊急対策のため、各地方整備局から排水ポンプ車、照明車約30 台が一般国道443 号にある「道の駅」みやまに集結し、災害活動の拠点基地として活躍している(図ー2、写真ー1~3)。
被災現場に順次ポンプ車を配置し、翌日の7月15 日夜までに排水作業が概ね完了している。
次に、大分県佐伯市の3 つの「道の駅」で構成する佐伯市「道の駅」連絡協議会(弥生、かまえ、宇目)(図ー3)では、3 駅に募金箱を設置、また、支援物資の受付けも開始し、熊本県阿蘇市商工会や福岡県八女市へ支援物資を発送している(写真ー4)。
このように、災害時には九州の「道の駅」においても、災害対策の基地や支援の基地として活躍している。
九州地方整備局管内にある直轄国道沿いで国と自治体と一体となって整備を行っている「道の駅」は、平成25 年10 月末現在で28 駅存在する。そのうち、非常用トイレや非常用発電設備などの整備を行った「道の駅」は8 駅である。
今後も、自治体と連携を図りながら、必要な施設整備を行うこととしている。
3.第2回全国「道の駅」連絡会総会・シンポジウム
平成25 年10 月29 日に「1,000 を超えた結束~「道の駅」の着実な向上に向けて~」と題して、利用者サービスの向上や「道の駅」のブランド向上に向けて全国で連携する取り組みや活動を導き出すことを目的に、佐賀県鹿島市において第2 回全国「道の駅」連絡会総会・シンポジウムが開催された。
シンポジウムでは、基調講演、全国の「道の駅」の好事例の報告、パネルディスカッションと内容も豊富であった。
総会では、市町村長や道路管理者等の「道の駅」関係者が約400 名出席し、シンポジウムは、一般公開で約1,000 名が出席した。
このうち、報告会では、宮城県石巻市の「道の駅」上品の郷の太田駅長より、平成23 年3 月11 日の東日本大震災時における「道の駅」の活動について紹介があった(写真5~7)。
ここで、「道の駅」上品の郷の概要を示す。「道の駅」上品の郷は、一般国道45 号宮城県石巻市に位置する「道の駅」である。
平成16 年8 月9 日に登録され、主な施設として駐車場、トイレ、飲食施設、温泉施設、農産物販売所、道路情報施設等を有しており、滞在型の「道の駅」である。年間、約130 万人の方々に利用されている。「道の駅」上品の郷では、宮城沖地震を教訓に、震度7 以上の地震に耐えうるように設計しており、釘を1 本も使用しない日本建築となっている。
この「道の駅」は、東日本大震災直後は、一時、閉鎖となったが、周辺の田は津波で水浸した状況で、家に帰ることができなかった住民等が「道の駅」上品の郷へ避難してきたため、ライフラインが止まっている状況下で、「道の駅」を再開した。
このとき太田駅長は、無料で商品を提供すると避難者が不用な物まで持って行かれ混乱が起きるとの考えから、有料で販売を行っている。
ライフラインが止まっている状況下で大変だったことは、トイレの排出物処理であった。災害時には、日に日に「道の駅」の利用者が増えトイレを利用されるため、当初1 日2 回の処理が1 日5 回まで増え、太田駅長が中心となり、手作業により、全て処理を行った。
このほか、「道の駅」上品の郷から約2㎞離れた複合施設の避難者2,500 人に対し、米、味噌、野菜などを生産者から買い集めて支援した。
また、3 月13 日には、上品の郷にある温泉施設を無料で開放している。しかしながら、無料で開放したことにより利用者が殺到し収拾がつかなくなったため、3 日目からは温泉も有料として混乱を収拾させたとのことであった。
こういった経験を踏まえ、平成25 年10 月3日に、「道の駅」上品の郷と宮城県石巻市とで「災害時における支援協力に関する協定」を締結するなど、行政と一体となり防災機能強化に取り組んでいる。
また、震災後は、「道の駅」上品の郷を拠点としたコミュニティバスも運行され、仮設住宅の住民の方々も利用されている。
さらに、「道の駅」からの情報発信として、道路情報提供施設に震災伝承コーナーを設置するなど震災の記録を後生に伝えることも行っており、月に10 回程度の視察を受け入れている(写真ー8,9)。
4. おわりに
近年、「道の駅」には、3 つの基本的な機能の他、防災機能も求められてきており、さらに全国「道の駅」連絡会が設立されたことにより、益々各ブロックを超えた連携・情報共有が図られ「道の駅」が進化し、また着実に向上させていくことが求められている。
そのためには、防災機能強化を目的として、「道の駅」の施設の充実、災害時に円滑に活動するために防災協定の締結など、道路管理者、自治体、「道の駅」運営者と一体となった備えを行うことや、「道の駅」のブランドの向上を目的として、昨年度、設立された全国「道の駅」連絡会等の様々な関係者のネットワークを活用することが必要となっている。
今後も関係者と一体となった「道の駅」の整備や維持管理を行っていくことが重要であると考える。
最後に、今回の執筆にあたり、貴重な資料の提供をいただいた、「道の駅」上品の郷 太田実駅長、東北地方整備局道路部交通対策課の皆様に感謝の意を表す。