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「九州流域連携会議」について

国土交通省 九州地方整備局
 河川部 建設専門官
田 上 敏 博

国土交通省 九州地方整備局
 河川部 河川計画課 調査第二係 係員
山 口 広 喜

国土交通省 九州地方整備局
 河川部 河川計画課 調査第一係 係員
鳥 井 譲 太

1 はじめに
「川は地域共有の公共財産である」という共通認識のもとに,住民と行政の役割分担による持続的な流域管理が必要になりつつある。
平成9年度の河川法改正では,改訂の大きな柱の一つとして今後の河川整備計画策定には,住民意見の反映が不可欠であると謳っている。これは,今後の流域管理を行うにあたって,住民の参加なくして,持続的なしくみの構築は,あり得ないという精神をも含んでいるといえる。
しかし残念ながら,まだまだ住民の方の川に対する関しは低く,まずは,参加していただける住民層の拡大が大きな課題となっているところである。
幸いにも九州内では,川をフィールドとされている住民団体等の活動が,徐々にではあるが,活発になりつつある。このため,今回,行政からの提案という形で,住民リーダーとの話し合いにより,九州における新たな連携の形やしくみづくりを目的に九州流域連携会議が発足した。

2 各流域団体の活動と課題
社会的奉仕活動に参加されたいという住民意識は,年々高まりつつある。一方で活動されている市民団体等の主な課題として,財政基盤の脆弱さや人員不足等があげられる。
活動への参加は,ボランティアが理想的ではあるが,継続性や発展性から考えると問題がないとはいえない。
今後,住民の方が流域管理の担い手として持続的に活動していただくうえでは,何らか活動基盤を確保するしくみづくりが急務といえる。
また,中・上流域における町村で,急速に進む高齢化と過疎化の問題も流域管理の上では,大きな課題である。人の住まない家が荒れるように,また間伐する人がいない森林が荒れるように,人が住まなくなる流域は長期的には,荒れていく可能性がある。“まとめ役”としての後継者育成も含めて,継続的な人材育成と繋がりができる環境づくりも,流域全体が活性化していくための長期的なしくみづくりとして必要不可欠である。
このような課題を解決するには,行政だけでは当然限界があり,一方住民の方だけでも困難性が多く,解決に向けての何らかの新たな糸口が必要である。一つの方策として流域の活性化のために流域内市町村と住民が連携し,川を軸としたネイチャーフィールドの再発見,子供達の環境教育のフィールドによる利活用を推進するしくみづくりも考えられる。しかし,まずは住民間の連携の広がり,行政と住民間の信頼関係の構築が前提であり,九州流域連携会議による取り組みに期待するところが大きい。

3 「九州流域連携会議」の活動概要
当会議は,「柳川水の会」の広松氏,「緑川の清流を取り戻す流域連絡会」の濱崎氏の呼びかけと進行役として「九州水環境ネットワーク」の岡氏などが中心となり始まった。
〇活動における基本コンセプト
 1 理念を実現するためのしくみづくりおよび活動に関すること
 2 各流域での取り組みおよび諸問題等の情報交換
 3 住民ネットワークの広がりに関すること
〇組織
現段階では,管内20水系(国土交通省直轄水系)の流域住民団体が中心であるが,今後は補助河川を含めて九州全体に拡げ,誰でも参加できる組織づくりを目指す。
〇参加団体 (H13.12末現在)

〇会議の概要
第1回会議 平成13年2月24・25日(熊本)
管内20河川の住民団体のリーダークラスが集まり,各流域での取り組み状況や抱える課題等を中心に意見交換し,今後の流域相互の情報の共有と連携の推進について今後も継続的に実施していくことを確認。

第2回会議 平成13年7月1日(久留米)
会議冒頭において,正式に九州流域連携会議を発足し,継続していくことを決定。この決定に基づき,当面の具体的な活動として「九州版川の日ワークショップの開催」を決定した。

第3回会議 平成13年9月15日(熊本)
流域連携会議の今後の進め方,会議の果たす役割について論議した。また,今後も継続的に論議していくことを確認。九州「川」のワークショップの運営方法等の確認

九州「川」のワークショップ2001の開催 平成13年1月24~25日(久留米大学)
市民(団体)と行政がそれぞれ関わっている「いい川」や「いい川づくり」のための活動や取り組みを募り,それをみんなが共通のテーブルについて,「いい川やいい川づくりとは何か」をそれぞれの取り組み事例について発表し,その中から「知恵」と「勇気」と「希望」と「元気」を与えてくれる川や活動のキーワードを見つけだす事を目的として開催された。
●発表部門と課題数
 いい川づくり活動部門(主に市民団体)……20課題
 いい川づくり整備部門(主に行政)……2課題
●各セッションの発表方法
① 全体セッションⅠ(全課題を4つのグループに分けて3分の発表および7分の質疑
  応答)
② パネルセッション(各グループ20分の時間で個別に説明)
③ 全体セッションⅡ(コーデイネーターによるパネルデイスカッション)
それぞれの流域で活動されている事例を聞くことで互いの刺激となり,また,市民(団体)同士や行政との交流も図れ,今後のより良い「川づくり」に向けた第一歩となった。さらに,引き続き来年も開催されることを確認している。

4 今後の展開
九州流域連携会議は,九州における新たな連携の形に向けて,第一歩を踏み出した。
しかしながら,課題は多く,今後の紆余曲折が予想されるが,官・民,民・民,官・官の活発な連携に向けて,出来る限り多くの関係者が同じテーブルで話し合いながら,九州流のしくみをつくりあげていくことが重要である。
九州は,全国の中でも自然災害が多発している地域であり,危機管理においても地域コミュニテイによるネットワークは,不可欠である。
一方では九州独自の自然豊かな環境を今後継続的に保全するためには,流域住民総参加による取り組みが大いに望まれる。九州流域連携会議が,今後,九州における流域住民活動の母休となり,官民の垣根を越えて,安全かつ住民の方に愛されるふるさとの流域づくりが本格化するきっかけとなることを心から願っている。
今回の発足に当たり,㈶九州地方計画協会他関係財団のご協力とご支援にこの場を借りて心から感謝申し上げるものである。

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