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H29年改定道路橋示方書によって橋梁の設計はどう変わったか?

大塚久哲

キーワード:道路橋示方書、改定の要点、部分係数設計法、耐久性能

1.はじめに
H29年改定の道路橋示方書は、いくつかの点で最近の道示改定とは異なる画期的な要素をもっている。その一つは部分係数設計法の導入である。本設計手法は、限界状態設計法、荷重・強度係数設計法とも呼ばれ、1979年に発行されたカナダ・オンタリオ州の道路橋設計規準がこの分野では最も古い。爾来ほぼ40年経過したが、日本の道路橋示方書もここに至ったことは喜ばしい。
もう一つの特筆すべき点は、耐久性能に関する部材の設計を導入して、これを耐荷性能と同レベルの橋梁の基本的性能としたことである。橋梁の維持管理の必要性・延命化が叫ばれて久しいが、経年劣化した橋梁の補修補強に関して進歩した技術を新設橋梁の設計に適用して、設計供用期間100年の橋梁を建設することとした。
さらに、本示方書では2016年熊本地震による被災を受けて、活断層対策・地盤変位対策の必要性を認識し、橋梁位置の調査の充実や構造的対策にまで言及している。
本稿は34個の改定点を有する新示方書(全体として9個、各編の合計で25個)の全体像を、わかりやすく説明することが目的である。紙幅の制限もあって、示方書の式や表を再掲できないので、示方書の該当条項を括弧内の数値で、式・表の番号をそのまま本文中で用いた。新示方書を手元に置いて読み進めてもらえれば、理解がより深まると思う。

2. Ⅰ共通編の概要
2.1 状況と状態、及び橋の耐荷性能
(2章2.1~2.3←示方書の節番号である)
本示方書では外力を作用と呼び、作用を永続・変動・偶発の3つに分類し、それらのいずれかの作用が支配的に橋に作用する状況を、例えば永続作用支配状況とよんでいる。作用の区分の観点は表-解2.1.1(示方書の表番号である。以下同様)にまとめられているが、設計供用期間中に発生する確率が高い地震や数回生じる程度の強風等を変動作用に区分し、設計供用期間中に発生する確率は低いが大きな強度を持つ地震動や船舶等による大規模衝突等の作用を偶発作用としている。
作用を受けて設計供用期間中に橋がおかれる状態を、荷重支持能力に関わる観点から、

 

(1)橋としての荷重支持能力が損なわれない状態
(2)部分的に荷重支持能力の低下が生じているが、橋としてあらかじめ想定する荷重支持能力の範囲である状態
に区分し、構造安全性に関わる観点から、
(3)橋としての荷重支持能力の低下が生じ進展しているものの落橋等の致命的ではない状態
の合計3つに区分している
状況と状態に対する橋の耐荷性能はマトリックス形式で表-解2.3.1にまとめられている。偶発作用が支配的な状況に対して上記(3)の状態のみを規定しているのが耐荷性能1、(2)と(3)の両方を規定しているのが耐荷性能2である。耐荷性能1はA種の橋に、耐震性能2はB種の橋に対して適用される。ここにA種、B種とは橋の重要度による区分であり(表-解2.3.2)、B種の橋の重要度の方が相対的に高い。

2.2 橋の設計状況-作用の種類と組合せ(3章)
作用の種類は死荷重から衝突荷重まで合計20種類で、前述のように、永続作用・変動作用・偶発作用に分類されている(表-解3.1.1)。
作用の組合せは全部で12種類としており、これを永続作用支配状況(①)、変動作用支配状況(②~⑩の9種類)、偶発作用支配状況(⑪と⑫の2種類)に区分している。12種類の荷重組合せで考慮する作用に対して、荷重係数(γq)と荷重組合せ係数(γq)が表-3.3.1に規定されている。荷重係数は、作用のばらつきを考慮するために定められた係数で、本示方書ではばらつきの大きさに応じて1.00、1.05、1.25の3つの値を使用している。
荷重組合せ係数は、異なる作用の同時載荷状況に応じて作用の規模を補正するものであり、本示方書では0.50、0.75、0.95、1.00の4つの値を使用している。0.50が使用されている荷重組合せは、例えば作用の組み合わせ⑨の場合の温度変化の影響と地震の影響に対してであり、これらの作用の特性値が同時に生じる確率が小さいことなどを考慮したものと考えられる。
Ⅰ編3章3.3の解説では、部分係数設計法の導入に用いられた理論、荷重組合せ係数・荷重係数の意味合い、荷重組合せの適用に当たっての留意事項、施工時の荷重組合せや部分係数などについてかなり詳しい説明がある。設計に当たっては、これらを熟読吟味して適切な運用を図らねばならない。

2.3橋の限界状態(4章)
橋梁は構造(上部・下部・上下部接合部)によって、構造は部材(床版・桁・橋脚・基礎等)によって構成されることから、これら3個の階層の限界状態を定義している(4.1~4.3)。上層において規定された性能を保証するための、下層において要求される(限界)状態が規定されている。限界界状態は1から3までで、前述の橋の状態(1)~(3)に対応している。設計では上層から限界状態を選択していき、下層において示された限界状態の組合せから、最終的に各部材の限界状態を決定する。具体的には表-Aのような組合せが提示されていると考えてよい。構造及び部材の各限界状態の力学的な解釈例は、それぞれ表-解4.2.1と4.3.1に示されている。

2.4 耐荷性能の照査(5章)
橋の耐荷性能に対する照査を規定した表-解5.1.1は、表-解2.3.1と同じ形式であるが、4章で限界状態が定義されたことにより、状況と状態に対する橋の耐荷性能が限界状態とリンクした表現となっている。この表により、橋の状態(1)、(2)、(3)がそれぞれ限界状態1、2、3を超えないことに対応することが知られる。
照査の方法は、不等号式(≦)で表された式(5.2.1)による。

左辺側は作用効果を示し、各作用特性値(Pi)に荷重係数と荷重の組合せ係数をかけ合わせて、荷重の組合せに従い算出した橋の状態を示す。右辺側は、抵抗に関わる特性値(R)に抵抗係数(φR)、調査・解析係数(ξ1)、部材・構造係数(ξ2)をかけ合わせて求めた部材の抵抗値を示し、右辺側が左辺側以上であれば照査を満足する。この式の表現形式によって本設計法は部分係数設計法と呼ばれる。ここに、特性値とは作用や材料の性質、部材等の応答の性質を最も適切に代表できるものとした指標の値のことで、部分係数を掛け合わせる前の値である。
示方書Ⅱ編以降では各部材の各限界状態に対し、抵抗側の特性値と、それに掛け合わせる3つの係数を詳細に示している。設計者はこれらの値を間違えないように適用することが肝要である。
常識的には、限界状態1~3に対して抵抗に関わる特性値がそれぞれ与えられることを期待するものであるが、本示方書では限界状態1の特性値を提示して、限界状態3も同じ特性値を用いることを許容したり、あるいは逆のことを許容したりしている。具体には本稿3章以降で述べる。

2.5 耐久性能の照査(6章)
本示方書で初めて、道路橋の耐久性能の照査が明示された。部材は、橋の設計供用期間中の更新を前提としないものと、更新を前提とするものとに分けられる。設計耐久期間は、前者が橋の設計供用期間、後者が橋の設計供用期間を超えない範囲で適切に定められる。したがって、設計者は部材ごとにどちらかを選択し、後者の部材の場合、その設計耐久期間を示すことが必要となる。一般的には上部構造・下部構造が前者、上下部接続部・その他構造が後者に属する。
設計耐久期間内における材料の機械的性質や力学的特性等の経年変化を前提としたうえで、その期間内における当該部材等の耐荷性能に影響を及ぼさないための、耐久性確保の方法が3種類示されている。
方法1:経年変化を定量的に評価した断面とする。
方法2:経年変化が当該部材等の断面に影響を及ぼさないよう、追加対策等の別途手段を講じる。
方法3:経年の影響が現れる可能性がないか、無視できるほど小さいものとする。
適切なかぶりの確保などを行うのが方法1、塗装や電気防食などを施すのが方法2、耐食性のある材料などを使用するのが方法3である。設計者はあらかじめどの方法によって当該部材の耐久性を保証するかを選択しなければならない。

3. Ⅱ鋼橋・鋼部材編
3.1 鋼部材の限界状態1と3(5.3、5.4)
13ケースの応力状態の鋼部材に対して、限界状態1と3における応力度の制限値が示されている。このうち両方の限界状態に対して応力度の制限値が示されているのは1ケースのみで、8ケースは限界状態3のみの制限値、残りの4ケースは限界状態1のみの制限値となっている。これは、これまで用いていた許容応力度の算出のために想定していた限界状態が1か3のどちらかであるかを判断し、他の限界状態はその制限値をそのまま使用することによって満足されるとの解釈からとられた措置であろう。例えば、両縁支持板の基準耐荷力曲線の特性値は図-aの実線で表され、これに部分係数をかけて破線のような照査用の耐荷力曲線を作成している。軸方向変位や面外変位に非線形性が発生したのちの挙動は明確でなく、実構造物では様々な不確実性があることも考慮し、本示方書ではこの状態を限界状態3と捉えている。この状態を超えない状態は、何ら変状が生じておらず弾性範囲内でもあることから、この状態を限界状態1と見なしても良いとしている。

今後、研究が進めば、両方の限界状態に対して制限値が提示される応力状態が増えることも予想される。この事情はⅢ編以降も同様である。

3.2 耐久性能に関する部材の設計
(6、7、8、11章)
経年的な劣化の影響として、少なくとも鋼材の腐食と疲労とを考慮しなければならない。鋼材の腐食に関する規定は7章に、鋼橋における鋼部材の疲労は8章に、コンクリート系床版の疲労は11章に規定されている。
鋼橋の代表的な防せい防食方法として、塗装・耐候性鋼材・溶融亜鉛めっき・金属溶射が挙げられており、耐候性鋼材を無塗装で使用する場合の適用地域が図-解7.1.1に示されている。さらに、防せい防食の効果を確実にするための構造的配慮が新たに規定されている(7.2)。
鋼部材の疲労設計に関しては、(1)設計計算によって算出した応力度と部材に発生する実応力との関係が明らかである場合は、応力による疲労耐久性の照査を行わなければならない(8.2)とし、(2)両者の関係が明らかでない場合には、二次応力に対する疲労耐久性が確保できるように細部構造に配慮した疲労設計を行うこととしている(8.5)
コンクリート系床版の疲労に関しては、床版の最小全厚や応力度の制限値など10項目にわたる規定(11.5)を定めており、これを満足すれば、設計耐久期間100年に対して、床版の耐久性能を満足できるとしている。

3.3 接合部(9章)
溶接継手、高力ボルト摩擦接合、高力ボルト支圧接合、高力ボルト引張接合、及びピンによる連結の限界状態1および3の規定が9.3から9.11に示されている。例えば、溶接継手の応力状態・部材別に定義された限界状態1および3は表-Bに示すようになる。限界状態1と3の違いは部材・構造係数の有無のみであり、両者に共通して降伏強度の特性値が用いられている。また、曲げモーメント及びせん断力を受ける溶接継手の照査式は限界状態1と3で同一でとなっている。

3.4 ケーブル構造(18章)
ケーブル部材がその種類によって4つに区分化(C1~C4)され(18.2.4)、それらの疲労耐久性はそれぞれ定められた応力範囲(C1が最も大きい)に対する200万回繰り返し載荷試験により確認される。
ケーブル部材の限界状態3の制限値を規定する式(18.4.1)における、調査・解析係数と部材・構造係数の積ξ1ξ2の決定に関し、以下に示す2つの指標を導入している。すなわち、
(i)衝撃を含む活荷重と、死荷重・プレストレスにより生じる応力度との比によってξ1ξ2を0.7から0.4まで変化させる。
(ⅱ)ケーブルに作用する軸方向引張応力度の最大値と最小値の差(応力振幅ΔσL)によりξ1ξ2を0.7から0.5まで変化させる。
設計に用いるξ1ξ2の値は両者のうち小さい方を選択し、これによって、区分されたケーブルの信頼性が同等に担保されるとしている。

3.5 その他の改定事項
SHBS鋼・S14Tなどの新しい材料が規定されている(1.4.2,4.1.3)。また、溶接検査の規定の明確化及び溶接継手の種類と名称の見直しが行われている(9.2,20.8)。

4. Ⅲコンクリート橋・コンクリート部材編
4.1 耐荷性能に関する部材の設計(5章)
表-解5.1.1と5.1.2にそれぞれ鉄筋コンクリート(RC)部材とプレストレストコンクリート(PC)部材の耐荷性能に関する主な照査項目一覧が示されている。表-CはRC部材の限界状態1及び3の照査方法をまとめたものである。限界状態3に対しては曲げモーメント又は軸方向力、せん断力、ねじりモーメント、及び支圧応力の全ての応答値に対して照査式が提示されているが、限界状態1に対しては限界状態3と同じとする場合もあり、限界状態3を超えないことで、限界状態1も超えないとしている。
部材・構造係数と抵抗係数を分離して定義できない場合は、両者の積に数値を与えている。
コンクリート部材一般のせん断耐力に対する評価式が見直され、せん断破壊に対する安全余裕の水準が全編を通じて統一的に確保できるようになったとされる。

4.2 耐久性能に関する部材の設計(6章)
コンクリート部材の耐久性能に関する設計は、内部鋼材の防食とコンクリート部材の疲労対策の2本立てによって行う。
内部鋼材の防食による耐久性確保のために、RC部材に対しては鉄筋の引張応力度の制限値を、PC部材に対してはコンクリートの圧縮・引張応力度の制限値を規定している(6.2)。また、鋼材の腐食を生じさせないための最小かぶりを、地域区分毎に規定した対策区分に応じて、部材の種類ごとに規定している。
コンクリート部材の耐久性は、RC部材、PC部材における各種応力度の制限値を規定することによって確保する(表-6.3.1~表-6.3.6)。例えば、表-6.3.5のPC部材のコンクリート圧縮応力度の制限値をみれば、設計基準強度80N/㎟までの高強度コンクリートの導入を図った上で、設計基準強度の約1/3に押さえている。

4.3 接合部(7章)
接合部に関しては新設の章を設けて、接合部の耐荷機構、接合部の耐久性能に関する設計、アンカーボルトによる連結の限界状態1と3の規定、双対の鉄筋をループ状に重ねた継手を用いた接合部の要求性能等について説明している。

4.4 床版の耐久性能(9.5)
RC床版及びPC床版における鉄筋の引張応力度の制限値は鉄筋の種類によらず120N/㎟とし、PC床版におけるコンクリートの引張応力度の制限値はコンクリートの強度によらず0.0N/㎟としている(9.5.1)。床版の内部鋼材の腐食に対する耐久性能は、6.2の規定に従う(9.5.2)。

4.5 その他の改定事項
PC箱桁の腹圧力(湾曲するPC鋼材の引張力による分力)の影響を低減させるための具体的な方法が規定された(10.3.1)。また、プレキャストセグメントからなる部材の設計に対して、接合部に対する要求性能が明確にされた(16章)。

5. Ⅳ下部構造編
5.1 地盤の調査と設計の基本(2.4、3章)節
少なくとも、以下に示す1)から4)に該当すると考えられる場合には、地盤変動等に対する検討に必要な情報が十分に得られるように、特に留意して調査を行わなければならない(2.4.1)。
1)軟弱地盤
2)液状化が生じる地盤
3)斜面崩壊、落石・岩盤崩壊、地すべり又は土石流の発生が考えられる地形、地質
4)活断層
熊本地震等による被災を受けて、下部構造の設置位置は、斜面崩壊等の影響を受けない箇所を選定することを標準とし、また、橋台背面アプローチ部は、橋と盛土等により形成される路面の連続性を確保できる構造としなければならない(3.1)。また、上部構造又は下部構造に求められる変位の制限値を適切に設計に反映させることとしている(3.8)。

5.2 耐荷性能及び耐久性能に関する設計
下部構造を構成するRC部材の構造細目のうち、最大・最小鉄筋量、鉄筋のかぶり、軸方向鉄筋及びせん断補強鉄筋の配置などは下部構造の特徴・特性・実績を踏まえて、Ⅳ編で規定している。また、せん断応力度の制限値も同様の理由からⅣ編で規定している(5章)。
気中にあるコンクリート部材の内部鋼材の防食は原則、Ⅲ編6.2の規定によるが、塩害を受ける地域における下部構造の最小かぶりは表-6.2.1に別途規定されており、それによれば対策区分SとⅠに対し90㎜となっていて、これはⅢ編の規定より厳しい。また、水中又は土中にある部材のうち、橋脚・橋台・フーチングのかぶりは70㎜と規定され、基礎に対してはその種類によって異なる値が規定されている(6.2)。

5.3 直接基礎の設計(9章)
永続作用及び変動作用支配状況における鉛直荷重に対する支持又は抵抗の限界状態1は、(1)粘性土地盤、砂地盤又は砂れき地盤を支持層とする場合と、(2)岩盤を支持層とする場合で異なる。
(1)の場合、基礎底面に作用する合力が基礎底面地盤の支持力の制限値を超えないことが条件である。基礎底面に作用する合力は、鉛直力、水平力、及び転倒モーメントを考慮した新しい式(9.5.3)で求めている。また、基礎底面地盤の支持力の制限値は、地盤の極限支持力の特性値の0.65倍を地盤の降伏鉛直支持力の特性値とし、これに調査・解析係数と抵抗係数とを掛け合わせて求めている(式(9.5.4))。(2)の場合、基礎底面に生じる鉛直地盤反力度が表-9.5.5に示す制限値を超えないこととしている。いずれの場合も、限界状態1を満足すれば限界状態3も超えないとみなしている。
転倒モーメントに対しては、同様に限界状態1を規定し、限界状態3も同一条件であるとしている。水平荷重に対しては逆に、限界状態3を規定し、限界状態1がそれに準じている。

5.4 杭基礎の設計(10章)
永続及び変動作用支配状況における安定の設計において、軸方向押し込み力、軸方向引き抜き力、及び水平荷重に対して限界状態1を規定し、限界状態3はそれによって満足されるとしている。
杭の軸方向押し込み力の制限値算出において、降伏支持力の推定方法が推定式によるものか、あるいは載荷試験から求めるかによって、異なる調査・解析係数を設定しており、また、抵抗係数は推定方法に加えて杭の工法の種類によって異なる値を設定している(表-10.5.1)。地盤から決まる杭の降伏支持力の特性値は、杭の極限支持力の特性値の0.65倍としている。
永続及び変動作用支配状況における杭反力、変位及び杭体の断面力の計算において、基礎本体はフーチングを剛体、杭を弾性体とし、フーチングと杭が剛結されたラーメン構造としてモデル化することとしている。また、支持杭の軸方向ばね定数の算出に新たな式(10.6.3)を規定している。

5.5 柱状体基礎の設計(11~14章)
ケーソン基礎・鋼管矢板基礎・地中連続壁基礎・深礎基礎をまとめて柱状体基礎と呼んでいるが、これらの基礎の設計計算モデルに関し、平均的な挙動を一定の精度で推定できるようにするため、変位レベル・基礎形式・諸元によらず、載荷試験結果に基づいた統一的な計算モデルが新たに規定された。

5.6 その他の改訂事項
レベル2地震動に対する部材の限界状態が、杭・ケーソン・鋼管矢板・地中連続壁の各基礎について規定されている。それによると、限界状態1は降伏変位の制限値を超えないこと、限界状態2は塑性率の制限値及び変位の制限値を超えないこと、限界状態3は限界状態1又は2を満足することとなっている。深礎基礎の限界状態1は前述の通りであるが、限界状態2については塑性化後の挙動が不確実なことから基礎の降伏に留めるようにしており、限界状態3は限界状態1を満足することとしている。直接基礎については規定がない。
橋台部ジョイントレス構造に対して、鋼桁と橋台の接合部の具体的設計方法が、新たな要求性能に対して示された(7.8.3)。橋台背面アプローチ部の構造に求められる新たな要件が規定された(7.9)。施工に関しては、杭の支持層到達を管理する規定等の充実が行われた(15.7.9)。

6. Ⅴ耐震設計編
橋の耐震設計にあたっては、想定される地震によって生じ得る津波、斜面崩壊等及び断層変位に対して、これらの影響を受けないよう架橋位置又は橋の形式の選定を行うことを標準としている(1.4)。
橋の耐震設計では、作用の組み合わせ⑨~⑪に対して、部材等の耐荷性能の照査を行うが、限界状態2(3)は本稿の表-Aに示したように、ある部材の限界状態2(3)に対して同一構造内の他の部材は限界状態1を満足しなければならないことに注意を要する(2.4)。
上下部接続部に支承部を用いる場合、その破壊を想定したとしても、下部構造が不安定とならずに上部構造を維持することができる構造形式とすることが規定され、いわゆるロッキングピアの禁止が明文化された(2.7.1)。
地震の影響を考慮する状況における部材等の各限界状態に対応する特性値又は制限値を規定した6章の規定を表形式にまとめると、表-DとEを得る。塑性化を期待する限界状態2及び3の規定は全てⅤ編にあることがわかる。
免震橋の限界状態2においては、上部構造は限界状態1、免震支承は限界状態2を満足するものとし、下部構造は限界状態1、又は限界状態1を超えるものの限界状態2を超えない範囲で、下部構造の塑性化が免震支承によるエネルギー吸収の確実性に影響を及ぼさない状態であることとしている(14.2)。これは、鉄筋コンクリート橋脚の場合は、その水平変位が式(8.4.2)により算出される水平変位の制限値の1/2を超えないこと、基礎にあってはⅣ編9~14章に規定する各基礎の限界状態1を超えないことで、達成されるとしている(14.3)。

その他に、慣性力による応答値の算出に当たっては、動的解析により算出することを標準とし(5.1)、さらに、土の液状化特性に影響を与える粒度の評価方法を見直している(7.2)。

参考文献
(1)道路橋示方書・同解説Ⅰ~Ⅴ、日本道路協会、2017.11
(2)特集道路橋示方書改定、橋梁と基礎、建設図書、2018.3、pp.15~49
(3)大塚久哲:速習信頼性理論と性能設計、大塚社会基盤総合研究所・櫂歌書房、2016.4
(4)大塚久哲:実践耐震工学、第2版、共立出版、2017.2

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