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新たな九州圏広域地方計画の取り組みについて(中間整理)
長谷川豊

キーワード:九州圏広域地方計画、ゲートウェイ九州、新しい風を西から

新たな国土形成計画(全国計画)について
新たな国土形成計画(全国計画)は、本格的な人口減少社会の到来、異次元の高齢化、巨大災害の切迫等、国土を取り巻く厳しい状況変化のなかで、我が国がこれからも経済成長を続け活力ある豊かな国として発展できるか否かの重要な岐路にさしかかっているという認識のもと、2015年から概ね10年間の国土づくりの方向性を定めるものとして、2015年8月14日に閣議決定されました。
計画の基本コンセプトは、「対流促進型国土」の形成です。
国土の基本構想として、それぞれの地域が個性を磨き、異なる個性を持つ各地域が連携することによりイノベーションの創出を促す「対流促進型国土」の形成を図ることとし、この実現のための国土構造として、生活に必要な各種機能を一定の地域にコンパクトに集約し、各地域をネットワークで結ぶ、「コンパクト+ネットワーク」の形成を進めることとしています。

広域地方計画について
国土形成計画(全国計画)は、総合的な国土の形成に関する施策の指針として、国土審議会の審査を経て、閣議決定されます。
一方、広域地方計画は、地域の実情に即した地域の将来像等を定める計画として、全国計画を基本としつつ、ブロック単位の8つの圏域毎に、広域地方計画協議会における協議を経て、国土交通大臣が決定します。
広域地方計画協議会は、国の地方支分部局、地方公共団体、経済団体等で構成され、圏域の将来像を議論し、その将来像を実現するための戦略を対等の立場で検討することと、計画策定を通じて、構成機関が圏域整備を進める上での長期的な方針、目標の共有化が図られることが、広域地方計画の大きな特徴となっています。

九州圏広域地方計画について
「九州圏広域地方計画」は、九州圏(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県の区域を一体とした区域)における国の地方支分部局、県、政令市、経済団体、市長会、町村会及び隣接する山口県、沖縄県を構成員とした九州圏広域地方計画協議会において、
・九州圏広域地方計画区域における国土の形成に関する方針
・九州圏広域地方計画区域における国土の形成に関する目標
・当該目標を達成するために一の都府県の区域を越える広域の見地から必要と認められる主要な施策に関する事項
を定めるものです。
現行の「九州圏広域地方計画」は概ね10カ年間を想定し、21世紀前半を展望しつつ、平成21年(2009)8月4日に策定され、我が国経済の発展に寄与するとともに、九州圏における都市部への人口・諸機能の集積、生活水準、生産性の向上等において一定の成果をあげました。

新たな九州圏広域地方計画の必要性
近年の九州圏においては、近接するアジア大陸の高い経済成長にともない産業等が活性化し、自動車、農林水産物の輸出や外国人観光客等が増加しています。さらに、社会資本整備の進展にともなうストック効果が発現しつつあり、人流、物流の活性化による企業立地や観光等の交流・連携が進展しています。
他方、国土を取り巻く時代の潮流及び課題として、急激な人口減少をともなう少子化や異次元の高齢化の進展、巨大災害の切迫、インフラの老朽化、ICT(情報通信技術)の劇的な進化等が挙げられます。さらに、国民のライフスタイルの多様化や地域コミュニティの弱体化、大規模自然災害等の発生による安全・安心に対する国民意識の高まり等、国民の価値観が変化しています。特に、人口減少は国土空間にも大きな影響を与えつつあり、低・未利用地や荒廃農地、空き家の増加等の問題が顕在化しています。また、人口減少に対応しつつ、九州圏の豊富な森林・海洋資源等を適切に管理し、次世代へ継承していくことが求められています。
こうした時代の潮流と課題に適切に対応していくため、現行計画を改め、長期的かつ総合的な観点から九州圏の今後の発展の基本方向を展望し、九州圏における圏域の形成に関して重点的に取り組むべき基本的な対応方針等を明らかにする新たな九州圏広域地方計画を策定するものです。

新たな九州圏広域地方計画の策定の流れ
(1)骨子のとりまとめ
平成27年2月27日にとりまとめられた骨子は、九州圏広域地方計画の計画事項「方針、目標、広域の見地から必要と認められる主要な施策(プロジェクト)」に対し、広域地方計画全体の構成を示すものとしてとりまとめられ、以後、九州圏広域地方計画を策定する上での重要な骨組みが決まりました。

近年のアジアの経済成長や国内の急激な人口減少・少子化、異次元の高齢化の進展等に適切に対応するためには、九州圏の経済や雇用の厳しい状況等を踏まえつつ、これらを乗り越え、積極的に活力ある未来を切り開いていく必要があります。
自立的発展に向けた九州圏の将来展望として「日本の成長センター・ゲートウェイ九州」を掲げた上で、次の3つを「九州圏の将来像」として、重点的に取り組むべき基本的な対応方針としました(図-1)。

(2)中間整理のとりまとめ
平成27年9月24日の九州圏広域地方計画協議会では、これまでの協議会における検討状況を文章化し、地域の皆様からご意見を頂く「市町村計画提案」の参考に供する中間整理をとりまとめました。「広域の見地から必要と認められる主要な施策」(プロジェクト)は、概要(目的・コンセプト)のみとし、「九州圏の現状と課題」や「九州圏の将来像」などは、可能な限り最終的な計画原案に近いものとして作成しました。なお、新たな九州圏広域地方計画の「将来像」と「5つの戦略」の関係図は次のとおりです(図-2)。

(3)計画原案・計画案のとりまとめ
計画原案は、「九州圏の5つの戦略」を支える12のプロジェクト骨子を文章化し、市町村からの計画提案を含め中間整理に加えた計画案の最終形です。計画原案は、パブリックコメント等を経て計画案となり、平成28年3月の大臣決定へ向けて、九州圏広域地方計画協議会の事務局である九州圏広域地方計画推進室において現在作業及び手続きをしています。

新しい風を西から
明治維新においても、九州圏は近代国家への大転換の原動力として大きな役割を果たし、常に「新しい風を西から」起こしてきました。近代に入ってからは、九州北部を中心に鉄鋼や化学等の重化学工業の集積が進み、北九州工業地帯が4大工業地帯の一角をなすなど、20世紀において日本の工業化による目覚ましい成長を支える地域として大いに発展しました。
その中で、海運の発達とともに門司や博多、長崎等がアジアの玄関口としての役割を担ってきたことから、新たな九州圏広域計画においても、アジアの成長力を引き込む、日本の成長センター「ゲートウェイ九州」として、新しい風を西から起こし、日本の経済成長に貢献することを目指します。

おわりに
九州圏の発展は、国、地方公共団体に加えて、地域住民、民間事業者、NPO(特定非営利活動法人)・ボランティア団体等の多様な主体の取組によって達成される性格のものであり、特に、社会の成熟化、価値観の多様化等に適切に対応していくためには、地域づくりに参加する多様な主体が、地域の発展方向に関する認識を共有していくことが重要です。
新たな九州圏広域地方計画は、九州圏の発展を促進するために必要な国及び地方公共団体の事業実施の基本的な方針となるとともに、民間事業者、地域住民等による主体的な地域づくりに当たっての指針となることが期待されています。
最後に、この計画をとおして、多くの皆様が連携し、九州の元気を盛り上げて頂ければ幸いです。

九州圏広域地方計画推進室のHPでも情報提供しています。
http://www.qsr.mlit.go.jp/suishin/

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