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財団法人 先端建設技術センターの設立

建設大臣官房技術調査室
技術調査官
塚 田 幸 広

1 はじめに
今日の我が国における経済社会は,都市化,国際化,情報化,高齢化等の新しい動きの中で,急速な技術革新を基盤として大きく転換しようとしている。特にエレクトロニクス,バイオテクノロジー,新素材,新エネルギーなどの先端技術分野において技術革新が進みつつあり,これらをベースとして大幅な技術レベルの向上が予想される。
これらの情勢に対応していくために,先端建設技術の開発に加えて積極的に新技術の普及を図るべく『財団法人 先端建設技術センター』が建設大臣の認可法人として平成元年4月14日に発足した。以下では,建設省における技術開発への取組み,新センターの事業概要等について紹介する。

2 建設省における技術開発への取組み
(1)建設技術開発の諸制度
建設省においては,都市化,国際化,情報化,高齢化等の情勢に対応していくとともに,行政ニーズを的確に把握し,新技術を適応させるために「建設技術開発会議」,「建設技術研究協議会」あるいは「建設技術評価委員会」等の場を通して,建設技術の研究開発体制を整備し研究開発を実施してきた。例えば,現在活用している主な建設技術開発の制度として表ー1に示すように,①共同研究制度(昭和55年創設,昭和60年改定),②建設技術評価制度(昭和53年創設),③民間開発建設技術審査・証明制度(昭和62年創設),④地方建設局共同開発(昭和61年創設),⑤技術活用パイロット事業等が挙げられる。
また,建設省における技術開発の根幹として,昭和47年度より総合技術開発プロジェクトを創設し,昭和63年度までに20課題が終了し,平成元年度は,継続8課題について研究開発を実施する。さらに,官民共同研究の推進に一貫として,官民連帯共同研究制度を昭和61年度に創設され,平成元年度は,「道路橋の免震構造システムの開発」(平成元~3年度)をはじめとして6課題について研究開発を実施する。

(2)建設事業への先端技術の活用に関する検討
一方,他の産業に比べて建設事業は技術革新の面で立ち遅れているとの指摘もあり,昭和59年4月に,建設大臣の私的諮問機関として「先端技術の活用懇談会」(総合懇談会およびニューメディア,メカトロニクス,レーザー,バイオテクノロジー,新素材,施工技術の六つの個別技術懇談会より構成)を設置し,各界の有識者に先端技術の活用をはじめとした建設分野における技術革新をテーマに幅広く意見を聴取し,そのとりまとめ結果の報告が同年12月になされた。そして意見の一部は研究開発のテーマとして,実施に移されている。例えば,「エレクトロニクス利用による建設技術高度化システムの開発(総プロ,昭和58~62年度)」,「バイオテクノロジーを活用した新排水処理システムの開発(総プロ,昭和60~平成元年度)」等がある。表ー2

(3)ニューフロンティア領域における技術開発に関する検討
従来,宇宙,海洋および地中での活動は,その広大なスペースと豊富な資源・エネルギーにもかかわらず,極限られた部分においてのみ行われてきたが,最近,内外において,各種のビッグプロジェクトが立案されるなど,ニューフロンティア開発推進の機運が急速に高まりつつある。このため,建設分野においても,ニューフロンティア開発を推進し,それにより得られる空間・施設,材料技術等を建設行政および建設事業に活用するという観点から,昭和61年9月に建設大臣の召集の「建設省ニューフロンティア懇談会」を設置し,学識経験者や産業界の専門家から,ニューフロンティア開発に関する建設省としての検討課題について,幅広い意見を聴取し,そのとりまとめ結果の報告が昭和62年5月になされた。各懇談会の内容を表ー3に示す。また,これらの報告を受けて,「海洋利用空間の創成・保全技術の開発(総プロ,昭和61年~平成2年度)」,「地下空間の利用技術の開発(総プロ,昭和62年~平成3年度)」等の研究開発が現在進められている。

3 先端建設技術の開発および活用の現状
先に述べた「先端技術の活用懇談会」報告,および「地下空間利用技術の開発(総プロ)」等から以下では建設ロボットに代表される自動化・合理化技術,新素材利用技術,地下空間利用技術の現状について略述してみる。
(1)自動化・合理化技術
建設分野における自動化・合理化技術の開発・活用は,安全性・効率性・作業環境の面から,施工の自動化を目的として昭和50年頃より開発が進められ,その後急速に様々な工種で開発件数が増加している。例えば,シールド,山岳トンネル,基礎工,土工等の工種について多く開発されており,危険作業や苛酷な作業の自動化や人の近づけない箇所での遠隔作業等安全性や作業環境改善を目的としたものが多い。その開発レベルとしては単一作業工程を機械化・ロボット化したものが多く,複合作業工程を機械化・ロボット化したものは少ない。表ー4には,それぞれ建設分野における自動化の利用例および課題についてとりまとめて示す。
なお,総プロ「エレクトロニクス利用による建設技術高度化システムの開発」(昭和58~62年度)では,最近進歩の著しいエレクトロニクスを活用した調査,設計,施工,維持保全の高度化システムおよび自動化技術等を開発するとともに,その評価手法を開発し,建設技術の高度化のガイドラインとして体系化した。この総プロの成果の一例として,建設工事情報データベースシステム,土の締固め管理システム,写真測量自動化技術などが挙げられる。

(2)新素材利用技術
建設分野において使用される素材は,道路やダム建設など材料を大量に使う建設工事の特性から鉄,コンクリート,土等の基本材料が中心であり,アモルファス合金等の新金属材料やファインセラミックス等のいわゆる新素材は,それらの材料が高価ということもあって,建設分野での利用は今後の課題である。しかし,耐久性向上や維持管理費の低減等を目的として,表ー5に示すような各種の新しい材料が利用されている。現在,総プロの一環として「建設事業への新素材・新材料利用技術の開発」(昭和63~平成4年度)を実施しており,その中で材料特性に応じた利用方法や設計法の研究,構造物の安全性や耐久性の評価手法などについて技術開発を進めている。

(3)地下空間利用技術
地下空間利用技術に関しては,現在,総合プロ「地下空間の利用技術の開発」(昭和62~平成3年度)において,大規模・大深度化そして輻輳化が進む地下空間の開発利用にあたって必要となる地盤調査技術,設計・施工技術および環境対策技術,防災技術等の開発を進めている。また,このプロジェクトの研究開発の一員として,昭和63年度には土木研究所と民間企業34社との間で共同研究が精力的に実施されており,様々な研究開発テーマについて具体的かつ総合的に取り組んでいる。
一方,民間によっても,①複断面シールド技術,②拡大シールド技術,③ライニングの現場打ち技術,④地中接合シールド技術,⑤自動化・無人化技術等シールド工法を中心として実用的技術が開発されている。表ー6には,地下開発に必要と考えられるテーマを列挙する。

4 (財)先端建設技術センターの設立
(1)新センター設立の背景
前述したように,地下等のニューフロンティア空間を新たな生産居住空間として利用する動きが活発化してきており,これらのニューフロンティア空間の国土建設には,先端建設技術の開発・普及力必要となっている。
また,建設労働者の不足などに対応した建設事業の合理化対策や維持・管理の省力化などを推進する観点からも,先端建設技術を開発することが急務となってきており,さらに,新しい材料を建設事業へ活用していくための研究も重要なテーマである。
これらの建設行政からの要請に対処するためには,特定の技術領域にとどまらず,学際的,業際的に各分野の技術者が密接に協力し,既存の技術開発組織の枠を越えて,基礎研究あるいは技術開発に取り組むことが必要である。一方,公共性の強い建設事業においては,新技術導入に起因する工事の失敗が容認されがたく,また,研究開発投資の回収に長期間を要するので,先端建設技術の導入に慎重に成らざるを得ず,それがひいては民間等における研究開発意欲を抑制する方向に作用しがちである。
このように官および民間等による先端建設技術あるいはビッグプロジェクトに対応した新技術の開発・普及を促進するためには,冒頭で紹介した建設技術開発の諸制度を十分に活用するとともに特に民間技術開発にインセンティブを与えるためには,官民あるいは民間相互の共同研究を積極的に推進し,研究開発の効率化・リスクの分散を図ることが重要となっている。
さらに,先端建設技術は実際の現場に適用していくことにより,技術の完成度が高まるとともに所期の目的を達成することから,現場でのニーズに合ったテーマを選定し,その成果を適切に評価して建設事業への普及・導入を重点的に図ることが肝要である。従って,学官の知見や民間技術の結集により,先端建設技術の開発を促進するとともに開発された新技術の現場への円滑な導入を促進していく,一貫した開発・導入体制の確率が急務である。このような背景から「財団法人 先端建設技術センター」を設立するものである。
(2)新センターの業務概要
財団法人 先端建設技術センターは,建設事業に係る先端建設技術に関する研究・開発および普及を図り,もって国土建設の推進に資することを目的として設立する法人である。
本財団では,この目的を達成するために,次の業務を行うこととしている。
(a) 国土建設に係る先端建設技術の研究開発および普及
 ① 地下空間建設技術の研究開発・普及
 ② その他,国土建設に係る先端建設技術の研究開発・普及
(b) 建設事業に係る施工の自動化・合理化技術の研究開発および普及
 ① 土工,舗装工,コンクリート工等における自動化技術の研究開発・普及
 ② プレハブ化技術等の合理化技術の研究開発・普及
 ③ 遠隔操作等の自動制御システムの研究開発・普及等
(c) 建設事業に係る材料利用技術の研究開発および普及
 ① 新素材利用技術の研究開発・普及
 ② 廃棄物の再利用技術の研究開発・普及等
(d) 前各号に関連する業務の受託
(e) 先端建設技術の開発に係る助成および融資の斡旋
(f) 先端建設技術に係る施工情報の収集および図書の刊行等
(g) 先端建設技術に係る講習会,研修等の実施
(h) その他この法人の目的を達成するために必要な事業
 ① 建設技術開発に係る共同研究体制の整備および斡旋
 ② 先端建設技術の現場適用性に関する調査研究,評価
すなわち,地下等のニューフロンティア開発関連技術,建設ロボット等の施工の合理化技術,新素材の利用技術といった先端建設技術の開発・普及を基幹として受託事業,共同研究あるいは助成事業を行うものである。
(3)財産,役員等について
「財団法人 建設技術センター」は,平成元年3月17日に学識経験者,建設関連公団,公益法人,建設業,素材会社,機械会社等の発起人からなる設立発起人会(発起人代表:山本三郎氏,建設技術開発会議議長)が開催され,その中で,趣意書,寄附行為,事業計画および収支,役員等について決定した。本財団の財産規模は約21億円であり,このうち基本財産5億(設立当初5,000万円),研究開発基金16億円設ける予定である。
本財団の理事長には山根孟氏(東京電力㈱顧問,前本州四国連絡橋公団総裁),専務理事には赤松惟央氏(前建設省中部地建局長)が就任する。

5 おわりに
本財団は,当面地下開発に関する技術開発,建設ロボット等の自動化技術について精力的に事業を進めていく予定である。

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