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薩摩川内市街部改修事業(引堤事業)
~肥薩おれんじ鉄道川内川橋梁架替~

国土交通省 九州地方整備局 川内川河川事務所 工務課 工務課長 
平岡博志
国土交通省 九州地方整備局 川内川河川事務所 工務課 専門官 
松永裕樹

キーワード:川内川、引堤事業、肥薩おれんじ鉄道

 

1.はじめに
川内川は、その源を熊本県球磨郡あさぎり町の白髪岳(標高1,417m)に発し、羽月川、隈之城川等の支川を合わせ薩摩灘へ注ぐ、熊本県、宮崎県及び鹿児島県の3県、6市4町にまたがる幹川流路延長137㎞、流域面積1,600㎢の一級河川である(図-1)。

 

 

(1)大小路地区引堤事業
川内川下流部に位置し、流域最大の人口集中地区である薩摩川内市街部では、流下能力確保のために平成5年度から薩摩川内市街部改修事業(引堤事業L=約4.5㎞)を行っている。平成23年度から着手した大小路地区引堤事業(右岸L=約1.5㎞)では、主に以下3つの工事を実施し、一部区間の旧堤撤去・高水敷整備を残して概ね完成しており、早期工事完了を目指して、鋭意事業実施中である。
【主な工事内容】(図-2、3)
・流下能力確保のための引堤、旧堤撤去、高水敷整備
・引堤に伴う都市計画道路の付替
・引堤に伴う肥薩おれんじ鉄道川内川橋梁(トラス橋)の架替・補強

 

 

 

(2)肥薩おれんじ鉄道川内川橋梁
肥薩おれんじ鉄道川内川橋梁は川内・上川内区間に位置する肥薩おれんじ鉄道線として、大正11年に建設された。橋梁は、デックガーダー3連、鋼下路トラス4連で構成されている。今回の工事は、デックガーダーの3桁間を鋼下路トラスの1桁間とする(桁を架け替える)工事(図-4、5)であり、営業中路線の工事であること、九州新幹線橋梁の近接工事であること、建設後90年以上の古い橋梁の補強を行って耐震性能を確保する工事であることを踏まえ、事業主体の川内川河川事務所、施工者の肥薩おれんじ鉄道㈱・九州旅客鉄道㈱、施工業者等の九鉄工業㈱[土木工事・軌道工事]・瀧上工業㈱[桁製作]・JR九州コンサルタンツ㈱[設計]・JR九州電気システム㈱[電力・信通工事]が一体となって、設計段階から施工段階まで様々な工夫を凝らし、令和元年度に工事を完了した。

 

 

 

2.既設P3橋脚の補強設計
(1)既設P3橋脚
デックガーダーからトラスへ架け替えることにより、既設P3橋脚への荷重が増加することから、性能照査を行った。新設トラスの想定反力を加味し、ケーソン基礎の長期支持性能を確認したところ、鉛直支持については既設ケーソン基礎のみで担保できる性能を有していることが確認できた。
一方、しゅん功図の設計条件では、設計水平震度をKh=0.16としていたため、躯体の曲げ体力の不足が懸念された。新設のトラス桁の反力を加味して非線形解析を行ったところ、L1地震動及びL2地震動に対して所要の安全度が確保されていない結果となった(表-1)。

 

 

躯体の曲げ補強が必要となるが、躯体の震度が上がり、基礎に対する負担も大きくなることから、地震時の基礎の性能不足が想定された。

 

(2)P3橋脚の補強設計
躯体の曲げ補強は、河川断面阻害を抑えること、及び補強後の基礎への負担を抑える必要があることから、コンクリート巻立て補強にて最小限の巻立て厚(250㎜)とした。基礎の補強は、荷重規模、河川内の橋脚であることを考慮して、鋼管を既設ケーソン外周に打設し、鋼管矢板基礎のような井筒状の基礎となるように補強することとした。また、既設橋脚に作用する力を鋼管杭に伝達させる必要があるため、鋼管杭と既設橋脚を増しフーチングで接続した。一体化を図るため、鋼管杭にはスタッドジベル、既設橋脚にはあと施工アンカーを配置し、応力伝達を円滑にするため、橋脚基部にハンチを設け、橋脚躯体と鋼管杭をH形鋼で接続する構造とした(図-6)。

 

 

これらの補強設計に基づいたP3橋脚補強後の照査結果(線路直角方向)を表-2に示す。長期支持性能、短期支持性能及び安全性(地震時以外)については、既設ケーソンで性能を満足している。
地震時(復旧性)に関しては、ケーソン基礎では所要の安全度を確保できないため、鋼管杭で負担させることとした。

 

 

3.橋脚の施工
(1)鋼管杭の打設
施工箇所の現場条件は、肥薩おれんじ鉄道を運行しながらの施工となること、既設桁直下となること、新幹線橋脚に対して近接施工となることなどから施工期間が限られる制約があった。また、支持層はN>50の砂礫層であることから、鋼管杭先端にビットを設置し、圧入機を用いて回転圧入させる工法(ジャイロプレス工法)を用いることとした。施工は1日1本程度のペースで行われ、桁下空頭h=5.6mと制約があるなか、桁直下の鋼管杭においては、継施工(部材分割長4m)を行った(図-7)。

 

 

(2)増しフーチングの施工
既設橋脚コンクリートと新設増しコンクリートの一体化を図るために、既設側の接着面には、サンドブラストによる目あらしを行った。アンカー本数が多く、削孔したままの箇所が多ければ多いほど、既設P3橋脚の安全性を損なう恐れがあることから、削孔後直ぐにアンカー挿入を行うよう配慮した(図-8)。

 

 

(3)施工期間確保の取組み
施工箇所は河川内での施工となることから、原則非出水期施工となる。これまでの協議により、既設桁から新設トラス桁への架設は肥薩おれんじ鉄道線を利用している貨物列車の運休を伴うことから、桁の横取り架設日が令和2年1月1日となった。現場条件が厳しい中、増しフーチング施工、橋脚躯体のRC巻立、横取り設備の設置等を行う必要があったため、「直轄河川における出水期間中の工事施工の取扱い」に基づき、施工時の退避などの防災計画、河川への影響を最小限にとどめる施工方法を計画し、一部出水期間中の施工を行うことで、施工期間確保の取組みを図った(図-9)。

 

 

(4)計測管理
九州新幹線、肥薩おれんじ鉄道線に対して、近接施工となることから、鋼管杭打設の影響を考慮し、九州新幹線及び肥薩おれんじ鉄道線橋脚にターゲットを設置し、トータルステーションでリアルタイム計測を行い挙動を監視した。警戒値、工事中止値、限界値の3段階の管理値を設定し、変位が管理値に達した時には、関係者の携帯電話へ警報が発信される仕組みを構築し、鉄道運行へ影響がでないよう施工を行った(図-10)。

 

 

4.おわりに
今回、鉄道の安全性を損なうことなく既設橋脚の補強を完了し、令和2年1月1日には、約150人の一般見学者が見守る中、トラス桁への架替を完了することができた(図-11、12)。

 

 

 

本架替工事は、使用性、安全性に対しては、ケーソン基礎で支持性能もたせ、地震時に対しては井筒状の鋼管基礎で支持性能をもたせる希少な事例であり、桁下直下の鋼管杭の継施工、出水期中の安全確保に努めた防災計画・施工方法、新幹線橋梁近接施工に伴う計測管理等、設計段階から施工段階まで様々な工夫を凝らし、令和元年度に工事を無事完了することができた。
本工事完了により、平成5年度からスタートした薩摩川内市街部改修事業における川内川右岸の引堤事業は完成に向けて大きく前進することができた。これらは、川内川河川事務所、肥薩おれんじ鉄道㈱、九州旅客鉄道㈱、九鉄工業㈱、瀧上工業㈱、JR九州コンサルタンツ㈱、JR九州電気システム㈱及び下請企業のご努力・ご尽力の賜物であり、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

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