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老朽樋管の補強施工について

建設省延岡工事事務所
 延岡出張所長
吉 岡 寿 治

1 はじめに
直轄河川五ケ瀬川の改修事業は,昭和26年より着手し,主に築堤,護岸,水門,排水施設等が継続施工され,以来40年が経過し現在に至っている。本工事は,工作物関連応急対策工事の一環として老朽樋管補強計画に基づき排水樋管の強度および維持の安定向上を図るため,本川五ケ瀬川左岸の4K800付近に設置されている岡富第1樋管に補強施工したものである。
工事場所の堤防は兼用道路で国道218号が走行し市道の分岐点に当る延岡市街地の主要路線を形成しており,工事のための交通規制が非常に難しい地区である。このような土地利用の制約された条件の中で補強工事の為の掘削を不要とし,短期間で安全な凾渠内修復が出来るインシチュフォーム工法(管更生工法)が採用されたものである。
この樋管の施工年次は定かでないが,戦前(1945年)と聞いており本体構造は,これを証す如く割石積の矩形断面である。この補強工法で矩形断面を施工するのは初めてだということなので施工の過程と今後問題であろうと思われる事についてまとめてみた。

2 施工樋管の構造概要
既設樋管の内空断面形状は,縦1.5m×横1.0mであり,構造は側壁部が割石積,頂版部はこれに切り石が載せられ,底版部は敷き石で施工されている。昭和55年2月に川表側の門柱および操作台の改築が行われているが,本体の側壁石積は中央付近が押出され,底版敷き石は両端が沈下し,すきまが発生して堤体内へ漏水している状況である。

3 工法の決定経緯
堤体の埋設凾渠の老朽化対策は,通常は現在位置若しくは上下流へ開削施工するものであるが,兼用道路の日当りの交通量が1万台以上あり迂回道路等の交通処理が非常に難しい事,また,周辺の住宅密集地への影響を考えるとき非開削工法が必要条件となった。
そこで,施工性および安全性の評定の高い「インシチュフォーム工法」により,既設樋管本体の中に外荷重に対して十分な強度をもつ新しいパイプを作り,樋管の補強と合せて排水機能の向上,更に,道路陥没対策を行う施工方法が採用された。

4 インシチュフォーム工法の概要
4-1 施工方法
堤防を開削しないで埋設されている樋管本体の川表若しくは川裏の開口部を使用してインシチュフォームライナーに注水しながら水圧を利用して挿入し,完了後にこの中の水を加熱してライナーを硬化させて抜水することにより矩形断面の中に継目なしの新しい小判型断面を作るものである。

4-2 特 長
(1) 熱硬化性樹脂を温水で硬化させるため,インシチュフォームライナーの優れた品質が確保できる。
(2) 硬化前のインシチュフォームライナーは,柔軟性であるので色々の管渠形状に対応できる。
 円形,箱形,楕円形の形状の外,管渠のズレや曲りの状態にかかわらず施工が可能である。
(3) 管渠の寸法が違っても同時に施工ができ,1本のパイプとなり目地,クラックからの漏水,浸入水および木竹根の浸入によるすきまの発生も防ぐことができる。
(4) 外力ならびに既設管の損傷状況に応じて,1. 5mm毎にライナー厚が製作できるので材料に無駄がない。
(5) 酸,アルカリ性の耐蝕性を有し,耐磨耗性も高い。
(6) 管渠内に施工継目のないパイプが完成し,内面は滑らか(粗度係数n=0.010)な為,施工に伴う断面の減少は補う事ができ排水能力を向上させることが出来る。
4-3 規格
(1)インシチュフォームライナー厚
3mm~42mm(この間1.5mm毎)
(2)適用可能口径
0.1m~3m
(3)インシチュフォームライナーの規格値
引張り強さ    2kgf/mm2
引張り弾性率  224kgf/mm2
曲げ強さ     2kgf/mm2
曲げ弾性率   224kgf/mm2
圧縮強度     6kgf/mm2
長期曲げ弾性率 112kgf/mm2
4-4 施工性
(1) 開削する改築工事に比べ,工期が短縮でき経済的である。また,現場での施工時間が短いために施工日の選定が容易である。
(2) 開削改築工事に比べ,迂回路の設定や施工の必要がなく,交通混雑が回避できる。
 また,騒音,振動もなく周辺住家への影響が起こらずに経済的である。
(3) 施工継目がないので,漏水および浸入水の防止ができる。
(4)樹脂の使用をふやすことにより,余剰樹脂が本体内壁のくぼみや亀裂,欠落部に圧入され,既設管の補強になる。
(5) インシチュフォームライナーの内面粗度係数が小さいため,排水機能の低下が防止できる。
(6) インシチュフォームライナーとガラス繊維を合成することにより,ライナー強度を向上させることができる。

5 補強施工について
5-1 ライナー厚の決定
ライナー厚の構造計算は,ケーソン工法計算式を用いて以下の設計条件により決定した。
(1)設計条件(小判型断面)

・荷重条件
ケース1=水圧のみ
W1=0.00386kgf/mm2

ケース2=水圧+土圧
W2=0.00629kgf/mm2

・INSライナーの物性値
曲げ強度 σ=2.0kgf/mm2
長期曲げ強度 σ=1.0kgf/mm2
        (安全率N=2)
曲げ弾性率E=224kgf/mm2
長期曲げ弾性率E=112kgf/mm2(50年後クリープ値)
安全率 N=2
・ケーソン工法計算式

・施エライナー厚さ
以上の計算および検討から,INSライナーの厚さは43.8mmとするが,施工性SDR(D/t)≧30以上を考慮すれば,GFRP(ガラス繊維に樹脂を含浸したFRP)との合成厚とする。
計算からの全体厚さ  45.0mm
(製造規格から43.8<45.0)
  INSライナーの厚さ 30.0mm
  GFRPの厚さ    8.0 mm
  合成厚さ       38.0 mm
GFRPの厚さの計算
INSライナーの厚さ対GFRPの厚さは,2:1の曲げ強度比率とする。
(この曲げ弾性係数比については,平成3年3月の九州大学工学部土木工学科と飯田建設株式会社による報告書では,n=2.37の実測値比率が記されている。)

 よって,管内修復材の構成は図ー4に示すようになる。
なお,矩形断面にライナー厚30mmおよびガラス繊維を合成した施工は.国内で初めての工事である。

・水圧と土圧の外荷重に対する安全率のチエック

5-2 排水能力の検討
応急対策工事であるが施工に伴う排水量の変化について,等流計算により有効断面を0.9H水深として概略検討を行った。
その結果,次表参照の値をもって,排水能力上は問題なしと判定した。

5-3 反転挿入施工
ライナーバックの施工に当り,既設凾渠の底版両端に塩ビ管で堤内排水孔を設け,更に,ライナーバックが容易に挿入でき硬化後の断面内の出来ばえを考えて,側壁および底版にモルタルを打設仕上げした。

5-4 硬化工

ライナーバック硬化後に,この補強管渠を所定位置で切断し,頂版部分と排水孔にモルタルの圧送打設を行い補強施工を完成させた。

5-5 出来形管理
補強管渠の川表側および川裏側のカット断面について,ライナー厚を検測した結果,下記の管理値となり出来形厚にバラツキが見られた。

補強管の厚さは構造上重要な事項であり,原因を追求調査したが明確な要因はさがす事は出来なかった。
だが,切断点が設計施工延長の外側(供試体採取の関係上)であり本体部と若干の条件が異ったことや,施工断面が小判型で頂版部が空洞であった為内水圧が均一に作用しなかったものと推定された。また,モルタル仕上げの部分的な小さな施工誤差,ライナーバックの直径に対しての厚みが大きい事による内側円周方向の伸び率に,設計との僅差が生じたものと考えられた。
以上のことから,当現場では,施工ライナー厚さが設計値を下回る位置はガラス繊維と合成施工点である事から,構造の安全性について次の検討を行った。
 設計計算ライナー厚さ   t=43.8mm
 出来形管理最小ライナー厚tc=27.5mm
 ガラス繊維の施工厚さ  tG=8.0mm
 ライナー厚さとガラス繊維の厚さの強度比率 =2:1
 t=43.8mm>tc=27.5+8.0×2=43.5mm
この結果,設計値に対する施工技術の許容値であり構造に影響を与えるおそれがないと判断した。
因に,平成3年3月の報告書によるn=2.37を採用するとtc=27.5+8.0×2.37≒46.5mmとなり設計値を確保できていたことになる。

5-6 品質管理
供試体は,ライナーバックの中に反転挿入時にモールドを投入して本体バックの硬化条件と同じで硬化させたものにより行った。
モールド寸法は幅23.5cm×長さ46.5cm×高さ10cmで,試験方法はJIS K 6911による物理試験を福岡県福岡工業試験場で実施した。

6 施工後の追跡調査
観測は,内空断面の変位および吐口本体部よりの採取供試体で強度試験を行うものとした。
(1)期 間 
平成3年1月から15年間
(2)変位測定および目視調査
回 数 6ケ月毎
方 法 縦横2m間隔とクラック,収縮等の点検と外観
(3)供試体によるJIS試験
回 数  完成時,5年後,10年後,15年後
試験項目  引張り強度と引張り弾性率
     曲げ強度と曲げ弾性率
     圧縮強度の5項目
(4)クリープ試験
管吐口部より切断採取したサンプルに荷重を掛けて長期間にわたるクリープテストを継続中である。

因みに第2回目の6ケ月観測では変位,クラック等はなし。

7 今後の問題
(1)補強材料(ライナーバック)の単価について
国内での需要が少なく受注生産形式で,その都度イギリスから輸入している現状にあり輸入経費等で高い価格となっている。また,樹脂含浸加工においても短いものは割高になる。従って,ライナーバックの国内生産体制を確立することが望まれる。
(2)矩形および正方形断面の施工対応について
イ ライナー厚さが大きくなることと,ライナー厚の設計指針,基準が確立されていない。
ロ ガラス繊維と合成することで強度向上が図られるが,合成管としての構造計算が確立されていない。
しかし,矩形断面については,「インシチュフォーム工法による異形管の解析および設計法に関する研究」が,九州大学工学部土木工学科と飯田建設株式会社により,平成3年3月に報告書が出版されている。
ハ 矩形断面への小判型断面施工の場合のライナーバックの半円部の径率(内側円周方向の伸び率)を,今回95%で設定したが,ライナー厚さ大きく熱硬化時の膨張率が小さい結果となり.望ましい経率は97%程度と考えられた。
ニ 今後は,河川の応急対策工事のみでなく,改修施工後長期化したもの並びに設置後の堤内地の土地利用の高度変化等に対応するための樋門,樋管の再改修工事にも適用が予測されるので,断面決定計算法の確立が必要と考えられる。
ホ インシチュフォーム工法による内空断面およびライナー厚の出来形管理基準がなく制定が必要である。

8 おわりに
九州地建管内の直轄河川改修工事も着手以来,半世紀~1世紀の中におおかた該当すると聞いている。
この河川の流域内に人口,資産が集積している現状から,今後,河川管理施設の再改築については,これまでのようなスタイルでの施工は色々な制約を受ける事が予想される。従って,当工法の基準化が達成されれば今後の河川管理に積極的な活用が考えられ,大きな期待が寄せられている。

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