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佐賀県における今後の社会資本整備のあり方
佐賀県 県土づくり本部長 井山聡
1.はじめに

佐賀県では、人口減少・少子高齢化や生活圏の拡散、県民の価値観の多様化やライフスタイルの変化、環境問題の顕在化、自治体の厳しい財政状況などの社会経済情勢の変化を背景として、都市部においては、中心市街地の空洞化、公共交通の利用者減少、都市の拡大による社会資本の維持管理費の増大などの現象が発生しています。
また、農村部においては、若年世代の県外流出や高齢化の進展により、地域コミュニティが弱体化し、農林水産業の維持や自然・生態系・景観の保全、地域固有の伝統文化の継承などが困難となりつつあります。
さらに、平成23年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し、それに加え原子力災害が引き起こされるなど、県民の安全・安心に対する意識が高まっています。
こうした社会の大きな転換期である今日において、これまで策定されている、国、県、市町等の将来計画を踏まえ、今日まで培ってきた社会資本ストックを維持・活用しながら、活力ある産業の振興、暮らしやすい生活環境を実現するとともに、佐賀県らしい自然・生態系・景観を保全するため、今後の社会資本整備について以下のように取り組んでいきます。

2.これからの社会資本整備の進め方

昨今の緊縮財政の下、限られた経営資源を活用し着実に成果に繋げていくために、①「選択と集中」、②「ハードからソフト」、③「管理と活用」、④「連携と協働」、⑤「施策の総合化」から成る「5つの戦略」を掲げて、まさに戦略的に各施策を展開することとしています。

3.「5つの戦略」の具体的な取組み

例えば、防災基盤の整備について述べると、
  1. 「選択と集中」として、近年被災の河川、人口・資産が集中する都市部の河川及び避難所や要援護施設が在る危険区域などの重点的整備
  2. 「ハードからソフト」として、関係機関と連携したハザードマップ作成支援とともに河川水位情報や土砂災害警戒情報の周知
  3. 「管理と活用」として、河川管理施設の健全度評価と長寿命化
  4. 「連携と協働」として、住民と連携した河川の管理
  5. 「施策の統合化」として、市町と連携しての、地域防災力の向上
等に取り組むこととしています。
これら5つの戦略による取組みによって、流域全体の総合的な治水対策や土砂災害防止対策を推進し、安全で安心できる社会基盤整備を図っていきます。

4.「管理と活用」の新たな取組み「つくる」から「つかう、いかす」へ

「5つの戦略」の中でも、「管理と活用」については、今後増大する社会資本の維持管理費を削減するために、特に力を入れていくポイントと考えています。
今までの社会資本を「つくる」取組みから、今ある施設を上手に「つかう」取組みへと重点を移していくために、橋梁や河川管理施設の長寿命化の取組みをすすめ、今後の維持管理に係るトータルコストの削減と予算の平準化を進めています。
さらに、既存の社会資本ストックを上手に「いかす」取組みとして、別の用途への「転用」や機能を高める「高度化・複合化」、状況の変化に伴う「除却」「間引き」などの取組みについても積極的に進めていくこととしています。
例えば、「高度化・複合化」の取組みとして、本県に多数存在するため池について貯水容量の一部を大雨時における洪水の一時貯留容量として「いかす」取組み(図-1)の可能性調査や、「除却」の取組みとして、利用頻度の低下した立体横断施設について施設の撤去による周辺道路環境のUD(ユニバーサルデザイン)化を進めるための仕組みづくりなどがあります。

5.震災を踏まえた取組み

東日本大震災をきっかけに、道路や河川などの社会資本の持つ生活基盤としての重要性があらためて認識されており、その着実な整備の推進が行政の大きな責務であると考えています。
そのため今後、今回の地震に対する検証が行われ、耐震化や防災対策など新たな基準が逐次示されてくると考えられますので、その基準に応じた社会資本の整備に対し責任を持って取り組んでいく所存です。
また、ハードを補完するソフト面では、県内市町ともこれまで以上に連携を取りながら、災害対応の仕組み、体制づくりを進めていきたいと考えています。
その上で、社会資本を維持していく全体的なシステムの中で、特に災害時における初動対応を担う地域の建設業者の皆様に対しては、常に活力を持って経営にあたっていただくために支援していく仕組みが必要となるでしょう。

6.おわりに

国や県の財政状況、大震災の影響等から、当面は公共事業予算の拡大は難しい面がありますが、今後とも必要な予算を確保したうえで、建設から維持管理・活用に方向転換を図りつつ「佐賀県の地域力を活かした質の高い暮らしの実現」を目指して、社会資本整備を進めて参りたいと考えています。

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