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九州技報 第41号 第3回「技報賞」懸賞論文佳作

「私たちの生活を支える、国土づくりの在り方について」

九州共立大学 工学部 土木工学科4年 納冨剛
私が生まれるはるか前の昭和20年代頃から、日本の土木における重要性が非常に高くなった。その背景として、第二次世界大戦からの復興や、他国に追いつき追い越そうという高度経済成長期があったからだ。このような社会を背景に、産業教育振興法という法律が制定され、多くの職業学校が開校された。この職業学校の中には、将来の技術者を育てるといった目的で工業学校が含まれ、この卒業生の多くが戦後から高度経済成長期、さらには現在までの日本において大いに活躍し、現在の整備された住み良い日本に成長させていったことは言うまでもないだろう。この工業学校の中にはもちろん、現在私が学んでいる土木学科も含まれている。私は高校生の頃から現在まで土木を学んでおり、土木を学ぶ楽しさや社会における重要性は分かっているつもりだ。将来はこの学んだことを後進に指導できればと思い、高校土木の教員を目指し、必要な資質と学力の向上のため日々勉学に励んでいる。
土木は現在までの日本の社会基盤とされ、技術は世界最先端だろう。そして土木を担ってきた多くの人材は土木学科を卒業してきた。だがここ数年多くの土木学科のある高校、さらには大学の志願者数の減少により、これらの学校の土木学科は募集停止や他学科との合併が進んでいる。学校では現在、志願者の増加対策として、充実したオープンキャンパスや体験入学、ホームページ等を通じて土木を学んでもらうために興味関心を引きつけさせるのと同時に、学科名称を変更することによって今までのどこか堅苦しいイメージからの脱却を図り、生徒を募集する学校も最近では珍しくない。しかし現状はどうだろうか。高校や大学の土木学科は募集停止や他学科との合併が進んでいる現状を見れば分かるように、学校側の思惑通りにいっているとは到底思えない。この背景として挙げられるのは、国の税金対策による公共工事の削減で、企業側は経営に困難を極め、新卒者を雇う金銭的余裕がなく、土木学科で学んでも就職先がなかなかみつからないこと。また就職しても、今後果たして土木で一生暮らしていけるのかといった、先行き不透明な職業であること。加え談合や汚職などの暗い話がでてくれば、志願者減少という結果は、当然といえば当然の話しだ。これでは土木を勉強したいと思う生徒のさらなる減少につながり結果、技術者が育たない大きな要因となる。私が考える国土づくりとは、世界最先端であろう土木技術を有効に活用するために、魅力ある土木学科を造り、志願者数を増やし多くの技術者を養成することだ。この現状で、すべての人の生活を支え、暮らしやすい国土づくりを今以上に発展させることができるのだろうかと考えるようになった。
そこで今回私は、魅力ある土木学科を造って志願者数を増やし、日本のみならず、世界を視野に入れたグローバルな国土づくりができる技術者を養成していくために、次の2つの方策について述べていきたいと思う。1つ目は、高校・大学での土木一貫教育について考えていきたい。一昔前は私立校で、中高一貫教育という言葉をよく耳にしていたが、最近では公立校でも中高一貫教育が行われている。しかしこれは普通科に限定されており、工業科の一貫教育というケースは見当たらない。この高校・大学での土木一貫教育では、高校3年間で土木の基礎知識を学ぶほか、実験や体験を通じて土木の楽しさや重要性を認識させ、大学4年間で基礎を生かした応用を学び、多様な実験による発見やインターンシップによる体験、そして海外でも仕事ができるよう英語教育の充実を図り、世界に通用する技術者を養成していくといったような一貫教育を考える。これにより高校では、大学と連携した授業を行うことができるほか、大学入試を考えることなく実験や体験活動に励むことが可能になる。大学では、毎年安定して入学生を迎え入れられ、高校と連携して授業を行ってきた利点を生かし、スムーズな授業を展開していけるはずだ。これによって魅力ある土木学科となり、志願者数を増やし、技術者を養成していけるのではないかと思う。2つ目は、学校と企業の連携による就職である。土木を勉強すれば確実に、土木技術者として仕事ができる就職状況になっていくのが理想だ。私の考えとして企業側は、希望する企業の特性を見極めた上で、学生は研究の題目を決めて取り組み、研究成果と人物像から企業は採用を決めてもよいのではないかと思う。少なくとも私の友人達の学生に、研究について質問してみたところ、将来にむけての研究ではなく、卒業要件単位を満たすためだけに研究を行っているとの意見がほとんどであり、研究をしても将来的な意味合いはあまりないと思っている学生がほとんどだった。これで本当によいのだろうか。研究の成果が企業の方針と一致し、就職できるのなら、これほど両者にとって嬉しい採用はないはずだ.このようになれば、学生の研究意欲も増すと同時に、学校は企業に優秀な人材を送り出せ、企業は学生と学校を信頼して採用することができると思う。土木を志し学んできた学生が、土木会社へ確実に就職できるよう学校と企業が連携し合えば、志願者も増加していくのではないだろうか。
以上に述べてきた2つの方策だが、もちろん課題も多くあると思う。土木一貫教育では将来の進路選択を受験する中学生の間に決めてしまうことになってしまう。早い段階から土木に絞って学ばせれば、よい土木技術者は育成できるだろうが、中学生の時点で決定した進路が本当に正しかった進路ではなかったと感じる学生は必ず出てくるはずだ。私は高校・大学と土木学科で学んできた訳だが、これまでのクラスメートの中には土木を学んだ上で、自分には土木は向いていないと考える友人が数人いた。土木に限らず、学んでみてから自分に合っているのかどうか分かることは多い。土木の一貫教育とはいえ、そのような学生には柔軟に対応していかなければならないと思う。学校と企業の連携による採用も、企業側に採用できるだけの余裕があればよいのだが、現状はそのような企業ばかりではない。また連携はどのような方法で築いていくのかなど課題は多いが、クリアしていくためにはやはり、国を挙げた努力が必要になってくるだろう。
私の父は土木技術者であり、その父の仕事をしている姿を身近で見て、私は土木を志した。さらに講義や実験を通じて、高校の教諭や大学の教授から土木に必要な解析法はもちろんのこと、歴史や心構え、やりがいなど多くのことを学んでいくうち、将来は指導者になりたいと思うようになった。でも実際は、教員採用試験における高校土木の採用はほとんどなくなってきている。学生の土木学科に対する志願者の低さが最大の要因だろう。しかし土木を学びたいという学生が減少し、技術者が育たなくなるようであれば、日本のさらなる発展はないだろうし、災害時の対策などの面ではまだまだ土木の必要性は高いと感じる。さらに世界ではまだ、整備されていない地域がたくさんある。私たちの生活を支える国土づくりの在り方とは、世界最先端であろう日本の土木技術の有効活用であり、さらには世界を見据えたグローバルな国土づくりができる技術者を養成していくために、魅力ある土木学科を造り、志願者数を増やしていくための方策を考えることなのではないだろうか。私もまだ日々勉強中の身であり、実現できる可能性というのは計ることができず、具体的にどのように実現させていけばよいのか分からない面も多々あるが、これらの方策が実現できた場合、国土づくりに何らかのよい影響を与えてくれればと思っている。

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