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沖縄都市モノレール延長事業ついて
~首里駅からてだこ浦西駅までの延長区間開業~

沖縄県 土木建築部 都市計画・モノレール課 
都市モノレール室 主幹 
安里嗣也

キーワード:沖縄都市モノレール、延長区間、開業

1.はじめに
沖縄都市モノレール「ゆいレール」は令和元年10月1日に延長区間の開業を迎えた。
モノレール延長区間の開業については、当初、昭和56年の沖縄県総合交通体系基本計画において、「モノレールの計画は那覇空港~西原入口間にわたり整備を図る」との施策に基づくものである。
その中で、段階的施工として既存区間を第1期施工(那覇空港~首里駅)、また周辺の土地区画整理事業の進捗を勘案し、延長区間を第2期施工(首里駅~西原入口)として整備を行うこととなり、今回の開業は第2期施工に位置し、当初策定した基本計画が38年の歳月を経て実現するものである。
また、延長事業については、中北部を含めた広域的な公共交通ネットワークの構築を図り、自動車から公共交通機関への転換を促し、那覇都市圏の渋滞緩和に寄与することが期待されている。
延長区間の開業を迎えるにあたり、昨年の年頭から運転士が新たな区間の運行に慣れるための習熟運転を行ってきたところであり、沿線の皆様においては、目の前を走るモノレールの車両に胸を躍らせていたことだと思われる。
開業に向けては、開業式典を開業2日前の9月29日(日)に浦添市てだこホールにおいて開催するとともに、新たに設置された4駅(石嶺駅、経塚駅、浦添前田駅、てだこ浦西駅)においては、周辺自治会による「駅開き」も行われ、関係者や沿道地域一丸となり喜びを共有した。
ここで、首里駅からてだこ浦西駅までの沿線をたどりながら各駅舎を紹介する。

2.各駅の整備状況
2-1 石嶺駅

まずはじめに首里駅を出発し、すぐに左手方向の那覇市道石嶺線へ進むと、那覇消防首里出張所あたりまで若干の登りとなっており、そこが既存区間を含めて標高が一番高い箇所となる。レール部の標高が約130.3mとなることから、既存区間の一番低い箇所が國場川を横断する箇所で約10mであるため、ゆいレールの高低差は約120mあるということになる。
石嶺線を進むと約2分程度で石嶺駅に到着する。
石嶺駅周辺は元々約2,000人の農村であったが、県内外の多くの人が移り住み、現在は約23,000人が住む住宅地となっており、まちの発展に対し互いに助け合い、支え合っている地域ということで、地域の支え合いをイメージした、多くの部材で屋根を支える立体トラス工法を採用することで、地域性を表現するとともに、駅が軽やかなイメージとなるようなデザインとした。
石嶺駅のプラットホームは、大きなガラススクリーンを設けることで明るく開放的な空間となっており、西側は透明ガラスで交通広場のにぎわいや首里の街並み、空の広がりなどの眺望を確保し、東側は全面スリガラスで近接建築物のプライベートに配慮した。さらに、自由通路の屋根は膜屋根とし、昼は優しい光が差し込み、夜は照明により屋根面がほのかに光る優しい灯りとなるような工夫を凝らした。
また、石嶺駅の両側には交通結節機能を確保するため、バスやタクシー、一般車の乗降場等を含む交通広場の整備を行い、西側交通広場には周辺地域から駅へのアクセス性向上を図るペデストリアンデッキを設置することにより、駅舎と交通広場が一体となった施設となっている。

2-2経塚駅

石嶺駅を通過後、那覇市道石嶺線をしばらく進むと浦添市内へ入り、右手方向の浦添市道国際センター線へ進むと経塚駅が見えてくる。
経塚駅は、組踊りの始祖である玉城朝薫の墓を始め、経塚公園、公園墓地と緑に囲まれた駅であることから、周辺の緑に調和するようなデザインとした。屋根を支えるフレームは木々をイメージしたデザイン、エレベーター棟は木目調のコンクリートを採用し、ホーム階は大きな開口部を設けることで周辺の緑や東シナ海を眺望できるように配慮した。
さらに、コンコース階の窓は、うらそえ織りを模した内装となっており、浦添市の新しい工芸を取り入れている。また、経塚駅は北側に交通広場が整備され、交通結節機能が確保されている。
経塚駅を通過するとすぐに前田トンネル上部に浦添市指定史跡となっている玉城朝薫の墓があり、この史跡を東側に迂回しながら浦添市道国際センター線を進み、県道浦添西原線へと右折していくと浦添前田駅が見えてくる。

2-3浦添前田駅

浦添前田駅は浦添グスクに近接していることから、浦添の玄関口として、乗客へのおもてなしをテーマとし、浦添グスクをイメージさせるデザインとした。
屋根及び外壁は城壁の石積みを想起させる菱目(ひしめ)、妻側の破風板(はふいた)は石門に見立て、ホーム階南側のガラス面はグスクの稜線のイメージを施すことで、浦添の地域性を表現し、北側は全面すりガラスで近接建築物のプライバシーに配慮した。浦添前田駅においても、コンコース階の窓には、紅型の祖型ともいわれている浦添型を模した内装となっており、浦添市の歴史を感じることができる。
また、浦添市は浦添グスクの世界遺産登録に向けて、高度地区及び景観地区の指定など、浦添前田駅周辺の景観まちづくりを進めており、デザイン決定にあたっては、駅舎と周辺街並みが調和するよう配慮した。
駅舎南側に位置する交通広場やモノレール直下の道路においても、景観重要公共施設に指定されていることから、歴史文化特性に配慮した良好な道路景観づくりを進めており、浦添グスクの石垣をイメージした擁壁や石張り舗装、シンボルツリーを含めた緑地等が整備された。
浦添前田駅をあとにすると、次はゆいレール初の地下区間へと進んでいく。浦添前田駅からてだこ浦西駅に向かっての地形は斜面となっており、地盤高低差が約40mあることから、モノレールの縦断勾配の基準を満たすため、浦添市消防本部からてだこ浦西駅付近までを地下構造物としており、構造形式はU型擁壁、トンネル(NATM区間)ボックスカルバート区間があり、地下区間の距離は約600mとなっている。

地下区間を抜けるとてだこ浦西駅の手前に分岐器があり、形式は片渡り分岐器を2つ組み合わせた両渡り分岐器となる。両渡りとは、上り線、下り線双方からの分岐が可能となっていることで、既存区間の那覇空港駅付近の交差渡り分岐器よりも機能向上が図られている。

2-4てだこ浦西駅

分岐器を通過すると最終駅のてだこ浦西駅となる。てだこ浦西駅では、沖縄自動車道と県道浦添西原線、モノレールの交通結節点となっており、近隣では土地区画整理事業も実施されることから、モノレールと新しいまちづくりを先導する景観を表現するよう、ランドマーク性やゲート性の高いデザインとした。
沖縄都市モノレール唯一の地上駅の特性を生かした大屋根形状とし、ホーム階はガラスや有孔折板を多用することで、ホーム内に自然光が差し込む明るく開放的な空間を創出するとともに駅舎下部の外壁には、沖縄の強い日差しや通り雨を避けられるようアマハジ(民家の軒四方に差し出たひさし)をイメージした回廊を設け、花ブロックや琉球石灰岩などの地域素材を用いることで、沖縄らしさを演出している。
また、延長4駅には周辺地域をモチーフにしたアートガラスを掲示しており、てだこ浦西駅ではコンコース階の天井に、てぃーだ(太陽)をテーマにした大きな作品が設置され、地域の特徴やモノレールが表現されている。
駅前には交通広場が整備されるとともに、992台を収容できるパークアンドライド駐車場も整備しており、てだこ浦西駅で自動車からモノレールに乗り換えることで、中北部への移動時間も短縮され利用客の利便性向上が図られている。
首里駅からてだこ浦西駅まで沿線をたどりながら延長区間を紹介してきたが、延長4駅(石嶺駅、経塚駅、浦添前田駅、てだこ浦西駅)においては、駅を中心としたまちづくりが進められており、特にてだこ浦西駅周辺では、大型複合施設やホテル等の建設が計画されている。

このように沖縄都市モノレール「ゆいレール」は公共交通としてだけではなく、周辺のまちづくりに大きなインパクトを与え、地域の活性化や観光振興など沖縄県の発展の中核を担うものだと確信している。

3.輸送力増強
近年は乗客数の増加が顕著で8年連続で過去最高を更新し、令和元年度の平均乗客数は日当たり55,766人となっている。
一方、イベントや朝の利用ピーク時には最大乗車率が160%を超えることもあり、車両内の混雑や一部の駅で乗り残しが生じている。
さらに、令和2年3月には那覇空港第二滑走路の運用も開始され、今後も乗客数の増加が見込まれることから、21世紀ビジョンに掲げる世界に誇れる観光リゾート地を目指すに当たり喫緊の課題となっている。
新型コロナウイルス感染症の影響によりしばらくの間は乗客数の減少が予測されるものの、新型コロナウイルス感染症の沈静化に応じ需要の回復が期待されることから、今年度より車両を2両編成から3両編成に増備する沖縄都市モノレール輸送力増強事業に着手している。

4.おわりに
令和元年10月1日に、ゆいレールは浦添市まで延長開業し、浦添市周辺に住む多くの皆さまの利用が可能となった。
また令和6年度には沖縄自動車道の幸地インターの完成も控えており、中北部から同自動車道を経由し、現在よりスムーズにてだこ浦西駅に隣接したパークアンドライド駐車場に車両を駐車し、モノレールで那覇市中心市街地へ行くことが可能となる。
このように、多くの可能性を秘めたゆいレールの延長開業である。
今後とも多くの皆さまに愛され、県民の足として利用していただけるよう、沖縄県、那覇市、浦添市及びモノレール株式会社は一丸となって、定時制、安全性の向上に向け取り組んで行くこととしており、県民及び観光客の皆さまのより一層のご利用をお願いしたい。

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