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【特集】平成29年7月九州北部豪雨災害について

九州地方整備局の対応について

国土交通省 九州地方整備局
企画部 防災課長
中 村 星 剛

キーワード:危機管理、大規模災害、TEC-FORCE

1.はじめに
「今年は渇水傾向だが平成24 年の時もそうだったよなぁ」と誰かが言った。その通りになった。
今年の梅雨入り後、しばらくの間は大きな雨もなく、概ね落ち着いた日々を送っていた。防災課の職員の立場としては、このまま梅雨が明けてくれればいいなという思いがあった。そんな中、「今年は渇水傾向だが、平成24 年の九州北部豪雨の時もそうだったなぁ」と誰かが言った。当時の災害状況とその後の苦労(災害復旧、激特事業等)を知っている私は、「そんな事になったら洒落にならないから冗談はやめておけよ」と言ったやりとりがあった。数日後、平成29 年九州北部豪雨が発生し、甚大な被害が発生した。

2.気象概況
強い雨域が下がってきているが、停滞しなければ大丈夫と考えていた。
7 月5 日、朝鮮半島南部から中国地方にのびた梅雨前線がゆっくり南下し、前線に向かって温かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となった。朝方に島根県で大雨特別警報が発令され、雨域の動きを整備局の災害対策室の雨量レーダーで監視していたが、その雨域が段々と南下し始め、13 時頃から朝倉周辺に線状降水帯が停滞し始めた。これまで渇水気味であったことから「このまま停滞しても短時間であれば大丈夫だろう」と考えていた。しかし、その後も雨域は停滞したまま(図- 1)、朝倉市・東峰村・日田市、周辺市町村に記録的短時間大雨情報が発表され、筑後川河川事務所長と各首長とのホットライン、情報収集など、慌ただしく動き始めた。

九州で初!大雨特別警報発令。
5 日昼頃から夜遅くにかけて福岡県筑後地方から大分県西部にのびる線状降水帯。猛烈な雨が降り続き、九州で初めて「大雨特別警報」が福岡県・大分県に発表された。
福岡県朝倉市や大分県日田市等で最大24 時間降水量の値が観測史上1 位の値を更新するなど、これまでの観測記録を更新する大雨となった(朝倉観測所545㎜、北小路公民館観測所826㎜ほか)(図- 2)。

3.発災直後の対応
九州地方整備局災害対策本部は、7 月5 日16時50 分に非常体制を発令。
5 日16 時50 分、一級河川遠賀川支川彦山川(福岡県田川郡添田町)において、洪水が堤防を越水したことから、九州地方整備局災害対策本部は「非常体制」を発令し、災害対応にあたった。一級河川「筑後川」「山国川」次々と水位が上昇した。「やばい!」そう思った。
しかし被害が大きかったのは国の管理河川ではなく、筑後川に注ぐ支川、県の管理河川であった。堤防の決壊、家屋の浸水、道路の通行止め、次々と被害の情報が飛び込んできた。

リエゾン派遣、東峰村役場までの道路が途絶
被害の状況を把握、市町村を支援するため、朝倉市・東峰村・日田市等にリエゾン(情報収集班)を派遣した。7 月5 日夕刻よりリエゾン派遣を開始したが、東峰村においては整備局班・福岡国道班・大分河川国道班の3 班が別々のルートから村役場を目指したが、役場までの道路が被災しており、途中で一晩を過ごし、役場に到着したのは道路啓開が進んだ翌日の事であった。今回の豪雨災害では最大10 箇所(県市町村)、日最大20 名、延べ492 名を派遣し、被害情報の収集、市町村支援を行った(写真- 1)。

被災状況がつかめない。ヘリを飛ばせ。
県市町村に派遣したリエゾンからの情報によると被害が甚大で、道路が寸断、被害の状況・全容がつかめない状況との報告。
九州地方整備局は、被害の全容を把握・調査するため、翌朝より防災ヘリコプター「はるかぜ号」を調査に向かわせた。ヘリからの被害映像は、各首長、県、マスコミ等へもリアルタイムで配信した(写真- 2、3、4、5)。

甚大な被害だ!
死者40 名、行方不明者2 名、重傷者7 名、軽傷者9 名、全壊家屋約300 棟、半壊家屋約1,100 棟、床上浸水約160 棟、床下浸水約1,300 棟、甚大な被害を被った。

全国から九州にTEC-FORCEが集結
九州地方整備局は、一刻も早い被災状況の把握と災害復旧の技術的支援等を行うため、7 月6 日より朝倉市や東峰村、日田市などにTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)を派遣した。
H29.7.7(金)には全国から九州へTEC-FORCE隊が集結し調査・支援等にあたった(写真- 6)。

ドローンを飛ばせ
天候が悪くヘリでの調査が出来ない箇所は、ドローンを飛ばして、被害の全容・詳細調査等を実施した(写真- 7)。

道路啓開~孤立解消、支援ルートを確保
福岡県が管理する、東峰村役場へ繋がる国道211 号、朝倉市~東峰村をつなぐ県道52 号を福岡県からの要請により、県と国で分担しながら、道路崩壊箇所の道路啓開を実施し、孤立の解消、支援ルートの確保を行った(写真- 8、9)

河川災害復旧~二次被害防止に向けた災害復旧
被害を受けた筑後川水系花月川等の国管理箇所(4 ヶ所)では、一刻も早い復旧・二次災害防止を図るため、昼夜を問わず緊急的な復旧工事を進め、7 月14 日までに全ての箇所の緊急復旧工事を完了させた。

災害対策機械を派遣
九州地方整備局が保有する衛星通信車、ポンプ車、照明車、路面清掃車、散水車を被災地域へ派遣し、自治体の支援を行った(写真- 11、
12)。

海域での流木処理
H29.7.6( 木) ~豪雨に伴い有明海・周防灘に流木等が流出し、船舶航行の安全性を損なう恐れがあることから、九州地方整備局が所有している海洋環境整備船による流木等の回収作業を実施した。
H29.7.23(日)には、漁業者(福岡有明海漁業協同組合連合会)及び(一社)埋立浚渫協会と連携し、流木を1 日で約890 本回収した(写真- 13)。

4.改正河川法に基づく権限代行による支援
九州地方整備局は、改正河川法に基づく権限代行制度を全国で初めて適用し、福岡県に代わって赤谷川などで緊急的な河道の確保、土砂や流木の撤去などを実施している(写真- 14、15)

5.『九州北部豪雨災害対策推進室』の設置
九州北部豪雨からの早期復旧・復興に向け事業が本格化していく中、事業を迅速に、強力に推進していくため、平成29 年10 月1 日、筑後川河川事務所に『九州北部豪雨災害対策推進室』を設置し、花月川の災害復旧事業、赤谷川の災害復旧事業(権限代行)《赤谷川・大山川・乙石川》、赤谷川流域直轄砂防災害関連緊急事業を実施している。

6.ホームページやSNS を活用した情報発信
H29.7.6(木)~九州地方整備局では、ホームページやSNS(Facebook、LINE@、YouTube)を積極的に活用して、被災情報や復旧情報などを発信している(写真- 16)。

7.さいごに
今回の北部九州豪雨災害でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りすると共に、被災を受けられ方のお見舞いを申し上げ、被災地域の一刻も早い復旧・復興に向け対応・支援を続けてまいりますので、多くの皆様方からの支援もお願いできればと思っている。

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