一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
新技術フル活用に向けて
~「評価試行方式」の運用の開始~

国土交通省 九州地方整備局
 企画部 施工企画課長
山 下  尚

国土交通省 九州地方整備局
 企画部 施工企画課 技官
松 川  浩

1.はじめに
公共事業に関連した民間等による技術の開発は,公共工事の品質の確保や安全で安心な暮らしの実現,良好な環境づくり,快適で生活コストの安い暮らしの実現等に向けて,大きな役割を担っている。民間等の分野における技術開発が促進され,優れた技術を産み出すためには,有用な新技術を公共工事等に積極的かつ円滑に導入していくことが重要である。
このような状況に鑑み,国土交通省では平成13年度より「公共工事等における技術活用システム」
(以下,「技術活用システム」という。)を策定し,公共工事における新技術活用促進への取り組みを行っている。
しかし,現状のシステムでは民間等が有用な新技術を開発しても実際の活用に結びつかない「新技術の開発と活用の間の‘‘谷”」の存在が大きな問題となっている。
このため,「新技術の開発と活用の間の“谷”」を解消することを目的として,従来の「技術活用システム」を新技術の開発から現場での試行までを迅速かつ確実につなげる「評価試行方式」およびニーズを提示して優れた技術を公募・選定する「テーマ設定技術募集方式」に再編・強化した。本稿では,これら新システムの概要,および九州地方整備局における取り組み状況について紹介する。

2.新技術活用の現状
図ー1は九州地方整備局管内における新技術の活用件数を示している。九州技術事務所にて行っている発注担当事務所への新技術活用支援などの効果もあり,活用件数は年々増加しており,平成16年度は551件の活用実績があった。

しかしながら,図ー2に示すように,平成13年度から運用している新技術情報提供システム(以下,「NETIS」という。)の登録技術約4,000件のうち全国的にみても約25%の技術しか活用されていないのが実態であり,残りの約75%の技術は活用されておらず“谷”の中に埋もれてしまっているのが現状である。

このような状況の要因として,
・活用実績がないため技術の有効性やコスト効果が分からない。
・今までのNETISに掲載されている安全性や耐久性等の諸条件は開発者側の推奨値であり,第三者による検証がされていないものが多い。
以上のように新技術の活用にあたって種々の問題があるため,新技術の活用促進に対する障害となっているのが現状である。

3.新しい「技術活用システム」の概要
このような現状を打開すべく,既存システムを民間からの新技術情報の収集,事前評価,試行,事後評価,さらには有用な新技術の公共工事等への活用を一貫して行う新たなシステムに再編・強化し,今年度より運用を開始した。なお,平成17年度はシステムの試行期間と位置づけ,試行に伴う問題点の整理を行ったうえで,平成18年度より本格運用を行う予定である。
新しい「技術活用システム」は次の2つの方式により構成される。(図ー3及び図ー4参照)

① 評価試行方式
比較的小規模,もしくは部分的適用が可能な技術および瑕疵発生時の修復・代替が比較的容易な技術に適用される方式で,各整備局等に産学官の有識者により構成される「新技術活用評価委員会」(以下,「評価委員会」という。)を設置し,新たに開発された新材料・新工法などの新技術について,技術情報の収集,事前評価,試行計画の策定,試行実施,事後評価並びに活用後の評価の審議を行う。その結果をNETISに掲載し,公共工事等での活用につなげる方式である。

② テーマ設定技術募集方式
本省にて設置する「新技術活用評価委員会」において,具体的な現場ニーズに基づいた募集テーマ等を設定し,民間等の技術提案を募集し,評価・選定を行う方式であり,下記の2つの方法がある。
〇フィールド提供
高度な技術で瑕疵発生時の修復・代替が困難な新技術や,行政・政策ニーズ等から早急に試行する必要がある新技術を対象とし,具体的な現場ニーズに基づいた募集テーマを設定し,画期性が高く,特に優れた技術についてはフィールドを提供する。
〇推奨技術選定
革新的な技術開発を促進するため,画期的な技術の発掘を行う。テーマを設定し,広く技術の公募を行い優れた技術の推奨を行う。

また,「評価試行方式」「テーマ設定技術募集方式」への変更に伴い,NETISの改良作業も現在行っている。

4.「評価試行方式」の概要
次に,「評価試行方式」の概要について紹介する。図ー5に「評価試行方式」の運用フローを示す。

評価試行方式は,まず開発者が申請を行う際,希望に応じて2つのタイプから選択することができる。
Aタイプ:事前評価・試行・事後評価を行い,技術情報及び評価結果をNETISに登録するタイプ。
Bタイプ:旧「技術活用システム」の技術指定システムと同様のタイプで,技術情報等をNETISに登録し,活用があった後に簡易評価を行うタイプ。(事前評価・試行・事後評価を行わないタイプ。)

ここで,評価試行方式(Aタイプ)について少し詳細に説明する。
①新技術に係る情報の収集(受付審査)
各地方整備局において民間開発業者からの申請の受付,及び技術的な内容の収集・審査を行い,技術情報をNETISに一旦登録する。
九州地整では技術事務所が窓口となり,上記業務を行っている。

②事前評価
受付審査での資料および申請者へのヒアリング等にて技術内容の確認,安全性・耐久性等の技術的事項及び経済性について詳細な調査を行い,事前評価審議案を作成する。なお,技術的事項及び経済性については(独)土木研究所等の研究機関にも参加して頂き,より高度な技術判断ができることとしている。
各地方整備局等にそれぞれ設筐された「評価委員会」において,申請のあった技術に対して,事前評価審議を行う。なお,各地整等によりバラバラな評価とならないよう,対象技術の工種により評価を担当する地整を決めたうえで統一的な評価を行うこととしている。
評価結果は,申請者に通知を行い,NETISに追加掲載され一般に公表される。

③現場での試行
事前評価により試行の実施が妥当と判断された技術について,試行工事の抽出・選定を行い,試行工事の規模・現地条件等の実施概要および施工時の調査項目・調査方法等の概要について定めた試行計画を策定する。
試行計画に基づき試行工事を実施し,技術的事項および経済性等の事項に関し,申請者が中心となって事後評価に必要な調査を行う。

④事後評価
事前評価結果と試行調査結果の比較検証を行い,事後評価結果(案)を作成する。結果(案)を基に評価委員会において事後評価結果の審議を行う。
事後評価結果は,申請者に通知され,NETISに追加登録する。

⑤情報の提供及び公共工事等への活用
情報収集した新技術の概要,事前評価及び事後評価の結果等の情報をNETISに公表し,有用な新技術の普及促進を進める。
また,公共工事の発注機関はNETISの利用等により公共工事等への有用な新技術の活用促進を図る。
以上のように再編されたことにより,表ー1に示すような点での改善がみられるようになることから,発注者側は活用がしやすくなり,開発者側は開発意欲の向上につながることにより,新技術活用の“谷”の解消が期待できると考えている。

表ー1 システム再編に伴う改善点

5.九州地方整備局での評価試行方式運用状況
つぎに,九州地方整備局における評価試行方式の取り組みについて報告する。
九州地方整備局では,表ー2に示す産学官の有識者21名を委員として「九州地方整備局新技術活用評価委員会」を設置するとともに,申請技術の評価を行っている。

◇第1回評価委員会
平成17年6月30日に開催した第1回評価委員会においては,下記5技術について事前評価の審議が行われた。
・MITS工法(CMSシステム)
・ダブルミキシングエ法
・超軟弱土固化処理工法マッドミキサーM-Ⅰ型
・超軟弱土固化処理工法マッドミキサーM-Ⅱ型
・法面緑化工『土壌菌工法』

審議予定時間を大幅にオーバーするほどの活発な審議が行われた結果,以下の事項について検討の必要があるとの結論に達し,上記5技術については継続審議となった。
①今回の5技術はすでに活用実績が多く,これらの実績から事後評価が行えるのではないか。
②新技術の試行から卒業(有用性が確認され活用が多くなった技術)までの道筋を明確にする必要があるのではないか。
①については技術の成熟度に応じて事後評価までのさらなる迅速化が図れ,②については開発者における開発意識の向上(技術の改良促進)や発注者における新技術の活用判断の円滑化(新技術の活用促進)につながる重要な取り組みであるため,現在九州地方整備局等で改善案を作成し,見直しを行っている。

◇第2回評価委員会
平成17年10月20日に行われた第2回評価委員会では,まず第1回委員会で指摘された2つの問題点に対する現段階での制度設計の見直し状況(案)の説明を行った。概要は下記のとおりである。
① 活用実績の多い技術について
図ー5のAタイプのフローに新たに試行工事の代わりに過去の活用実績から蓄積された技術資料等による事後評価を行うフロー案の提案を行っている。
② 新技術の卒業までの道筋について
新技術の成熟度に応じ,各フェーズ(区分)とステップアップルールを設けるとともに,従来技術に比べ特に優れた技術については,公共工事等で積極的に活用できる仕組みづくりなどの検討を行っている。
次に前回継続審議となった5技術に下記3技術を加え,計8技術について事前評価審議が行われた。
・縁石分割可能型側溝ブロック
・ミラクルソル水質浄化システム
・エコアップ緑化工法
審議の結果,継続審議となっていた5技術については,全て活用実績の多い技術であるため,新たな運用ルールに基づき過去に蓄積された技術資料等による事後評価に移行することが承認された。
縁石分割可能型側溝ブロック,およびエコアップ緑化工法については,安全性,耐久性等に問題なしと判断され,試行工事に移行することとなった。
ミラクルソル水質浄化システムについては,申請者から提出された技術資料に対し,さらなる精査が必要であるとの結論に達し,継続審議となった。

6.九州地方整備局の独自の取り組み
九州地方整備局ではこれまで述べた他に下記のような新技術活用促進に向けた独自の取り組みを行っている。
九州地方整備局では,九州技術事務所を「新技術活用支援事務所」と位置付け,開発業者および新技術活用事務所等に対し下記の各種支援を行っている。
①技術相談・受付登録
開発業者等に対しての窓口業務。
②技術活用支援
活用現場に適合する技術の選定や,施工歩掛・管理基準等の策定支援。
③調査評価支援
活用された新技術について活用効果調査

資料の作成支援(机上での支援の他,活用事務所を巡回しての説明会等も行っている。)

また,活用事務所においては,本局および九州技術事務所と連携して新技術活用の促進をはかることを目的に事務所内に新技術担当事務局を設置し,事務所で活用された新技術の活用効果とりまとめや,新技術の活用促進に向けた各種活動を行っている。さらに,平成16年度から「モデル事務所」を設置し,九州技術事務所が行っている活用支援を試行的に事務所で行う取り組みも行っており,その結果モデル事務所の活用実績件数が大幅な増加を見せている。
また,地方自治体に対しては,新技術の活用に関わる全国の動向や活用事例などの情報交換・共有により連携の強化を進めていくこととしている。

7.おわりに
公共事業が量から質へと転換される中,コスト,品質,安全,環境など公共工事を進めるうえで多くの課題解決が重要となる。
九州地方整備局では,民間の方々が一生懸命に開発した優れた技術を,現場で積極的に活用促進を図るとともに,活用された技術に対し確実に評価することにより,さらなる技術開発が図られ,優れた新技術が社会資本整備に活かされる環境を目指し,その取り組みを高めていきたいと考えている。

追記:
新しい技術活用システム紹介,及び申請方法等については,NETISホームページにも記載しておりますので参照して下さい。

NETISホームページアドレス:
http://www.kangi.ktr.mlit.go.jp/kangi/index.html

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧