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文広あやひろ排水機場における2軸式ガスタービンエンジンについて

建設省筑後川工事事務所
 機械課長
稲 富 公 男

建設省筑後川工事事務所機械課
 建設技官
今 林 美 代

1 はじめに
平成5年度に完成した文広排水機場においてポンプ設備の完全無水化を採用することにより,補助設備の簡素化,およびそれに付随して操作性の向上を達成することができた。完全無水化技術の中で,特に維持管理の簡素化の重要な要素となったガスタービンエンジンについて従来の駆動方式と比較しながらその特徴と今後の課題をまとめ報告する。

2 文広排水機場の概要
本機場の設備概要は次のとおりである。

また,排水機場全景,主原動機(2軸式ガスタービン)をそれぞれ写真ー1,写真ー2に示す。

3 従来機場の故障発生状況と発生率低減方策
従来機場の排水運転時の故障状況について,昭和58年~平成2年の8年間における九州地方建設局管内63機場の故障発生内訳を表ー1に示す。

機器ごとの故障発生確率を見ると補助機器設備が最も多く39%を占め,主原動機,操作制御設備と続いており,故障低減による信頼性の確保には補助機器を簡素化し,また機器数の減少に伴い操作制御も簡素化することが重要なポイントであると判断できる。
また,補助機器設備では,42%程度を冷却系統で占めており,その故障発生率低減にはその簡素化の必要性が大きいと判断される。従来の冷却水系統の一例を図ー2に示すが,冷却水槽と各機器を結ぶ配管の複雑さと,使用される補助機器の多さが注目される。

4 ガスタービンの採用について
4-1 ガスタービンとディーゼル機関の比較
ガスタービンは,基本的な構成要素として圧縮機,燃焼器,タービンの3つを持ち,デイーゼルエンジン等の往復運動機関が吸入→圧縮→加熱→膨脹→排気という各工程を同一気筒内で間欠的に行うのに対し,ガスタービンの場合にはそれぞれ別個に独立したこれらの構成要素で流れ作業的に同時に作動していくのが大きな特徴である。
これらの作動原理より,運動が単純であるガスタービンエンジンの方が故障率が低いと考えられる(図ー3)。
それぞれのエンジンの比較(表ー2)より騒音・振動・機場範囲の点から,民家として隣接している文広排水機場はガスタービンエンジンが適していることがわかる。

4-2 ガスタービンの1軸式と2軸式の比較
ガスタービンには図ー4に示すように1軸式,2軸式の2つの形式がある。1軸式は一本の主軸に,圧縮機,タービン,燃焼器があり,出力軸はほぼ一定速度で回転する。1軸式は構造が簡単であるが,図ー5に示すように低速度では出力軸トルクがポンプ所要トルクより小さく,ポンプを加速することができないので,無負荷始動を行う必要がある。
これに対し2軸式は,圧縮機を駆動するタービンと,出力を取り出すタービンとが別の軸系として設けられている。一般に,圧縮機・燃焼器のある側をガス発生機部,他を出力タービン部と称する。
2軸式は,図ー5に示すように低速度での出力軸トルクが大きいことからポンプの負荷始動が可能であり,また出カタービン部がガス発生機部と別軸であるので,回転制御も可能である。
前記のように,2軸式ガスタービンは低速時のトルクが大きいため1軸式のようにクラッチ機構を設けることなくポンプを始動することが可能である。
エンジン単体の管理運転はクラッチ機構を必要とするが,本機場は管理運転操作方法に管理運転モードを設け低水位(小水量)における実負荷管理運転(1号は吐出弁制御・2号は回転数制御)を可能にしている。

4-3 ガスタービンの制御
ガスタービンの運転制御は,マイコンによる自動制御装置(以下TAC)にて行っている。TACの機能は主に①始動・運転・停止機能②監視・警報機能であり,その他にTAC自身の自己診断や,機関に装備する補助の動作チェックを行う機能も有している。なお,TACが万一制御不能となった場合には,TACとは全く別系統のリレーシーケンスで制御する手動起動装置に切替えて,制御(始動・停止)を行うことが可能であり,制御回路の二重化により信頼性の向上を図っている。

5 まとめ
本機場において,ガスタービンの他に
① 主ポンプ:セラミック軸受・無給水軸封装置の採用
② 減速機:空冷式減速機の採用
を行っており,ガスタービンを合わせて完全無水化機場を完成させることが出来た。
特に,主原動機をデイーゼルエンジンからガスタービンに変更することにより
① 冷却水系統が不要となった。
② 始動系補助機器設備(冷却水弁・始動弁等)が省略されることにより制御設備が省略される。
③ 主原動機自身の始動性が向上する。
等により,前記従来機場の問題点が解決され,排水機場全体の信頼性を向上させることが可能になった。
また,都市の近郊に設置することや操作人の老齢化を考えると,操作性の面からも,ガスタービンは有用であると考えられる。

6 今後の課題
① 排水ポンプ駆動用として,ガスタービンの実績はまだ少ないので,多機場の実績も考慮して,メンテナンス間隔を決めていく必要がある。
② ガスタービンのサイレンサーは排気量により大型のものを使用せざるを得ないが,機場空間部の有効利用等よりコンパクトな設計の工夫が必要である。

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