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情報化技術を活用した建設施工の効率化について

国土交通省 九州地方整備局 企画部
 施工企画課 主任
小 畑 淳 一 郎

1.情報化施工
情報化施工とは,情報技術を建設施工に適用するもので,施工に関する情報の効率的な利用により,施工の効率化・安全性・品質の向上・省力化・環境保全に関する施工の合理化を図る生産システムである。フィールドデータをリアルタイムに計測し,施工管理の省力化や施工の自動化による生産性の向上などの効果が期待される。

2.マスタープラン
国土交通省は,2001年3月に情報化施工促進検討委員会(委員長:大林成行元東京理科大教授)がまとめた「情報化施工のビジョン:ー21世紀の建設現場を支える情報化施工ー」の提言をふまえて情報化施工を推進してきた。
また,CALS/ECを初めとした公共事業の情報化が進められ,建設施工分野の情報化は著しい速度で進展した。そのため,業界団体,個々の民間企業でも積極的な取り組みが開始された。
国土交通省総合政策局建設施工企画課は「情報化施工のビジョン」提言以降の建設施工を取り巻く環境の変化や他の情報化技術の開発動向をふまえ,直轄事業における取り組みの方向性や取り組み内容をまとめた「情報化施工マスタープラン」を作成し,平成17年度国土交通省国土技術研究会「情報技術を活用した建設施工の効率化に関する研究」の中で発表した。

2.1 基本方針・目標
情報化施工の取り組みを推進するための基本方針および目標は以下のとおりである。

2.2 情報化施工の取り組みの方向性
基本方針および目標をふまえ,情報化施工の取組みの方向性は以下のとおりである。

3.TS・GPSを用いた締固め情報化施工管理
3.1 盛土の締固め管理の現状
近年,TSシステム※1やGPSシステム※2により自動かつリアルタイムに計測された締固め機械の走行軌跡と3次元座標情報から転圧回数を確実に把握する盛土締固め管理システムが各種開発されている。
このシステムは,仕上がり層厚管理や出来形管理が簡便に行えるという利点がある。
盛土締固め管理システムによる締固め回数管理手法を導入することにより,作業効率や品質の確保およびCALS/ECへの対応による電子納品や検査書類の合理化などが期待される。

3.2 盛土の締固め情報化施工管理の概要
(1)システムの概要
TS・GPSを用いた締固め回数管理は,以下の手順で行われる。
①締固め作業開始に先立ち,設計データ等から施工範囲の電子情報(3次元座標データ)を締固め機械の位置情報としてパソコンに入力する。
②事前に行う試験施工により,施工する現場における規定の締固め度が得られる締固め回数を決定する。
③施工エリアを平面上にメッシュ分割する。そのメッシュを締固め作業時の管理ブロックとする。
④TS・GPSで計測した締固め機械の走行軌跡データを車載モニタ上の管理ブロック図にあてはめて表示する。締固め機械が管理ブロックを通過するとその管理ブロックを締固めたものと判定し,同時に締固め回数が色分けされて車載モニタに表示される。
⑤締固め範囲全体にわたって盛土品質確保に必要な締固め回数を確認・管理することができ作業終了後管理帳票を作成することができる。

(2)システム導入のねらい
TS・GPSを盛土施工に導入するねらいは次のとおりである。
①盛土全面の締固め状況が把握できることによる品質の確保 (品質の均一化)
②締固め管理がリアルタイムに把握出来ることによる工程短縮 (次層盛土の迅速な施工)
③品質管理業務の簡素化・効率化  (品質管理のための計測時間短縮)
④締固め回数の管理による過転圧の防止 (施工の効率化・品質の均一化)
⑤オペレータの省技能化 (熟練度に左右されない品質確保)
⑥品質管理業務の電子化  (施工管理の合理化)

(3)締固め回数管理の手法
図ー3に示すように従来の砂置換法やRI計法の品質管理値は「締固め度」である。

情報化施工管理では,車載モニタに表示される施工管理プロックが,締固め規定回数だけ締固めたことを示す色になるまで締固める「締固め回数管理」となる。

4.九州地方整備局の取り組み
4.1 盛土の締固め管理システム実証実験
平成16年度,九州地方整備局では,盛土の締固め管理に適用される「TS・GPSを用いた盛土の締固め情報化施工管理要領(案)」を道路土工に導入し実証実験を行った。
具体的には,敷均し,締固め作業において,締固め重機と敷均し重機に搭載されたパソコンの間で交換されるデータを標準化し,施工範囲・土質・各層ごとの施工管理を行った。
また,実証実験終了後にシステムの利用状況・使い勝手などのアンケート調査を実施した。

(1)実験現場の概要
工事名:大分57号田原園地区改良工事
工事場所:大分県大野郡千歳村大字前田~大野町大字後田地区
実験期間:平成16年11月13日~平成16年12月11日
施工数量:1200m2(道路延長100m)
使用重機:ブルドーザ(湿地式)19t×2台

4.2 実験システムの概要
1)機器の設置
実証実験に導入した情報化システムのイメージを図ー5に示す。

システムは大きく以下の3つで構成されており,無線通信ならびにインターネットを利用して情報交換される。

① 重機車載システム
敷均し・締固め重機に搭載したGPSにより連続的に取得した重機位置をオペレータ支援闇報に変換・提供するシステム(写真ー2,写真ー3)

② 現場管理システム
設計情報や施工情報を施工指示や品質管理帳票に変換・作成するシステム

③ データサーバ
①・②システムで扱われる情報を一元的に保存・管理

なお,データサーバで保存される品質管理帳票は,インターネットを通じて,発注者請負者が有するパソコンで適宜閲覧可能である。

4.3 施工手順
(1)設計データの作成
契約時に受け渡された図面,仕様書および測量結果を3次元化し,設計データを作成・登録する。
これにより従来,施工範囲を示すのに必要であった丁張り(トンボ)が不要となる。
(2)管理データの作成
盛土材の敷均しと締固め作業を的確に実施するために必要な基礎データを入力出来るように作業範囲をパソコン処理の滞らない最も細かい25cmメッシュの管理ブロックにあらかじめ分割する。
(3)施工計画データの設定,登録
盛土作業に必要な施工エリア・土質,転厚回数などのデータを施工前日までに設定・登録し,施工指示データとして使用する。
(4)施工・施工管理
層厚を30cmとして敷均し工と締固め工を交互に行う。
敷均しは,ダンプトラックにより搬入された土質毎の施工範囲と,目標とする敷均し高さに対する実績値を,色分けで重機搭載モニターに表示し,リアルタイムに重機オペレータヘ提供する。
締固めは,施工範囲とあらかじめ締固め試験で得られた目標とする締固め回数を,色分けで重機搭載モニターに表示し,リアルタイムに重機オペレータヘ提供する。
締固め完了後は,TSで高さ管理を行い,前回締固め高さとの差により層厚管理を行う。
現場作業所では,施工中リアルタイムに得られた情報から施工の進捗状況等を把握できる。その日の施工完了後には重機からの施工結果データを用いて,層毎,土質毎の品質管理の帳票作成を行う。
また,ここで取り扱う施工結果データ,施工計画データについては,施工情報の標準化活動を行っている土木研究所及びその共同研究者にて開発したデータ交換標準にそったデータ形式を利用した。

5.情報化施エシステム導入による効果
5.1 作業指示の効率化
従来,作業範囲の指示は現場に設置した丁張りを目印にして,目視において層厚を把握していた。
また,締固め作業日ごとに,目標締固め回数を口答で指示していたが,作業中の締固め回数を確認する術がないため,オペレータの技術に頼っていた。
本システムでは車載モニターに,当日の施工範囲(赤枠)と重機の現在位置(図ー6)を示すことにより,オペレータは施工中,常に画面で施工範囲が確認できる。

また,施工範囲指示機能を用いることにより,土質ごとに決められるゾーニング(図ー7)の実施が容易となった。従来施工で曖昧になりがちであったゾーンの境界が,施丁中モニターに表示されるため,正確に現場で把握できるようになった。

また,車載パソコンは現場作業所のパソコンで無線LANを介することにより常に閲覧ができ,車載パソコンの遠隔操作も可能である
そのため,重機オペレータはパソコン操作に関わる煩雑な作業がほとんど無く,システムトラブルも遠隔操作で対応することができた。

5.2 敷均し作業の効率化
従来,敷均し作業は作業前に敷均し層厚を口答で指示し,スタッフ・丁張りの目印を確認しながら施工を行っていた。
さらに,目印が設置出来ないところではオペレータの技術で敷均し高さを調整しながら施工を行っていた。
本システムでは,車載モニターで敷均し高さをリアルタイムで確認できる(図ー8)。

敷均し高さが目標高さ±5cmになったことを示す緑色で施工範囲内が塗られるように重機を操作することにより目標の敷均し高さが確保できる。

5.3 敷均し後の層厚計測・管理の効率化
従来,敷均し高さの調整は,現場に設置されたトンボ丁張りを目標として施工しており,その施工精度は主にオペレータの技量によるところであった。
また,施工層毎の敷均し厚さの計測は,撒出し厚を200mに1回,設置した丁張り周辺の仕上がり面の写真をとって(点的管理)施工管理としていた。
本システムでは,重機搭載モニターに表示される目標敷均し高さと現在の敷均し高さの差をリアルタイムで見ながら施工が行えるため,仕上り面の高さを面的に把握することが出来るようになった。そのことにより,従来施工で発生していたトンボ丁張りから離れた箇所での施工精度低下が解消された。

5.4 締固め作業の効率化
従来,締固め回数はオペレータの経験に頼っており,踏み残しがあっても確認出来ない状況にあった。
本システムでは車載モニターでリアルタイムに表示される締固め回数のカウント(色分け表示)を見ながら作業が行えるため,施工範囲内が所定回数締固めたことを示す色に塗りつぶされるまで施工を行うことにより所定転圧回数が確保され面的な品質管理が行えるようになった。

5.5 締固め後の密度計測・管理の効率化
従来,締固め後の密度計測は,各層の施工終了後,RI計を用いて空気間隔率.密度の計測を行っており,3,000m2で2時間程度の作業となっていた。また,莫大なRI計計測結果を帳票にまとめる必要があり,翌日の施工に計測結果の良否がフィードバックできないことも多々あった。
本システムでは,施工と同時に作業状況が記録されるため,作業終了と同時に帳票が作成され,帳票作業の手間が省けた。
また,同じ盛土材を対象に情報化施工と従来施工が実施された層でRI計計測結果を比較した結果,締固め度,空気間隙率ともにほぼ等しい値を示しており,標準偏差もほぼ等しかった。
よって情報化施工による盛土は従来施工と同程度の品質が確保できた。

5.6 仕上がり厚の品質確保
従来層厚の管理は,200mにつき1箇所の出来形管理であり,丁張りの無い箇所は計測も無く目視確認で行っている。今回の情報化施工では,25cm間隔のメッシュにより,面的な層厚管理による均ーな仕上り厚の確保ができた。

6.アンケート調査
実証実験終了後に発注者・請負者・重機オペレーターを対象としてアンケート調査を実施した。
(1)品質確保
オペレータの勘や技能に頼っていた施工を定量的に指示することによって,指示の確実な実行が確認でき,品質の均一化につながった。
(2)監督の改善
作業指示,敷均し,締固め,品質管理の各段階で職長あるいは請負者のチェックが必要であったが,システム上で進捗状況の確認,作業指示が行えた。
(3)施工管理
重機の作業位置を利用して施工位置と関連した品質情報が検索できるため,施工管理資料の作成が軽減できた。
反面,今後への課題についてもいくつか判明した。
①システムの機能が多く操作が複雑で操作ミスや誤入力による作業の中断が発生した。
②無線通信用のアンテナ治具が破損するなどのトラブルが発生した。
③発注者がデータ確認が行える環境を整備しなければ紙面でデータを管理することになり,データの再利用が進まない。
以上のことから,品質の確保や施工管理等の改善が図れることがわかったが,システムや機器の問題発注者側の体制の問題など課題も見えてきた。

7.おわりに
今回の情報化施工による現場実証実験の結果,作業範囲指示から敷均し・締固めシステムヘの情報を一連で提供していくことが可能であった。
そのことにより,施工範囲毎,土質毎,層毎の施工管理を行うことができることにより,敷均し高さの施工精度が確保され,施工性の向上が確認された。
国土交通省としては,全国における実証実験の結果をもとに,情報化施工によって得られる効果を発現するために,道路土工中心に展開している情報化施工について,舗装工や河川土工など他の工種への展開も検討されている。
さらに,民間においても国の管理要領を応用した情報化施工により施工効率を上げている例も出てくるなど広がりを見せ始めている。
平成17年度九州地方整備局では,「TS・GPSを用いた盛土の締固め情報化施工管理要領(案)」による品質管理(締固め回数管理)手法を舗装工に応用し現場試行を行っていく。
今後とも課題を改善し取り組みを推進することにより建設施工における情報化施工による生産性の向上や品質確保等の効果を発現できるよう努めて行く。
なお,現場実証実験を行うにあたり,ご協力頂きました関係者の皆様方に,この場をお借りして感謝とお礼を申し上げます。

※1 TSシステム:施工機械に取り付けたレーザターゲットを現場近傍に据えたトータルステーションで自動追尾し、機械の移動軌跡を取得する方法である。
※2 GPSシステム:衛星からの信号を捕捉して機械位置を計測し、機械の連続的な移動軌跡として利用する方法である。

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