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平成6年度技術開発諸制度の課題について
―九州地方建設局における技術活用パイロット事業の課題―

Ⅰ はじめに
この欄をかりて,建設省が取り組んでいる技術開発諸制度の課題について紹介を行っている。なお前号では,本省に設置の「建設技術協議会」において決定された「特定技術活用パイロット事業」「特定試験フィールド事業」の課題について紹介した。
そこで今回は,九州地方建設局で実施する「技術活用パイロット事業」について紹介する。

Ⅱ 技術活用パイロット事業
技術活用パイロット事業は,前号で紹介した「特定技術活用パイロット事業」「特定試験フィールド事業」と同様に,新技術の現場への積極的な導入を図るために創設された制度であるが,前述の制度は本省で課題を決定し全地建一斉かつ重点的に実施されるものである。そのため,技術の評価はもとより,数年で積算基準等の策定がなされ即座に現場へのフィードバックが図られる。
これに対し,本制度は各地方建設局単位で取り組むものであるため,各地方建設局の抱える現場条件等に合わせた技術の活用が行える反面,施工現場数等の制約により技術の評価のみで終わってしまうケースが多くなる。そのため,一回限りのパイロット事業のみで他の現場への普及が伴わない場合が多々みられる。
そこで,九州地方建設局においては,九州技術事務所の協力のもと,同事務所で一括して追跡調査を実施するとともに,施工時の歩掛調査を実施することとしている。これによって,活用された技術に関する歩掛(参考扱いの場合もあり)等を策定し,他の現場でも積極的にかつ容易に活用できるよう作業を進めている。

Ⅲ 平成6年度の課題
今年度も,九州地方建設局内に設けられた「新技術開発委員会(会長:企画部長)」で11課題が承認された。これを大別すると以下のとおりとなる。
 1.現場施工の省人・省力化………………4課題
 2.維持管理更新技術(ロングライフ)…2課題
 3.環境・省エネルギー対策………………2課題
 4.リサイクル対策…………………………1課題
 5.安全対策…………………………………2課題

1 現場施工の省人・省力化
① 鉄筋メッシュ踏掛版
従来,道路の構造物(橋梁・ボックス等)においては,盛土の沈下による構造物との段差を少なくするため,鉄筋コンクリートの踏掛版を設けている。しかし,この施工にあたっては,現場での鉄筋加工・組立,コンクリート打設と労力と時間を要する作業を行わなくてはならない。そこで,鉄筋コンクリートに替わり,メッシュ状の鉄筋を敷設することにより踏掛版とするものである。これによって,コンクリートの打設作業等を省略し大幅な省人化と工期短縮等を図るものである(図ー2)。

② 胴込めコンクリート不要の大型ブロック
現在の積(張)ブロックの施工においては,ブロック間の一体化を図るための胴込めコンクリートが必要であることから,その施工には膨大な労力が費やされている。そこで,ブロック間の一体化を図る噛み合わせ構造等により,胴込めコンクリートを不要としながら転倒等に対して安定する構造のブロックが開発された。これによって省人化と工期短縮が図られる(図ー3-1,図ー3-2)。

③ トンネル掘削自動測量管理システム
トンネルのマーキング方法は,トンネルの中心や断面の基準を出した後,ペイントにより断面の外周線を描いているが,この外周線の誤差による余掘りや,発破後のペイント消失による再ペイント作業など,作業効率や安全性の面で数多くの課題があった。そこで,光波距離計を内蔵したマーキング装置とコンピュータから構成されるシステムで,可視レーザ光の連続照射によってトンネル断面形状をマーキングするものである。これによって,マーキング作業を大幅に簡略化できる(図ー4)。

④ NATM関連計測手法
距離と角度(水平角・鉛直角)を同時に計測し高い距離精度と分解能により,0.1mm単位で対象物を瞬時に三次元計測するものである。
これにより,トンネル壁やビルの歪みなどの「各種構造物の変形・変位測定」,建設中のドームなどの「変形構造物の施工管理・出来形測定」,プラントなどの「大型部品の寸法・形状測定」等に活用できる(図ー5)。

2 維持管理・ロングライフ化
⑤ 老朽管の非開削更新技術
硬化樹脂を含浸させた袋状(またはシート)の複合素材を水圧(または圧搾空気)によって,老朽管内に挿入し,その後内部の水を加熱(または蒸気)することによって,樹脂を硬化させ老朽管内に新しい管渠を築造するものである。これによって,外荷重に対して十分満足した強度を有し,耐久性に優れたパイプを形成するので亀裂,離脱,欠損のある管渠の更生・補強や腐食防止などに幅広く対応できる。また,非開削で施工できるため,大幅な工期の短縮が可能となる(図ー6)。

⑥ コンクリート構造物の補修補強工法
老朽化または重交通化,車両の大型化に伴い耐荷力不足となった橋梁の床版や桁等の補修・補強は今後の社会資本の維持管理を進めるうえで,重要な課題となる。そこで,引張強度の極めて高い炭素繊維シートや補強鉄筋によって,補修・補強する工法である。また,施工は床版や桁の下面で実施するため交通障害が生じないとともに,トンネルや水路・共同溝等への活用も可能である(図ー7-1,図ー7-2)。

3 環境対策
⑦ 硬岩質法面の緑化工法
従来,岩盤・モルタル・コンクリート吹付法面の緑化は不可能とされてきた。しかし,地球環境等の保護が叫ばれるなか,周辺環境に配慮した施工は今後の事業進捗を図るうえで非常に重要となる。そこで,無土壌法面の緑化方法として,以下の二課題を採用する。
イ)特殊アンカーを使用することにより,植物の生育に必要な土壌厚15cmを吹き付ける。
ロ)袋状の布を法面にアンカービンで固定し,その中に,客土・種子および植物の永続性を考慮した特殊有機質資材を注入することにより,植生基盤を構築する(図ー8-1,図ー8-2)。

⑧ 連続繊維緑化基盤工法
植物の生育に最も適した粘性土を団粒反応させながら吹き付け,同時に根張り効果を有する連続繊維を混入し,生育基盤を造成する緑化工法である。混入される連続繊維は降雨などに対する耐侵食性,急傾斜法面への施工および厚層の生育基盤造成に寄与できる。これにより,従来困難とされていた緑化困難地への緑化の復元および播種からの木本類の計画的導入が可能となる(図ー9)。

4 リサイクル
⑨ 気泡セメントによる軽量盛土工法
気泡セメントは,セメント・骨材(砂)・起泡剤から構成され,スラリー状のモルタルに発泡させた気泡を混入して製作する。気泡セメントは,骨材量およびセメント是を変化させることにより,任意の単位体積重量および強度にあった経済的な配合が可能である。これによって,軽量性を生かし軟弱地盤上の沈下軽減や地すべり地山での荷重軽減,あるいは構造物への土圧低減を可能とする。また,流動性を生かし盛土の転圧が困難な箇所,材料や機械の搬出入が制限される箇所における盛土材料としても適する(図ー10)。

5 安全対策
⑩ 凍結融解性舗装
冬期の積雪寒冷地の道路においては,車両の走行安全性を確保するため,塩カルの散布や除雪作業等が頻繁に実施され,苦渋作業となっている。
そこで,路面の凍結を抑制緩和することを目的として表層用アスファルト混合物製造時に塩化物を含有した特殊材料を使用するものである。これによって,混合物中の特殊骨材より塩化物が外界の気象条件により路面に溶出,あるいは舗装の摩耗によって特殊骨材が路面に露出することにより凍結を緩和・抑制し,以て走行安全性の向上と塩カル散布作業の軽減を図るものである(図ー11)。

⑪ 事故防止新道路交通システム
見通しの悪い道路での対向車との正面衝突や路外逸脱事故は,しばしば重大な死亡事故となっている。そこで,進入してくる車や速度を検知する検知部と,検知した情報を発光部へ送る制御部と対向車の接近やカーブの線形を光の点滅により知らせる発光部から成るガイドライトシステムによりドライバーに注意を促すことによって,道路上での危険回避による安全性の向上を図る(図ー12)。

Ⅳ おわりに
平成6年度の技術活用パイロット事業の課題は以上であるが,前述の課題以外にも随時,パイロット事業の受付を実施しているため,建設省の直轄事務所で新技術の活用を希望される場合は技術管理課施工調査係までご相談をお願いしたい。
また,民間各社におかれても新技術の活用等に関する相談を同係および九州技術事務所にて受けている。

執筆担当:建設省九州地方建設局企画部建設専門官 高 崎 寿 男

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