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市町村の橋梁点検結果(公表データ)に基づく現況分析
牧角龍憲

キーワード:橋梁点検、市町村、判定区分、橋長、点検頻度

1.はじめに
平成26 年度から、橋長2m 以上の道路橋はすべて5 年に1 回の頻度をもって点検し、健全度を判定して記録を残すことが道路管理者に義務づけられた。
この運用においては、技術職員が少ないとともに財政的に余裕がない市町村の負担が大きくなることが懸念されてきたが、その負担を軽減して維持管理のPDCA サイクルを確実に継続するためには、市町村が管理する道路橋の現況をまず明らかにした上での議論が必要である。
現時点で1 回目の点検はまだ完了してないが、すでに全国の市町村が管理する43 万橋の点検結果(平成26 年~ 29 年)が公表1)されている。ここでは、それら公表データに基づいて全国の状況と比較しながら、九州の市町村管理橋梁64,700 橋の現況について報告する。

2.小規模橋梁が多い市町村
図- 1 に、市町村、県・道路公社および国の各機関が管理する橋梁の橋長区分割合を示す。市町村の場合、橋長15m 未満が80%(34 万橋)、橋長5m 未満は44%(19 万橋)であり、小規模橋梁が多いことがわかる。一方、国の場合は、橋長40m 以上の割合が28% であり、長大橋の比率が高くなっていることがわかる。
すなわち、市町村が管理する橋梁は、生活道路の一部として水路や小河川に架かる小規模橋梁が多いことから、すべてを一律に扱うのではなく、長大橋とは区別した維持管理を行うことが望ましいといえる。

3.橋長による判定区分比率のちがい
図- 2 に、全国の市町村管理橋梁における判定区分の比率を、各橋齢において橋長区分別に示す。この判定区分は、Ⅰ(健全)、Ⅱ(予防保全段階)、Ⅲ(早期措置段階)を表している。
いずれの橋齢においても、橋長が長くなるにしたがって判定区分Ⅰの健全な状態が減少し、判定区分Ⅲの比率が増加していることがわかる。すなわち、橋長によって経年劣化の進行状況は異なるといえる。
橋長が長い橋梁においては、通行荷重による劣化損傷や河川上の通風や冷気の影響などを受けやすく、さらに鋼部材の腐食劣化ならびに凍結防止材による塩害なども増加することから、経年劣化が明白に進行すると考えられる。
一方、橋長5m 未満の橋梁は、大型車両が満載する長さでないため荷重作用による劣化損傷が少なく、小河川や水路など橋下空間が狭いため通風による乾燥や冷気の影響を受けにくく、経年劣化は緩やかに進行すると考えられる。

4.判定区分Ⅲの比率の経年変化
法定点検頻度が5 年に1 回であることを考慮して、5 年間隔の各橋齢における判定区分Ⅲの比率の変化から、橋長による経年劣化の違いについて分析した。その結果を図- 3 に示す。
橋長による明確な違いが認められ、橋長15m以上の場合、橋齢30 年を超えると年数に比例して劣化が進行しており、予防保全の観点から5年あるいはそれ以下の点検間隔が必要であると考えられる。
一方、橋長5m 未満の場合、5 年毎の変化は僅かであり、経年劣化の進行はかなり緩やかであることが認められる。また、橋長5 ~ 10m の場合も同様に緩やかな変化である。
すなわち、経年劣化の進行が緩やかな橋長区分に該当する橋梁は、10 年に1 回の点検頻度であっても、予防保全ならびに安全性を担保する所要の点検目的は達成可能であるといえる。

5.九州の市町村管理橋梁の経年変化
九州各県の市町村が管理する橋梁について、5年間隔の各橋齢における判定区分Ⅲの比率の変化を図- 4 に示す。
いずれの県においても、橋長15m 以上の場合、橋齢30 年を超えると判定区分Ⅲの比率は年数に比例して増加している。一方、橋長5m 未満の場合、5 年毎の変化は僅かで経年劣化の進行は緩やかであり、橋齢が50 年を超えても判定区分Ⅲの比率は10% 前後である。
すなわち、九州においても全国の場合と同様に、経年劣化の進行程度に橋長区分による明確な違いがあることがわかる。

6.30年後の判定区分Ⅲの推定橋梁数
点検によって判定区分Ⅲ(早期措置段階)と診断された橋梁は、適切な補修などの劣化対策を必要とするが、橋梁補修工事は一般に経費が嵩むため、市町村にとっては大きな負担になる。その負担を軽減するためには、近い将来における判定区分Ⅲの橋梁概数をあらかじめ予測し、計画的に対策を講じておくことが必要である。
ここで、橋長15m 以上の橋梁において、図-4 の傾向から橋齢30 年以降に判定区分Ⅲの比率が20 年で20% 増加すると仮定して、各県別に試算した結果を図―5 に示す。
いずれの県においても、30 年後に現在の4 倍の橋梁数が推定されており、かなり深刻な状況に至ることがわかる。この状況を避けるためには、判定区分Ⅲの橋梁に対して年次ごとに確実に措置していくことが重要であり、さらに判定区分Ⅲの予備群に対して、費用対効果及び改修レベルを考慮した長期的な修繕方針を構築しておくことが必要である。

7.架設年次不明の橋梁について
市町村が管理する橋梁には、生活道路の一部として水路や小河川に架けられた場合があり、その結果、架設年次が不明の橋梁が数多く存在する。全国では16 万8 千橋(39.1%)、九州では1 万8 千橋(28.1%)が、市町村における架設年次不明の橋梁であり、全体の1/3 ~ 1/4 以上を占めている(図- 6)。
したがって、市町村における橋梁の維持管理計画を確実なものにするためには、架設年次不明橋梁の状況について十分に把握しておく必要がある。
図- 7 に、九州の市町村における架設年次不明橋梁の橋長割合を示すが、2/3(1 万2 千橋)が5m 未満であり、ほぼすべてが小規模であることがわかる。また、図- 8 に、全国における架設年次不明橋梁の判定区分比率を橋長区分別に示すが、橋長5m 未満(10 万8 千橋)の50%が判定区分Ⅰ(健全)であり、判定区分Ⅲは10%以下になっている。
前述したように、橋長5m 未満の橋梁における経年劣化の進行は緩やかであり、判定区分Ⅲの比率も小さいことから、小規模橋梁が大半を占める架設年次不明の橋梁が修繕計画全体に及ぼす影響は小さいといえる。ただし、橋長15m 以上の橋梁については、安全側を考慮して判定区分Ⅲの比率が20 年で20% 増加するとして対策を講じておくことが必要である。

8.おわりに
市町村が平成29 年までに実施した43 万橋(九州6 万5 千橋)の点検結果を用いて現況を分析した。そして、橋長5m 未満の小規模橋梁が多いこと、橋長区分によって経年劣化の進行程度が違うこと、橋長15m 以上の橋梁の場合、橋齢30年以降に判定区分Ⅲの比率が年数に比例して増加すること、架設年次不明の橋梁が多数存在するが、ほとんどが小規模橋梁であることなどについて報告した。
市町村管理橋梁の多くは生活道路の一部であり、幹線道路の基幹としての橋梁とは異なることを考慮した今後の制度設計が望まれる。

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