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川内川における河道三次元モデルの構築
~河道管理CIM導入に向けて~

司城はんな
佐藤亜彦

 

キーワード:河床低下、土砂堆積・樹木繁茂、三次元点群測量、河川管理CIM

1.はじめに
川内川は、図- 1 に示すようにその源を熊本県球磨郡あさぎり町の白髪岳(標高 1,417m)に発し、羽月川、隈之城川等の支川を合わせ薩摩灘へ注ぐ、熊本県、宮崎県及び鹿児島県の 3 県、6 市 4 町にまたがる幹川流路延長 137㎞、流域面積 1,600㎢の一級河川である。
川内川下流部に位置し、流域最大の人口集中地区である薩摩川内市街部では、流下能力確保のために昭和 57 年から平成 6 年にかけて、大規模な河道掘削と低水護岸の整備が行われてきた。しかし、この河道掘削により河床が細粒土砂により形成されることとなり、河床洗掘が生じやすい状況となった。その結果、平成 18 年 7 月豪雨により大幅な河床洗掘が生じ、約 50m にわたって矢板護岸の倒壊・損傷が発生するという被害が出ており、対策工として根固め及び水制工を設置し、以降モニタリングを継続している。
一方、川内川上流部や支川においては、平成18 年 7 月豪雨に対する河川激甚災害対策特別緊急事業のなかで大規模な河道掘削が行われてから10 年近くが経過し、土砂堆積及び樹木繁茂が著しく、洪水時の流下阻害がと課題となっている。
これらの河道管理上の課題に対して、河道の変化傾向の把握等を補助するツールとして既に活用されているもののひとつに河道管理基本シートがある。同様に河道管理の見える化を図るツールとして、近年九州地方 CIM 導入検討会のなかで検討が進められているのが河川管理 CIM である。そこで川内川では、前述した市街部河床低下箇所及び上流樹木繁茂箇所において河川管理 CIM の導入を検討し、学識者(熊本大学 小林特任教授)に相談をしながら、九州地方 CIM 導入検討会(河川部会)で報告を行ってきた。本論文では調査手法の検討から CIM モデルの作成及び活用検討を実施した一連の取り組みについて報告する。

2.河床低下に対する河川管理CIMの活用
(1)三次元点群データの取得について
薩摩川内市街部の河床低下の状況を把握するとともに、CIM の活用を検証することを目的に、検討区間を 10k400 から 14k600 の範囲に設定した。調査範囲が比較的広域かつ水深も十分あるという地形条件と、平成 26 年度にもマルチビーム測量を実施しており比較しやすいということ を考慮して、水部の河床を面的に取得する手法としてマルチビーム測量を適応することとした。
マルチビーム測量は詳細な河床地盤高の情報を 得ることができる一方で、当該地域特有の課題があることが明確となった。まずひとつは調査手法の複雑さである。これは、当該地域は潮汐の影響を受けるため、これを考慮した調査及び解析方法が必要となることや、水制工や根固工、橋梁などの障害物が多く存在するため相当量の補備測量が必要となること、レガッタなどの水面利用者が多いことから工程上の制約が多くなるという理由からである。 これらの知見を踏まえて、今後の継続した調査のため、今回当該地域における調査手法の仕様を作成した。

(2)三次元点群データの活用とCIM化
取得した三次元点群データ及び平成 26 年度のマルチビーム計測成果を活用することで、定期縦横断では把握できない距離標間の河床状況の把握や、水制工や矢板などの構造物と河床変動の関係を把握できるのではないかと考え、以下の検討を行った。

a ) ヒートマップによる河床状況の把握
標高差のように段階的な変化を示す場合、ヒートマップにて表示すると理解が容易くなるということがわかっている。そこでまず、今回計測した点群データで作成した現況モデルに加え、平成26 年度マルチビーム計測成果との差分解析モデル、管理河床高と河床の差分解析モデルの三つのヒートマップを作成した。
図- 2 に示す現況のヒートマップを見ると、澪筋の移ろいが一目で分かる他、定期横断ではわからなかった橋脚や水制工と局所洗掘箇所の関係が表現されていることがわかる。また、地盤高変動量を示したヒートマップを確認すると、4 年程度経過しているがこの間に大きな洪水がないこともあり、11k800 より上流では大きな地形変化はなく安定傾向で、11k800 より下流でも若干の河床変動が認められる程度の変化であった。さらに、図- 3 の管理河床高との関係を表したモデルをみることで、将来護岸等の構造物が損壊する恐れがある箇所について、対策時期の判断を促すことが可能である。このように、河床状況を視覚的かつ定量的に判断できるというところに三次元点群測量の大きなメリットがある。

また、ヒートマップだけでなく、任意の断面での重ね合わせ図の確認も可能であるため、個別により詳細に傾向を把握することも容易である。
これらの CIM モデルの作成にあたっては、参考として全て図- 4 にように、段階ごとの使用ソフトとデータフォーマットも含めて作業手順を残し、どのように検討を行ったかの記録とした。

b ) 河床高と鋼矢板の状況把握
薩摩川内市街部の河床低下に関しては、平成18 年 7 月豪雨時に矢板護岸の倒壊・損傷が発生した経緯から、矢板護岸の変状が懸念されており、河床と鋼矢板の状況モニタリングを行うことが求められている。そこで、箇所によって根入れ長の違う鋼矢板のモデルを CIM 上に展開した。図-5 は作成した鋼矢板のモデルを CIM 上で河床等のモデルと重ね合わせ、任意の断面で切ったときに見られる横断図を示しており、矢板と河床の位置関係を見ると、河床高と根入れ長には十分な余裕があることが確認できる。このように、CIM を用いることで矢板の整備状況も含めて河床の状況が確認でき、引き継ぎなどの情報共有に有用であると考えられる。

(3)維持管理計画の検討
本検討区間では、平成 22 年度より、図- 6 及び表- 1 に示すように矢板及び低水水制前面の河床高を小段平場からの高低差で測定するというモニタリングを継続している。そのため、今回取得する三次元点群データについても、維持管理計画の一部として活かしていくという観点でも取り組む必要があると考えられた。

a ) モニタリング手法の検討
モニタリングでは目的に応じた計測手法の選定、計測頻度、計測精度の検討が必要であるとともに、取得したデータを利活用するためのデータ蓄積・管理手法の検討が必要である。
現在実施されている図- 6 の実測による調査手法は即応性を有するとともに安価である。一方、水部の河床を面的に取得するのに有効なマルチビーム測量は、費用が高額となることや調査手法が複雑である点などに課題がある。そこで改めて、表- 2 のとおり水部の河床を面的に取得する手法について整理するとともに、当該河川における適応性について検討した。結果として、当該地域においては安全性及び測深能力の問題から、船舶による計測(シングルビーム測深、マルチビーム測深)が有利であることが再確認された。加えて、シングルビーム測深では水制工や橋脚などの構造物付近での未測範囲が増える可能性があることから、マルチビーム測量の方がやや有利と評価した。
計測頻度は、今回約 4 年前の計測結果を用い て河床変動状況を確認したが、大きな変化は確認できなかったことから、4 年以上の間隔を開けて も維持管理上に障害はないと仮定し、原則 5 年間隔で調査を行うこととした。

b ) モニタリング(案)
ここまでの検討結果から、当該地域での維持管理(案)を下記のとおり整理した。実測によるモニタリングは従来どおり実施し、マルチビーム測深によるモニタリングのイメージは図- 7 のとおりである。

1.5 年間隔でマルチビーム測量を実施。ただし、大きな出水等があった場合、構造物付近など必要範囲のみに絞って実施。
2.水制工にて実施する実測は、出水期前 1 回及び 2,000㎥ /s 以上の出水があった場合について、実施する。
3.調査結果は CIM 対応形式のデータも作成し、CIM に登録を行う。

3.土砂堆積・樹木繁茂に対する河川管理CIMの活用
(1)三次元点群データの取得について
河道内の樹木の繁茂状況及び土砂堆積状況、流下能力との関係についての調査を目的に、図- 8 に示す湧水町恒次地区 85k500 から 87k200 の範囲を検討区間とした。図- 9 に調査範囲の現状を示す。

ICT 土工に必要な点群データの測量精度が明確である一方、河川管理 CIM 作成については、三次元点群測量データの精度をどこまで求めるかという基準はない。そこで今回試行的に 4 つの手法で点群測量を行い比較検討を行った。
計測範囲が 0.21㎢と比較的狭域であることから、UAV による測量手法に限定し、その上で、UAV写真測量の地上画素寸法を 1㎝、2㎝、3㎝と変えての測量と、ICT 土工の起工測量に求められる精度を満たす条件で UAV によるレーザー測量を実施した。これらの 4 つの調査手法による計測時間、標定点・調整用基準点の点数等をもとにコスト比較を行ったものが表- 3 である。
UAV写真測量という同じ手法であっても、精度によってコストの差が大きいということがわかり、使用目的により位置精度と得られる成果を考慮し、計測手法を検討することが非常に重要であると考えられる。

(2)三次元点群データの活用とCIM化
今回取得した三次元点群データ及び平成 25 年度の航空レーザ測量成果を活用することで、植生の成育状況の把握と樹木繁茂による河積への阻害程度が算出できるのではないかと考え、以下の検討を行った。

a ) 植生の成育状況の把握
現況河道と HWL の関係を示したのが図- 10 である。図- 11 のように平成 26 年度時点のものと比較すると、HWL や堤防高を超過する範囲が著しく広がっていることが確認できる。

b ) 樹木伐採量と土砂掘削量の把握
CIM を使用することで河道内の樹木伐採と土砂掘削の工事量の推計を行うことができる。ここでは低コストで実施できる UAV 写真測量成果を用いて算出を行った。図- 12 に土砂掘削量算出の作業フローを示す。

c ) 樹木等の河積への影響把握
樹木繁茂や土砂堆積は流下能力を阻害するとともに、河積の減少する要因となるため、河積の確保はモニタリングしておく必要がある。CIM は任意地点における断面の生成が可能であり、この機能を利用することで河積のモニタリングを行うことができると考えた。三次元点群データから作成した地形モデルと定期横断図をもとに図- 13 のような横断図を展開し、河積・樹木ポリゴンを作成することで、表- 4 のように河積阻害量の算出を行った。

4.おわりに
川内川では、今回一部区間に限定して調査及びCIM の検討を行ったが、今後これらのデータの蓄積による CIM の継続が重要になってくるものと考えられる。そこで川内川では、平成 29 年に九州地方整備局管内の各事務所・出張所に設置されたハイスペック PC を活用して、別途作成している景観検討 CIM や、技術提案事項として取得された三次元点群データ、ICT 施工により取得された三次元点群データ及び柱状図等の諸元・基礎情報の一元化を進めるべく、システムの構築を検討しているところである。今後データの整理を行い、職員自らが CIM システムを活用できるように浸透を図る。
また、今後は CIM を活用した多自然川づくり等への取り組みを図るとともに、表- 5 のように調査、解析、設計、施工、維持管理のサイクルにCIM を導入し、CIM と i-Construction の真の協働による可能性検討を行いたいと考えている。

今後、河道の維持管理においても、三次元データを用いた管理が定着していくものと思われるが、本稿で報告した取り組みが河川管理 CIM 導入のひとつのヒントとなれば幸いである。
また , 本検討にあたり、熊本大学 小林特任教授、九州地方 CIM 導入検討会(河川部会)の皆さま、並びに点群測量・検討の業務を請け負って頂いた(株)パスコ、いであ(株)の皆さまに感謝の意を表す。

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