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山国川床上浸水対策特別緊急事業の報告
矢野寛

キーワード:床上浸水対策特別緊急事業、河川大規模災害関連事業、竣工式典

1.はじめに
山国川は大分県北部に位置し、その源は大分県中津市山国町の英彦山(標高1,200m)に発し、同市山国町、耶馬渓町、本耶馬渓町を貫流し、山移川・跡田川等の支流を合わせ中津平野に出て、友枝川、黒川等を合わせ、山国橋下流で中津川を分派し周防灘に注ぐ、流域面積540km2、幹線流路延長56㎞の一級河川である(図- 1)。
平成24 年7 月の九州北部豪雨(3 ~ 4 日、13~ 14 日)では、山国川流域で、11 日間に2 度の大規模な浸水被害に見舞われた。
この出水により、平成25 年5 月に「山国川床上浸水対策特別緊急事業(以下「床対事業」という)」の採択を受け、概ね5 カ年に渡る整備が完了し、平成30 年11 月17 日、中津市耶馬溪町柿坂の耶馬渓公民館文化ホールにおいて「山国川床上浸水対策特別緊急事業竣工式」を執り行った。

2.出水の概要
(雨量の状況)
平成24 年7 月3 日の雨量は、下郷雨量観測所で時間雨量73㎜、3 時間雨量195㎜と観測史上最大の雨量を記録した(図- 2)。
また、山国川流域の雨量観測所14 箇所中9 箇所で3 時間雨量165㎜を超える最大雨量を観測した。
7 月14 日の雨量は、時間雨量59㎜、3 時間雨量137㎜を観測した。

(水位の状況)
基準地点の下唐原水位観測所では、7 月3 日、6.60m のはん濫危険水位を超え、観測史上最高の7.46m の水位を記録した。さらに7 月14 日の降雨では、第2 位の7.14m の2 位の水位を記録した(表- 1、写真- 1)。

(被害の状況)
山国川の中流部、河口から15 k付近の樋田地区から約10㎞上流の柿坂地区までの間で、7 月3 日は浸水面積58.1ha、浸水家屋194 戸、7 月14 日は浸水面積50.1ha、浸水家屋188 戸と甚大な被害となった(図- 3)。

3.事業の内容
山国川中流部の特に被害の多かった約10㎞間の13 地区において、堤防・護岸整備(L=14㎞)、河道掘削(V=300 千m3.)、樋管(13 基)の整備行い、平成24 年7 月洪水と同規模の洪水に対して床上浸水が発生しないようにしている(図- 4)。

実施にあたっては、名勝耶馬渓の景観を損なわないようにするためには、山国川のシンボルとも言える石橋の中でも馬溪橋の保存が重要な課題でした。
そのため、多自然川づくりアドバイザー会議と景観ワーキングを開催し、河川工学や景観デザインの学識者のアドバイスをいただきながら、周辺景観に配慮した景観カルテを基に「山国川ルール」を作成し、発注者・設計者・施工者と一緒に理解を深めながら、周辺環境と調和した丁寧な施工を行った(図- 5、写真- 2、写真- 3)。

また、流下阻害のネックとなっていた「馬溪橋」については、「保存」か「改築」かの議論があったが、山国川の文化財的価値の高い石橋であり、中津市から「保存」の方針を受け、山国川治水対策検討委員会を発足して橋周辺の整備方法について検討してきた。
山国川治水対策検討委員会では、馬溪橋周辺地区の模型を作成し、模型実験による治水効果を地元の方に確認いただきながら整備計画を策定した(写真- 4、写真- 5)

この馬溪橋周辺については、ハード対策だけでなく、防災ソフト対策や流木抑止対策、地域振興・観光振興など多分野において、国土交通省・大分県・中津市などが連携して検討を行う、馬溪橋対策連絡調整会議を設置し具体的な対策を実施している(表- 2)

4.事業の効果
床対事業の工事が進む中、平成29年7月出水及び事業完了後の平成30年7月出水は、直轄上流端の柿坂水位観測所で、観測史上第3位4位の水位を記録したが、浸水家屋を大幅に軽減することができた(表- 3、写真- 7)。

また、青の洞門や競秀峰のある青地区では、平成27年5 月に整備が完成し、被災時には減少した観光客数も回復しており活気に溢れている(写真- 8)。

5.竣工式典
平成30 年11 月17 日、中津市耶馬溪町柿坂の耶馬渓公民館文化ホールにおいて「山国川床上浸水対策特別緊急事業竣工式」を執り行った。
竣工式には、地元選出国会議員、流域首長、地元関係者に出席していただいた(写真- 9)。

九州地方整備局長の式辞、来賓の方々から挨拶をいただいた後に、山国川河川事務所長による事業概要説明、最後に地元を代表して中津市連合自治会長より感謝の言葉をいただいた。
その後、竣工式会場の外において、来賓の方々と地元小学校の生徒と一緒に水害復興記念碑の除幕を行い、竣工式を終了した(写真- 10)。
水害復興記念碑は、床対事業の河道掘削により採取した石を採用している。

6.おわりに
山国川流域には「名勝耶馬渓66 景」中、57景があり風光明媚な風景に溢れている。
特に山国川沿川には、青の洞門や競秀峰、耶馬渓橋(通称:オランダ橋)、羅漢寺橋、馬溪橋の石橋(耶馬3 橋)など歴史的にも価値の高い史跡も多くあり、この床対事業においても河川整備と景観の折り合いを大切にしてきた。
今後も山国川の治水整備を進めながらも、川筋の原風景を守っていけたらと考えており、是非、新緑・紅葉の時期には、山国川へお越しいただいて、体感していただきたい。
最後に、この事業の完成式を迎えられたのは、地権者の皆様、地元の皆様をはじめ、学識者、建設業関係者等の多大なるご理解とご協力の賜であり、この紙面をお借りして感謝申し上げる。

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