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九州技報 第40号 トピックス

小富士地区埋め立てに伴う環境保全(カブトガニ)

福岡県 古川耕次
1 はじめに
 カブトガニTachypleus tridentatusは,生きている化石として知られている。海岸の埋め立てなどの環境の変化により生息数が減少し,絶滅が危倶されている。
 国内の産卵・生息地は,図-1に示す志摩町小富士海岸のほか,福岡市,北九州市,大分県,佐賀県,長崎県,岡山県などの北部九州と瀬戸内海沿岸の一部に限られている。
 カブトガニは,図-2のとおり,夏の満潮時前後に砂浜の波うち際で産卵し,秋にふ化した幼生は約7年間干潟で成長する。その後は沖合へ移動し,約10年で成体になる。寿命は25年程度と言われている。
 志摩町の小富士海岸では,主要地方道福岡志摩前原線改築工事に伴い,カブトガニの産卵場を含む海岸線の埋め立てが計画された。福岡県は,環境影響の評価を行った結果,カブトガニの生息環境の保全と環境監視を行った。

 

図-1 国内におけるカブトガニ生息地

図-2 カブトガニの生息地

  

2 保全対策
 福岡県は,道路改築工事の着手に先立ち,平成13年度に産卵実験場の整備を行った。
 産卵実験場は,図-3に示すとおり,2本の砂止め突堤(L=30m)を整備し,カブトガニの産卵に適した砂(中央粒径0.5~1.0mm,強熱減量2%以下)を敷設した。砂浜は大潮満潮面から小潮満潮面を確保し,砂厚は0.2m以上とした。
 産卵と幼生分布のモニタリングを平成13~18年度に行い,保全対策の検討などを併せて実施した。

 図-3 産卵実験場の平面図


3 モニタリングの結果と考察
3-1 産卵つがい数
 産卵実験場で確認された産卵つがい数は,図-4のとおり増加した。
 つがい数の調査は,例年7月から8月の大潮期に3回行い,満潮を含む3時間において,産卵場に来浜するつがい数と経路および産卵行動を目視観察した。
 図-5に,小富士海岸の来浜したカブトガニのつがいを示す。

 

 

 図-4 産卵実験場の来浜つがい数
図-5 カブトガニのつがい
3-2 卵塊数
 カブトガニの卵塊は深さ0.1~0.2mの砂中に生みつけられ,1卵塊あたりの卵数は,200~300個が一般的である。
 卵塊数のモニタリングは,図-6に示す8区間と産卵実験場で行った。カブトガニの卵塊数は,図-7に示すとおり年次的に増減しており,産卵実験場の卵塊数は増加傾向にある。
 道路整備に伴う埋め立てを行ったⅤ区は,工事中の平成14年から16年は,3年間で1卵塊が確認されたのみであった。
 しかしながら,工事が完了した17年度は,徐々に砂浜が復元され,カブトガニの産卵が確認できた。

図-6 小善士海岸の調査・保全対象範囲

図-7 調査区別の卵塊数

3-3 幼生個体数
 加布里湾におけるカブトガニの幼生個体数は,図-8のとおり増加傾向にあり,特に産卵実験場のあるⅣ区の増加が著しい。
 産卵実験場で酵化した幼生は,産卵実験場周辺の干潟で生育しているものと思われる。
 図-9に,小富士海岸で確認したカブトガニ幼生を示す。図-10に産卵実験場の現況を示す。

図-8 調査区別の幼生個体数

 

 

図-9 カブトガニの幼生

図-10 カブトガニ産卵実験場

3-4 まとめ
 小富士海岸のカブトガニ生息環境は道路工事によって産卵場の一部が消失した。
 しかし,産卵実験場の整備によって影響は緩和され,産卵つがい数・卵塊数・幼生個体数が増加傾向にあることから,現在も産卵・生息環境は適切に保全されているものと思われる。
 また,産卵実験場は,地元の自然愛護団体による環境保全活動の場として活用されている。
 本事例は,平成18年7月30日に福岡県前原市で開催された日本カブトガニを守る会において報告と現地見学が行われ,全国から集まったカブトガニ保全関係者から良好な保全事例として評価を得た。
 
4 おわりに
 福岡県は,福岡志摩前原線の環境保全対策として,かつての産卵場の復元を目的としたカブトガニ産卵場の整備を予定している。
 産卵場は,図-11に示すように4本の突堤とその間の砂浜で計画している。カブトガニの産卵や幼生の生育に与える影響が少ないように,ゴミの漂着防止,素材や工期を検討している。
 なお,産卵場の整備計画後は,市民参加を念頭においたカブトガニ生息環境のモニタリングを行い,産卵場の効果の評価を予定している。

図-11 産卵場の整備計画図

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