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潤いのある豊かな街づくり

長崎県土木部建築課長
馬 場  保

長崎県土木部河川開発課係長
福 田 友 久

長崎県土木部都市計画課係長
三 縄 康 夫

1 はじめに
21世紀の成熟化社会を目前にして、豊かなくらし,ふれあいのあるくらし,快適で安全なくらしが求められているが,これには質の高い社会基盤の整備が前提となることは論をまたない。特に長崎県においては,平成2年8月より4ヵ月にわたり,「歴史と文化の再発見」,「質の高いくらし」,「国際県長崎の建設」の3本柱を基本理念として開催され,190万人に及ぶ入場者を記録した「長崎旅博覧会」を契機として,グレードの高い街づくりが県民の強いニーズとなって,意識の改革を呼び起こすことになった。
以来,街づくりの根幹を担う各種杜会資本の整備の基本視点は,この強いニーズを背景に従来の画一,均質的なものからその街並みにふれあい,馴染む個性的な施設整備の方向へと変化しつつあり,またそれが新たな活力に満ちた地方文化の醸成に大きな影響を与えようとしている。
今回,本誌を借りて「旅博覧会」以降目覚しく進展している長崎の今後の社会資本整備の方向づけとして注目を集め,評価の高い3事業を紹介する。

2 長崎の街に似合う集合住宅
県営大橋団地の建て替えにあたり,国際居住年を記念した設計競技(コンペ)を行った。
「長崎の街に似合う集合住宅」をテーマとして行われたコンペの最優秀案であるこの設計には,長崎らしいデザインの開発,普及を推進しそれを街づくりまでにつなげたいという希望がこめられている。
計画の特徴は以下のとおりである。
(1)周辺環境
敷地は,長崎中心北部のJR長崎本線沿線に位置し,西を線路に東を国道に挟まれた細長い街区の一角にある。この場所は,JRバイパスのトンネルの近くに位置し,長崎の玄関口としての性格を持っている。
(2)配置計画
長崎の景観を確保すると共に,周辺の壁となって,眺望をさまたげる事がないように配慮した中層棟(5階建)を中心に,2棟の高層棟(14階建)を配し,高層棟は,周辺への日影,周囲からの景観の配慮のため塔状の建物として計画した。
(3)住棟計画
① 全体
各ユニットは,オープンスペースに向かって公的な部分(居間台所)を設け,住戸とオープンスペースの交流を図っている。
立面計画において,低層部分には本物の煉瓦を積むことで,長崎の歴史を感じさせるよう材料を選定している。
② 中層棟
各ユニットは階段と特徴ある吹抜けによって連結されている。この吹抜けによって各戸の換気をとり,トップライトと吹抜けからの自然光を取り入れることにより,長崎の町屋にみられる中庭のような雰囲気のある空間を形成している。
③ 高層棟
1フロアを3戸のユニットで構成し,各ユニットをカットバックさせて陰影のある表情を出している。立面においては,地域のランドマークとしての役割を出すために垂直性を強調したデザイン構成とし,上層部は,遠方からの景観を意識して,2~3階分を一体的に表現し,切妻の屋根とともに,都市のなかで深みのある陰影を持った建物として,街並のスカイラインを創出している。

(4)住宅計画
① 一般住戸
一般住戸は,3LDK間取りとなっており,居間・食事室と台所の間には対面カウンターを採用している。また3点給湯器の設置,居室間の段差解消等を行っている。
②高齢者向住戸
本県では,来たるべき高齢化社会に備えて,設計指針をとりまとめ,将来とも有効に使用できる住宅のストックの確保に努めている。大橋団地においても全体で30戸の高齢者向け住宅を建設した。この内C棟に建設した10戸は高齢者の安全をより考えたオール電化にしており,通常の高齢者対応機器(住戸内の床の段差解消,浴室・便所の手摺設置,ドアのレバーハンドル,3点給湯,シングルレバー水栓)等に加えて給湯,調理についても電気機器を採用している。

(5)概 要
所在地    長崎市大橋町9番1,2,3
建設期間    昭和63年3月~平成5年3月
建設戸数   1種56戸 2種80戸
敷地面積    7,078m2
建築面積   1,771m2(建坪率  25%)
延床面積   10,244m2(容積率 145%)
住戸専用面積 1種 64.90~70.23m2
       2種 45.76~66.23m2
構造・階数  鉄筋コンクリート造 5階建 B棟
       鉄骨・鉄筋コンクリート造 14階建 A,C棟
駐車台数    64台(47%)
用途地域   住居地域

3 異国情緒漂う西山ダム
(1)西山ダムの建設経緯
長崎市西山町に建設中の西山ダムは,長崎水害緊急ダム事業の一環をなすものである。市街地を流れる中島川は流域が高度に都市化し大幅な河川の拡幅が困難であるため,ダムによる洪水調節を組み合わせた治水計画がたてられた。しかし,古くからダム建設による水源開発を行ってきた関係で,新たなダムの適地は皆無であった。このため,明治年間に建設された水道専用ダムである西山ダム及び本河内ダムを治水機能を持った多目的ダムに改築し,洪水調節を行うことになった。
新ダムは堤高40m,堤頂長216mの重力式コンクリートダムで,既設ダムの直下60mの位置に昭和60年度に着工し,平成4年度に完成した。
(2)ダム周辺整備の背景
既設ダムは明治37年に完成した我が国で2番目に古いコンクリートダムで,その技術的・文化的価値の高さから本河内ダムとともに国より歴史的ダム保全事業に指定された。なお県と市ではこれを受けて土木史上の貴重な財産として歴史的ダムを未来に継承するとともに,ダム湖周辺を観光とレクレーションの拠点として整備を行うことを目的とする,ニュー長崎レイクシステム構想を策定した。このなかで,西山ダム周辺は良好な自然環境が残されているため,市民の憩いの場として位置づけられている。
(3)環境整備の内容
① ダム施設のデザイン
既設堤体にはロマネスク調の飾り文様や石張が施されるなど芸術的にも貴重なものである。そのため新堤体には化粧型枠を使用するとともに,柔らかさを表現する曲線面を多用し,天端道路は石畳舗装とした。また,高欄や照明灯は鋳鉄製としガス灯風に施工した。さらに,管理事務所は洋館風にするなど随所に異国情緒漂う長崎らしさを表現し,長崎の歴史と景観に調和するたたずまいとした。

② 周辺整備
西山ダムの周辺には人口が密集しており,貯水面を含めたダム周辺の公園は多数の市民の利用が予想され,その投資効果は大きい。
ダム上流においては,貯水池に水鳥が遊ぶ浮島を配し,新ダムの完成にともない出現する高水敷には散策路を整備する。また,ダム下流には中島川の改修にともない撤去されていた文化財指定の高麗橋を移築復元するなど,河川公園として整備を進めている。
③ 事業の現状
西山ダムは平成5年度に試験湛水を終え,6年度には既設ダムを保存するための工事を行う。なおそれと並行して周辺環境整備の充実を図り平成7年度には事業の完成を予定している。
本ダムは長崎水害緊急ダム事業のなかでも,もっとも進捗の早いダムであり治水面での効果はもちろん,新たな都市公園としてその完成が期待されているところである。

4 都市計画道路(国際通り線)
(1)事業の背景
佐世保市は人口25万人,長崎県北部地域の中心都市である。
明治以降軍港都市として発展し,近年は長期滞在型のリゾート施設であるハウステンボス,西海国立公園九十九島を活かした鹿子前リゾート等,観光面にも力が注がれている。
都市計画道路「国際通り線」は中心市街地と佐世保港を結ぶ幹線街路で,交通混雑の解消,佐世保川に架かる佐世保橋の老朽化による橋梁の架け替えにともなって改良計画がなされ,昭和54年に事業化された。
計画は事業延長815m,幅員36mの6車線で特に景観に配慮した設計を行っている(図ー1)。
モニュメントおよび道路舗装等の修景については地域の特性を活かすために,可能な限り地元で産出される石,磁器タイル等を使用することとした。

(2)事業の特色
① 沿道の環境
都市計画道路「国際通り線」の周辺地域の環境は,明治22年海軍鎮守府が設立されて以来,海上自衛隊佐世保総監部,アメリカ海軍佐世保基地,海上防衛資料館等が立地し,歴史と国際色豊かな雰囲気を有している。
また,佐世保公園やニミッツパークがあり,アメリカンフェステバルが行われたり,ジョギング,散策など市民の憩いの場でもある。
街路事業では,このような地域環境との調和を図り,より快適な街路空間を創造することを基本として整備を行ってきた。
② 既存施設の歴史とその保存
・佐世保橋
 佐世保橋は軍港佐世保の象徴として「海軍橋」の名で親しまれてきた橋である。
 明治18年海軍鎮守府の建設工事に伴い,海軍構内と市街地とを結ぶため架けられた橋で,戦時中は兵営と外の社会を隔て入隊の惜別の場であったと言われている。
 旧橋の撤去に際しては,歴史のある親柱,高欄の一部をモニュメントとして保存し,新橋についても海軍橋に因んで「イカリ」のイメージを取り込んだ親柱,「波」をイメージした高欄,「九十九島」をイメージした歩道舗装で修景を行った。

・クスの並木
 この通りには樹齢50年~200年のクスの木の並木があり,市民に親しまれていた。
 道路の改良に際しては,市民からの強い保存の要望もあり,従来の歩道にあったクスの並木を中央分離帯にして存置したり,やむをえない場合は移植を行い,可能な限り保存につとめた。

③ 街路の修景
街路事業では周辺環境との調和を図り,より快適な空間を整備するため,市民の声を取り入れたり,地元有識者,専門家で構成した「佐世保橋修景検討会」,「モニュメント検討会」を設置して,修景のアドバイスを受けながら整備を行った。
モニュメントおよび道路舗装等の修景については地域の特性を活かすために,可能な限り地元で産出される石,磁器タイル等を使用することとした。
モニュメントの主なものと,その意味するところを紹介する。
・モニュメント「息吹」
 成長し,発展していく佐世保のイメージを受け,太古よりこの地に眠っていた柱状石が今,国際通り線に芽を出し,双葉を広げた様子を表現している。

・時計塔「ハート時計」
 人々の心,人と人の交流のシンボルであるハートを基調に,国際通りがハートとハートのふれあう優しさのある通りとなるよう願いを込めて表現している。
・壁画レリーフ「世界をつなぐ海」
 太陽あふれる五大陸と青い海を子供達がつないでいる。
 子供達の歓声がいつまでも続くように,また,人々に平和な時代がいつまでも続くようにと祈りを込めて表現している。

(3)事業の効果
昭和54年に着手された本事業は,昭和60年9月に佐世保橋が完成し,平成元年に改良,修景が完成した。
これにより,スムーズな交通処理,広い歩道等,安全で快適な道路空間の提供が行われ,市民にも好評で県下でも有数の美しい街路景観となっている。
また,周辺の街路,公園,河川等も景観・やすらぎに配慮がなされ,多くの市民に利用されている。

5 おわりに
本誌に紹介した事業は,地域づくり・都市づくりの一例にすぎないが,県民のニーズに対応したグレードの高い街として期待できるものである。
今後,さまざまな街づくりが進められるなか,長崎らしさにあふれた「潤いのある豊かな街づくり」を目指して,関係者一同努力していくと共に,建設省を始めとする国のさらなるご支援とご協力をお願いするものである。

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