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小丸川発電所 大瀬内おおせうちダム・石河内いしかわうちダムの技術的特徴

九州電力株式会社 
小丸川発電所建設所
 次長
井 上 和 敏

1 小丸川発電所の概要
(1)はじめに
小丸川発電所は,宮崎県木城町を流れる一級河川小丸川の支流大瀬内谷川の最上流部に大瀬内ダム(アスファルト表面遮水壁型ロックフィルダム,高さ65.5m)を築造して上部調整池とし,小丸川本流の中流部に石河内ダム(コンクリート重力式ダム,高さ47.5m)を築造して下部調整池とし,その間を約2.8kmの水路で連結し,有効落差約650mを利用して,最大出力120万kWの発電を行う純揚水式の発電所である。当社の純揚水式発電所としては,大平発電所(最大出力50万kW,昭和50年運開,熊本県),天山発電所(最大出力60万kW,昭和62年運開,佐賀県)に次ぐものとして建設している。表ー1に発電計画諸元を示す。

(2)小丸川発電所建設工事の特徴
当建設工事の主な特徴としては,
●上部ダム地点は,薄尾根部を有する山体の頂上付近に位置することから,信頼性の高い遮水性を確保するため,ダム及び調整池の全面約30万㎡をアスファルトコンクリートで舗設すること。
●地形が急峻であるため,上部調整池と下部調整池を結ぶ水路ルートが約2.8kmと短く,導水路トンネルを省略したこと。
●水圧管路の長大斜坑掘削にTBMを用い,作業の安全性と工期の短縮を図ったこと。
●地下発電所は,当社で始めての大断面NATM工法を採用したこと。
●下部ダム地点の流域面積は329㎢と大きく,設計洪水量は4,400m3/sに達するため,高さ16m×幅10mという国内有数規模の大型ゲートを4門設置すること。
●下部ダム地点近傍にクマタカ(レッドデータブックにおける絶滅危惧種)が生息するため,モニタリングを行い,必要に応じて適切な保全対策を実施しながら工事を行っていること。
等が挙げられる。

(3)工事進捗状況
工事は平成11年2月の着工以来順調に進捗し,平成16年6月末現在で,総合進捗率は48.6%(うち土木63.5%,建築31.4%,電気18.5%)である。上部ダム・調整池については,掘削・盛立て及び洪水吐等のコンクリート構造物の工事がほぼ完了し,昨年11月から舗設面積約30万㎡という国内最大のアスファルト遮水壁の舗設を開始している。下部ダム工事については,昨年約40万m3の基礎掘削が完了し,現在堤体コンクリートの打設及び,これと並行して2門のコンジットゲートの据付工事を実施している。また,地下発電所については昨年2月に約16万m3の掘削が完了し,基礎コンクリートの打設を行っている。

2 大瀬内ダム(上部調整池)
(1)計画概要
上部調整池は,遮水方式として九州電力では初めてのアスファルト全面表面遮水壁型を採用しており,遮水壁の舗設面積は約30万㎡で同タイプの調整池としては国内最大である。この調整池は,2つのダム(ロックフィル)の築堤と周辺地山の切盛により,すり鉢形状に整形した後,アスファルト遮水壁の舗設を行い有効貯水容量560万m3の発電用水を貯水する計画である。

工事は,平成11年2月に着工,平成13年3月より本体掘削工事を本格化し,同年6月よりロック材の盛立を開始,平成15年12月までに掘削,盛立工事を完了した。(掘削量670万m3,盛立量425万m3
一方,トランジションの盛立ては平成15年7月から調整池整形が完了した箇所より順次開始し,現在までに約10万mを施工している。また,同年11月からはアスファルト遮水壁本体の舗設を開始し,平成18年5月の湛水開始に向け工事を進めている。表ー2に上部調整池計画諸元,図ー1に上部調整池平面図,図ー2に大瀬内ダム断面図,写真ー1に工事実施状況写真(H16.3撮影)を示す。

(2)地形,地質の概要
上部調整池地点は,標高750~850mの山体の頂上部で,両側の分水嶺がなす幅が800~900m程度の狭小な箇所である。
地質は,新生代古第三紀始新世~漸新世の四万十累層群の日向層群で砂岩と頁岩の互層からなる。調整池の中央より下流側では砂岩層が,上流側では頁岩層が卓越している。
地質構造は地層内に微摺曲を有するものの,一般的な走向傾斜は,N60°~80°E40°~70°NWである。岩盤等級は電中研方式に岩石の硬さや割れ目間隔割れ目の性状等の地質要素(細区分)を加えて区分した。その結果によると強風化帯(一般にCL級)は地表から10~20mの深さまで分布しており,調整池右岸側では厚さ40~50mの風化帯(CL級~CM級)が認められ,これ以深はCH級である。透水性状については,左右岸尾根部とも広い範囲で透水性が高く,特に右岸尾根部では,地表から50~80mの深部まで20Lu級以上を呈している。
左岸尾根部では20Lu級以上の高透水ゾーンが比較的深部の堅硬な岩盤内に点在している。また,調整池周辺の地下水位レベルは調整池内の元河床標高以下である。

(3)計画・設計上の特徴
 ① アスファルト表面遮水壁の採用
上部調整池は当初,主・副ダムともに中央土質遮水壁型ロックフィルダムで計画しダム基礎及び尾根部の遮水はグラウチング工法としていた。しかし,地質調査の進展に伴い前述した透水性状などが明らかになったため,確実な遮水ができる全面表面遮水壁型に変更した。
なお,遮水材料については,アスファルト,コンクリート,ゴムシート等を考えたが,既往実績における遮水の信頼性,施工性,経済性を考慮してアスファルトを選定した。

 ② 調整池,遮水壁の構造
調整池の形状は,左右岸尾根部の増厚,遮水壁面積の低減,調整池基盤の凸部を無くすこと(凸部は遮水壁の弱点となる),切土盛土を極力少なくすること等を総合的に勘案して四つの曲面部を有する形状とした。また,曲面部はできるだけ応力の集中を避けることと,施工を容易にするため大きな曲率とした。
遮水壁の構造については,先行地点の実績を踏まえ,室内配合試験及び舗設試験の結果から,斜面部については,5層構造(厚さ300mm)とした。一方,底面部については,施工の効率化,品質向上を目的として国内で初めて厚層舗設工法を採用することとし3層構造(厚さ260mm)とした。図ー3にトランジション・遮水壁構造図を示す。

 ③ アスファルト遮水壁の安定性評価
上部調整池の設計において力学的安定性で考慮すべき事項は,常時においては①盛土の沈下(湛水,クリープ,浸水)に伴う遮水壁の変形,②切土岩盤部もしくはコンクリート構造物と盛土部との境界部における不等沈下に伴う遮水壁の変形であり,地震時においては①主,副ダム部をはじめとする堤体盛土のすべり安定性,②地震による堤体および遮水壁の変形である。このため遮水壁に求められる機能は,遮水を全面的に負担する遮水壁が外力による変形で亀裂を生じ,漏水が発生しないことである。
従って,①遮水壁の厚さがダム本体に比べて非常に薄いうえ,舗設基盤の性状や物性が異なること,②調整池形状が非対称あるいは曲面部を有すること,③アスファルトコンクリートはひずみ速度が速くなるほど破壊しやすくなること等から,当調整池では特に地震時の遮水壁の挙動を可能な限り正確に把握することが重要であった。
一方,遮水壁の材料となるアスファルトコンクリートは,コンクリートや土質材料等と異なり破壊強度が温度やひずみ速度に依存し,応力で評価できないため,遮水壁に発生するひずみで評価する必要がある。
このため,遮水壁の安定性評価は,解析により求まる遮水壁の変形とアスファルト材料試験により求まる許容ひずみを比較評価することとした。図ー4に遮水壁の安定性評価フローを示す。

(4)施工上の特徴
 ① ITを用いた施工及び工事管理
当調整池工事の施工及び工事管理にあたっては,大規模土工事であること,全面表面遮水壁型の調整池であること,及び地形の特殊性から①掘削盛立量及び原石量管理の的確化,省力化,②転圧管理の的確化,省力化,③トランジション施工の省力化,仕上がり面の精度確保,④工事中の測量作業の迅速化,省力化と言った課題があった。そこで近年,土木分野でも利用されはじめている「IT施工システム」を導入し課題の克服を図るとともに,設計・工事管理においても活用し,省力化,高度化に大きな成果を挙げている。図ー5にIT施工及び工事管理システムの概要を示す。
特に,長大斜面におけるトランジションの施工においては,調整池形状に沿って薄層(t=30cm)に斜め施工でまき出す必要があること,調整池の隅角部は曲面形状であると共に法尻部に曲線部を有していることから,まき出し作業にあたっては,膨大な丁張りの設置や熟練したオペレータの確保が必要であった。また,遮水壁の舗設基盤であるためトランジション面の仕上がり高さ精度の確保も必要であった。
このため,自動追尾トータルステーション(TS)もしくはGPSでブルドーザの三次元的位置を検出し,予めコンピュータに設定しておいたその位置の設計高さデータをブルドーザに送信し,排土板の高さを自動制御する「3次元マシンコントロール(3D-MC)システム付ブルドーザ」を導入した。システム導入により,斜長100m以上の斜面において丁張りを全く設けずに斜面まき出しが可能となるとともに,仕上がり精度は最大粒径100mmの材料において概ね±40mmと高精度な仕上がり高さが確保できた。写真ー2にトランジション施工状況を示す。

 ② アスファルト遮水壁の舗設及び施工管理基準
当調整池の遮水壁(斜面部)の舗設方法は,トランジションを造成しアスファルト乳剤散布などの基盤処理を行った後,遮水壁となるレベリング・マカダム層,下部遮水層,中間排水層,上部遮水層,表面保護層を順番に施工する。図ー6に遮水壁施工フローと施工機械,写真ー3に斜面部舗設状況を示す。

アスファルト遮水壁に関する材料,配合,施工等の管理基準については,過去の経験に基づくものがこれまでは一般的であった。また,アスファルト遮水壁は舗設後に供試体を採取して水密性や変形追従性などの品質を直接確認することができないことに加え,非破壊検査等による有効な品質確認方法も確立されていない。更に,当地点は年間を通じて比較的温暖な気象条件であることから,通年施工で工事を実施することとしたが,夏季高温時や冬季低温時の施工は国内でこれまでに実績が無かった。このため,平成8年度より室内におけるアスファルト混合物の配合試験や実施工を模擬した夏季,冬季の舗設試験を実施し,これらの結果に基づく当社独自の「遮水壁舗設施工管理基準」を策定し,平成15年11月より本基準に基づき施工を行っている。
アスファルト遮水壁舗設工事については,現在斜面部レベリング・マカダム層を舗設中であるが,今後段階的に舗設機械のセット数を増やし,平成17年度末の舗設完了に向け工事を本格化していく予定である。

(5)環境保全対策
上部調整池周辺の環境調査において,改変範囲内に環境省により宮崎県特定植物群落に選定されているコウヤマキの生育(約3,300本)が確認されたため,可能な限り移植による保護を行うこととした(約2,800本)。
工事期間中は土捨場周辺に仮移植しておき,工事完了後は調整池周辺に本移植する計画である。また,コウヤマキを自然に近い形で再生させるためには,伴生木(コウヤマキ周辺に互いに影響し合って生育しているその他の植物)の植栽が必要不可欠であり,この伴生木についてもコウヤマキと同様に仮移植し,維持管理を行っている。
一方,改変区域の植栽についても,調整池本来の自然環境の復元を目標として,全て現地自生種を用いて行うこととし約40種類10万本の現地種苗木を育成中である。また,法面緑化工法としては,従来から切土・盛土等の法面には,早期に発芽する外来種が広く用いられてきたが植物生育環境の回復遺伝資源の保存の観点から,当現場では現場周辺に自生する植物から種子を採取し,その種子を使用して吹付けを行っている。具体的には緑化基盤(金網張+客土)に現地種(6種)の種子を混入して吹付け,環境の変化を極力おさえる方法で自然再生を図り成果をあげている。

3 石河内ダム(下部ダム)
(1)計画,設備の概要
揚水式発電所の下部ダムである石河内ダムは,小丸川中流域の標高80~130mに建設中のコンクリート重力式ダムである。ダムサイトの選定にあたっては,発電計画に必要な落差及び貯水容量を確保することを前提に,ダム基礎および周辺斜面の地形・地質に問題がないこと,近傍で確認されたクマタ力営巣地から極力距離を取ることなどに配慮して位置を選定した。表ー3にダム計画諸元を示す。石河内ダムはダム高47.5m,堤頂長185m,堤体積約13万m3と国内では中規模クラスであるが,純揚水式発電所の下部ダムとしては流域面積が329㎢,設計洪水流量が4,400m3/s(200年確率流量)と大きく,堤体規模に対して大規模な洪水吐ゲート,減勢工を有している。図ー7に越流部の標準断面図を示す。

ダムの材料であるコンクリート骨材用の原石は,環境面,資源の有効活用によりコストダウンを図る観点から,地下発電所及び放水路トンネル工事で発生する掘削ずり(花崗岩岩)を使用することとした。ダムコンクリートは材料配合が一般構造物と異なる点,施工場所が山間部に位置し,品質確保が難しい点を考慮し,現場プラントによる製造,供給を行うこととした。また,ダムコンクリートの最大打設量(930m3/日,12,100m3/月)を考慮し,下部ダム用プラントの設備仕様は表ー4のとおりとした。

(2)地形,地質の概要
下部調整池を形成する山体の地形は急傾斜を呈し,標高は右岸で約800m,左岸で約300~500mで,ダムサイトの両岸斜面は,斜度35~45゜の急峻なV字谷である。
ダムサイトの地質は,日向層群の砂岩を主体とする砂岩・頁岩互層の同斜構造となっており,厚さ5~30cm未満の頁岩を伴う数10cmから5m厚の砂岩がN40~60°Eの走向で上流へ約35゜傾斜して分布する。図ー8に下部ダムサイトの地質平面図を示す。

ダム基礎岩盤は,左右岸アバット部に開口性の緩みが見られるCL級が浅く分布する以外は,河床部において地表からCM級以上の良好な岩盤が出現する。また,設計上考慮すべき断層も認められない。
透水性状は,河床部において概ね深度45m以深は2Lu級以下となる。当サイトの節理系は連続性に乏しく,かつ層準を越えないため,止水対策上特に問題となるものはない。以上より,ダム基礎としてはCM級以上の岩盤を選定した。現地調査,試験による主要な岩盤物性値は,表ー5に示すとおりで,高さ50mクラスの中規模重力式コンクリートダムの基礎岩盤としては十分な強度変形特性を有するものである。

(3)施工上の特徴
 ① 転流工対象流量の設定
施工にあたっては,洪水対策に特に配慮する必要があり,転流工対象流量の設定は重要な課題であった。一般に重力式コンクリートダムの転流工対象流量は,年1~2回の確率洪水流量が採用される。
当ダム地点の転流工対象流量決定に当たっては,表ー6に示す。月別,流量別発生頻度を基に,流量600m3/s以上の発生期間が7~10月の4ヶ月間であるのに対し,流量600m3/s未満では発生期間が5~10月の6ヶ月間と2ヶ月間増加すること,などから600m3/s(年1.7回確率洪水流量)と設定した。

 ② レヤーブロック工法でのコンクリート打設
当ダムは設計洪水流量が比較的大きく,堤体の規模に対して堤内構造物が多いこと,施工中の洪水の被害が想定されること,レヤー長が最大約40mと短いことなどからレヤーブロック工法を採用した。また,隣接する打設ブロックにリフト差(最大5リフト:10m)を設け,越流用ブロックとし,転流工対象流量以上の洪水による被害を最小限に抑えることとしている。図ー9に堤体部打設イメージを示す。

 ③ 基礎グラウチング
 a 水理地質構造
ダムサイトの基盤は,古第三紀の堆積岩であり,断層も小規模で,基礎処理を要するような規模の破砕帯を伴うものは確認されていない。従って高透水の成因は応力解放・クリープによるもののみであり,深度方向に透水性が小さくなる特徴を有する。砂岩・頁岩が整然とした同斜構造をなしており,頁岩は一般的に節理が微細であるため難透水性を示すため,主要な透水経路は分布の主体をなす砂岩の2系統の節理に限定される。図ー10にダムサイトの節理系を示す。また,砂岩の節理は頁岩を貫かないため,頁岩の層理面方向に沿った透水経路となり,表層付近を除き,ダム横断方向に同一の透水性が連続することがない。したがって,止水範囲として改良目標値に達する深度までを改良範囲としている。

 b グラウチング計画概要
平成15年4月に改訂されたグラウチング技術指針を反映し,カーテングラウチングでは深度方向に改良目標値を緩和していること,コンソリデーショングラウチングの目的を「遮水性の改良」とし,堤体の上流端から基礎排水孔までの浸透路長が短い部分に配置していること等が特徴である。表ー7にカーテングラウチング,表ー8にコンソリデーショングラウチングの計画概要を示す。

 ④ コンクリート配合と打設計画
コンクリートは堤体断面の各部において要求される品質,機能,性状が異なることから,表ー9に示す6種類の配合を使用することとした。E配合はコンジットゲートの放流管底面の充填性を向上させるため使用した。
打設計画においては,夜間打設(5月下旬~10月下旬)の実施や,岩着部への夏季打設(6~9月)の回避,また,リフト高は原則2mとし,岩着部ではハーフリフト(1m)で6回打設,長期放置部(1ヶ月以上)ではハーフリフトで2回打設すること等を設定している。

(4)環境保全対策
 ① 建設汚泥のリサイクル
濁水プラントから排出される脱水後の濃縮スラリー(脱水ケーキ)は建設汚泥に該当し,適正処理が義務づけられている。当現場においては最終処分場の不足,産廃処理費の低減を考慮して,宮崎県との協議を経た後「自ら利用」として脱水ケーキに高炉セメントを添加し現場内で造成地盛土材として図ー11のフローによりリサイクルを行っている。なお,当工事は建設副産物リサイクル広報推進会議により平成13年度建設副産物リサイクルモデル工事に認定されている。

 ② クマタカ保全対策
 (a)ライフサイクル
クマタカの繁殖にとっては,求愛の始まる11月から幼鳥が巣立ちする6月末までの間が重要な時期であることから,工事がクマタカに及ぼす影響を抑えるため,工事状況に合わせて諸対策を実施している。過去のモニタリング結果から得られた当該クマタカのライフサイクルモデルを図ー12に示す。

 (b)掘削および法面補強工事での保全対策
現在までに表ー10に示す様々な対策を実施してきたが,平成12年12月~13年5月及び平成13年11月~14年6月の間の延べ14ヶ月間は,繁殖への期待が特に高まったこと,高標高部での工事となり営巣地付近での騒音を抑制する必要があること,などの理由から工事を中止した。

 (c)堤体コンクリート打設工事での保全対策
堤体コンクリート打設工事での保全対策を表一11に示す。打設はバッチャープラントからダンプトラックで運搬したコンクリートをトランスファーカーを利用してバケットに移し,タワークレーンで運搬して行っている。

 (d)保全対策の結果
これらの保全対策を行った結果,平成14年9月には幼鳥を視認し,繁殖の成功を確認できた。「クマタカが生育出来る環境」を環境保全状況の指標と位置づけて取り組んだ成果が現われたものとして社内外から高い評価を受けている。

4 おわりに
現在,工事は,掘削・盛立て等の地形を改変する作業が概ね一段落し,構造物構築へとシフトするとともに,6月からは水車・発電機の据付も本格化し本格的な最盛期を迎えている。平成19年7月のⅠ期ー1の30万kWの運転開始に向け,所員・請負委託先が一丸となってまい進しておりますので,今後とも関係各位のご協力の程よろしくお願い致します。

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